藤井風の「やば。」って「何なんw」???
46分間の極楽
藤井風のセカンドアルバム「LOVE ALL SERVE ALL」を聴いた第一印象は、「アルバムだな」だった。
バカみたいな感想だが、全て表題曲?というほどのスタープレイヤーが、奔放なまでにそのパワーを見せつけていた前作「HELP EVER HURT NEVER」に比べ、アルバムとしてのまとまりが格段にアップしたと思う。
単曲ごとの”インパクト”や”キャッチーさ”という点ではHEHNの方が強いかもしれない。だが、LASAは曲順やその繫ぎの妙をわきまえた楽曲が、それぞれの役割をきっちり果たしている。まさに”実力派揃いのチームプレイ”という感じだった。
サビ勝負のTikTokやイントロさえも邪魔者扱いされるサブスク隆盛期において、11曲を順番通りに46分間じっくりと味わう醍醐味。これぞ!「アルバムだな」と思ったのだ。
一貫したメッセージ性
筆者はnoteで米津玄師の歌詞を散々考察しまくっているが、藤井風の歌詞分析や深堀りには全く触手が伸びない。誤解を恐れずに言えば、彼の詞は帰着点が全部同じだから考察しようがないのだ。
あらゆる宗教、哲学、スピリチュアル世界から、原罪やら煩悩やらを除去し「愛」だけを優しい純度で抽出した歌詞は、どこを経由しても、道中迷いながらでも、最終的にはGoogle Map並みの正確さで「愛」にたどり着く。
まさに「助常傷無」「愛全奉全」。
憤怒や背徳や官能の気配が漂う曲もあるが、そこにはまるでココアシガレットのように何の毒も仕込まれていない。
藤井風が”心地よい韻と高度に絡み合ったオシャレサウンド”に溶け込ませているメッセージは実にシンプルだ。争いや分断が進み、怒りや不安に押し潰されそうになる今、優しさと愛に満ちた簡素な生き方が一番難しく貴重に映る。
「やば。」の墓が意味するもの
歌詞に通底するテーマに関しては一貫しているものの、歌詞の語彙は実にユニークだ。
「どどめ色」「肥溜め」「そろぼち」「ちょっくら」など詩的要素ゼロワードや故郷岡山の方言、さらに自分の口癖である「何なんw」「もうええわ」「やば。」などなど。
こんな言葉を使っておきながら、コミックソングにならないのは藤井風くらいだろう。
だが、LASA4曲目の「やば。」のこのフレーズにはさすがに首を捻った。
アイズレーブラザーズみたいなスイートでセクシーなR&Bサウンドに唐突に浮き上がる墓参りの光景。そりゃ「やば」ってなるわい。。。
そもそも、歌詞表記を見るまで冒頭部を「それだけの恋だった」と聴き間違えていたため、続く「そんなの愛じゃなかった」と相まって、完全にラブソングだという先入観があった。
だが、実際の歌詞はこうだ。
やば、、、意味がわからない。
そこで本人による英語訳詞も検証してみた。その英語詞をほぼ直訳したのが下記だ。
主語までいちいち訳してみたら何かが見えてきた。
この曲はHEHN収録の「何なんw」の続編なのではないだろうか?
「何なんw」はハイヤーセルフ視点の歌だが、「やば。」は、藤井風本人の言葉を借りれば「天使のような自分と悪魔のような自分が痴話喧嘩してるような感じ」。
上記の赤文字部分がハイヤーセルフの言葉、黒文字は「何なんw」で、忠告を無視して肥溜めにダイブし続けた挙句「神様たすけて、やばめ、やばめ、やばめ、やばめ」と泣きを入れてた奴の反省の弁だと解釈すると、妙にスッキリする。
ホンキートンクのトイピアノみたいなイントロとアウトロが、夢見がちで地に足のつかないダメ男みたいだ。奴に愛想を尽かしそうになりながらも健気に愛を注ぐ誰かが、どんな人の心にも棲んでいるのかもしれない。
意味不明だった「墓」は、文字通りの墓参りとか、死=エクスタシーと捉えたエロメタファーとか、輪廻転生の象徴とか様々な説が飛び交っているようだが、「好きなように解釈してください」と本人が言っているのでどう聴こうが自由だと思う。
この記事も「やば。」こいつ何言ってんの?とご笑納いただければ幸いだ。
読んでいただきありがとうございました。
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