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藤井風ライブツアー 【2/14横浜アリーナ】 レポと言う名の感想文

確かな音楽性に裏打ちされた有機的ライブ

 藤井風のライブは文字通り”なまもの”であり”生き物”であり極めて再現性の低いものだ

 以前、某アーティストの完璧にパッケージされた見事なショーを観たことがある。精密機械のように歌い踊り、計算され尽くした演出やバックバンドとの一糸乱れぬシンクロっぷりに舌を巻いた。きっと、このパフォーマンスはいつでもどこでも変わることなく100%再現されるのだろう。

 誤解しないでいただきたいのは、藤井風ライブの再現性の低さとは完成度が低いと言う意味ではない。

 昇っては沈む太陽は毎日同じことを繰り返しながらも1度たりとも同じ風景になることがないように、演者、観客、スタッフが有機的に絡み合ったライブは同じセトリ、演出プログラムでも全く違うものになる。だが、自然の営みのように、その圧倒的な美は決して揺るがない。

 私はたまアリ(1/15)と横アリ(2/14)に行ったのだが、その2つを見ても違う点はいくつもあった。

 例えば、横アリの「何なんw」ではキーボードのyaffleがシレっと風のピアノを演奏し、それに気づいた風が思わず吹き出すシーンがあったし、「ロンリーラプソディ」で、風の後ろ姿を捉えたライブカメラがゆっくりとズームアウトしていくエモいシーンはたまアリにはなかったと思う。

 当然、演奏やフェイクを含む歌い方もかなり違っていた。最もわかりやすいのは「死ぬのがいいわ」のピアノイントロだろう。もしかしたら、ここは全ての会場で違っていたのかもしれない。

 こんなアドリブができてしまうのは高い音楽性があってこそだろう。並外れた才能と不断の努力が積み重ねた膨大な抽斗ひきだしから自由な音色と声が放たれていく。

あっと驚くライブ化け曲

 あくまでも個人的な好みの問題だが、「燃えよ」と「まつり」は音源で聴いた時、正直ピンとこなかった。まぁ嫌いじゃないけど・・・くらいのテンションだ。

 ところがどうだろう?「燃えよ」の力強い疾走感、「まつり」のチルな祝祭感は、ライブにおいて極めて重要なピースとなっていた。この2曲があるかないかで盛り上がりが左右されると思うほどテンション爆上がりである。

 さらに言えば、セトリのすべてが音源を超えていた。いや、超えていたと言うのは違うな?優劣ではないのだ。藤井風、Yaffle、そしてバンドメンバーがすべての曲に新たな生命を吹き込んだと言うほうが正しいような気がする。

”音楽”の魅力を最大限に引き出したシンプルな演出

 このツアーで印象的だったのは大規模ツアーのわりに派手な演出が少なかったことだ。ライティングもダンサーを迎えた後半は過不足なく華やかだったが前半は極めてシンプルだったし、映像もほとんどがライブカメラのみ。特効は2曲で炎が上がっただけだ。

 そして、MCも最小限だった。要所要所で彼が話した内容をギュッとまとめたらおそらく2分程度ではないだろうか?

 それなのに見終わった後には毛細血管の隅々まで充足感で満たされていた。ソングライティング、ヴォーカル、そして演奏者としての藤井風の実力はライブでこそ余すことなく発揮されるのだと、改めて日産スタジアムライブVaundyの代打出演したライジングサンでのパフォーマンスを思い出した。

 そう、藤井風は1台のピアノとその身ひとつでオーディエンスを魅了できるアーティストだ。そこに実力派バンドメンバーとキレッキレのダンサーとステージ演出が加われば鬼に金棒ではないか。

エンターテイメントを超えた何か

 横アリもたまアリ同様に観客の年齢層は広く、その所作も様々だった。

 私の前はちょうどファミリー席で小さな子供がはしゃいだりグズったりと忙しく、隣の若い男性はきちんと荷物を膝に置き1度も立ち上がることなく一心にステージを見つめていた。その横では中年女性二人組が微妙にテンポがズレながらも楽しそうに踊り、スタンド最前列の若い女の子たちは座ったまま手摺りに身を乗り出していた。

 時々、彼らの姿が目に入るたびに思ったのは「この人たち全員にそれぞれの暮らしがあり、それぞれの考え、それぞれの心がある」と言うことだ。SNSでは決して見えない”生きた人間の顔”がそこにあった。

 その時、なぜか彼らがとても愛おしく感じたのはなぜだろう。ステージで多くを語らなかった藤井風の音楽が、何よりも雄弁に”LOVE ALL”を伝えていたのかもしれない。

これからの旅路

 この後、しばらくライブはお休みするらしい。海外進出するのでは?との予測もあちこちから出ている。私の勝手な憶測ではコーチュラのような海外フェスに出演するのではないか?と思っている。

 もしかしたら、海外武者修行の旅に出るのかもしれないし、じっくりニューアルバムを制作するのかもしれない。いずれにせよ、藤井風がミュージシャンとしても人間としても深く、広く、多くの人々を魅了していくのは間違いないだろう。

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