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「南風・五月号」を読む。

「南風・四月号」より、好きな句、気になる句。
(句順は掲載順、*=特に好きな句)


村上主宰「澎湃」十句より

翔つ鳥を見てゐる鳥や日脚延ぶ

乾びゐる花そのままに柊挿す

澎湃と辛夷の空や龍太の忌*

春塵や日の光輪へ鳥が消え

雨密に降る踏切の余寒かな*


津川顧問「春の風」十句より

波乗りに良き波の来る寒日和

寒の水魚のたましひ尾より抜け*

馬の荒息春泥に映るほど

駆けだして騎手の尻浮く春の木々

馬宥め諭し恃むや春の風*


「雪月集」より(敬称略)

ひらがなのやうな波打つ春の海*   岩渕晃三

舗道くろぐろ淡雪を消す力      井手千二

春立や向きをひとつに鯉の群     越智哲眞

利休忌の正客となる膝がしら     藤川喜子

北窓をひらき子の声鳥のこゑ     池之小町

大枯木ひそと年輪育てゐむ      葛籠堅助

花辛夷いよいよ畑動き出す      大高松竹

嘴を泥に汚して春の鴨        田村紀子

剪定の幹揺さぶりて松葉浴ぶ     福山千代子

閉めて出る外は暮春のアスファルト  間島律水

唇の田楽味噌を拭きもせで      前田照子

東西の塔を結びぬ春の雲       辻本靖子

佐保姫の解きし帯か川光る      秋葉とし子

薪棚に乾く雑巾山笑ふ*       吉田詮子

左義長へ弓道女子の放つ火矢     赤川雅彦

影となり川面を歩く遅日かな     林里美

豆撒や海鳴りの戸を細く開け     帯谷麗加

大縄飛おおなわの中に入ればがらんどう*   星野早苗


「風花集」より(敬省略)

逆光の幹をふちどる二月かな*   桑原規之

蟹死して影とたゆたふ春の波    桑原規之

刀身の鞘に鎮まる余寒かな     寺井鈴代

トラックより猟犬雪に放たるる   岡原美智子

たれ悼むためのミモザを運びゐる  板倉ケンタ

躑躅葉の上の春雪透きゆける*   板倉ケンタ

冬の草ぬいてちひさく振りにけり  中村幸子

山笑ふ電車に奈良が描かれて    渡部むめ乃

替芯の余りてゐたる霞かな     若林哲哉

水餃子てんぷるてんぷると遅春*  若林哲哉

雪晴や軒下の雪放り出す      中島恵子

葉牡丹の芯少し伸び春立ちぬ    太田美沙子

鳩の羽あたたかさうに雪が載る   今泉礼奈

立春の布巾の縁のかがり縫ひ    石井朋子

院内の保育室より石鹸玉      日野久子

寒晴や鯉のぐらりと浮き上る    中山敏子


「南風集」より(敬省略)

非常停止ボタンに見とれ春の昼    蔭山 恵

ビル街の寒夜はくぢらゆく如く*   蔭山 恵

葛湯啜り眉間に齢来てをりぬ     市原みお

淡雪やセロファンのまま供花挿され* 延平昌弥

薄氷突けば泡噴く穴ひとつ      稲葉守大

残雪へ芒の株をまはりこむ      大熊光汰

冬虹を教えてくれし車掌かな     五月ふみ

赤き頬青き頬して受験生       藤本智子

顔ぢゆうの休む暇なし花粉症*    藤本智子

コンビニの跡にコンビニ春の塵    加藤 修

切株の裂目の昏し春の昼*      菅井香永

土手に食む土産のはずの草の餅    高田陽子

ゆふぐれやかたびら雪が珊瑚色*   野村茶鳥

如月の光をつかふ厨かな       水野大雅

天国のやうな退屈春の浜       ばんかおり

昼の雨春の匂ひをつれてきし     宇野悦耳

カレンダー壁になじみて二月尽    河本 順

泣く子よりあやす大声春の昼     鈴木隆三郎

風邪の眼にフリーズドライ戻りゆく  岩本玲子

狐火のこと口々に馬肉食う      両角鹿彦

落第や匙に逆さに映る顔       折戸 洋

流氷の響もす宿の客となる      山野高士


「摘星集・兼題、新茶」から

山々の膨れはじむる新茶かな    堤 あこ

新茶てふ文字も緑に売られをり*  折戸 洋

漬物は古漬けがよし新茶汲む    加藤 修

はいからな茶筒に新茶やや溢れ   ばんかおり


     ・・・・・

卯月紫乃 載せていただいた句

「南風集」
嘶くや寒九の水の満つる桶
磨ぎ汁の真白を庭へ春来る
接木せし鉢一列に並べけり
空耳の懐かしきこゑ春の風

「摘星集・新茶」
いつぷくの庭師へ新茶まろき盆

※主宰より、「まろき盆」は言う必要があるかどうか。

確かに下五をどうしようか迷った句なので、納得のお言葉。
推敲します。

いただいたサポートは、次回「ピリカグランプリ」に充当させていただきます。宜しくお願いいたします。