【時評】霧と爆燃の時代の果て──『オッペンハイマー』によせて
数多くのメディア論を記したアメリカの理論家レフ・マノヴィッチが名著『ニューメディアの言語』を刊行したのは2001年。奇しくも同年にはアメリカ同時多発テロ──9.11が発生している。ワールド・トレード・センターのツインタワーが炎を上げて崩壊する様はメディアを通じて全世界へと拡散され、事件そのものは、以降十数年の陰謀論を規定することになる。無論、事件の余波はそうした「不気味な」精神文化の形成にのみ及んだわけではない。2003年のイラク攻撃にかかる世論の爆心地は紛れもなくこの事件