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葉は車輪状、花は梅に似るからシャリンバイ

 鮮やかな花が多い沖縄でも、春の野山で目につく花は、清楚な白色が主流です。シャリンバイ、トベラ、エゴノキ、シマイズセンリョウなどがそうです。中でもシャリンバイ(車輪梅)は、海岸(石灰岩地)から山地(非石灰岩地)まで生え、公園や街路、防風林にも植えられるので、町中でも比較的よく出会える低木です。

 名前は、葉が車輪状に集まってつき、枝先にウメに似た花が咲くため。沖縄ではウメの木がほとんど植えられていないので、シャリンバイを見てウメを連想してください。

 沖縄方言では、ティカチ、テーチ、テカチャーなどと呼ばれ、サルトリイバラ(グール)やフクギと並ぶ代表的な染料植物です。赤茶色に染まる樹皮や木材は、昔から芭蕉布や久米島紬、読谷山花織などの染料に使われてきました。

 秋〜冬には、ブルーベリーに似た黒紫色の実がなります。ご年配の方からは、子どもの頃にこの実を食べた、という話をよく聞きます。でも、タネが大きくて食べられる部分は薄く、甘味も薄いので、少々意外です。本土では海沿いに宮城県まで分布しますが、食べるという話はほとんど聞きません。

 また、沖縄産のシャリンバイは葉が細い個体が多く、ホソバシャリンバイ、オキナワシャリンバイとも呼ばれます(これらの分類は諸説あり、本土のシャリンバイと厳密に分けるのは難しい)。樹高7m、幹の直径10㎝に達することもあり、本土で高さ1〜2mの木に見慣れているナイチャーには驚きです。沖縄では、ひときわ大きく元気に育ち、甘味も増すのかもしれません。 

※この記事は琉球新報に折り込まれる副読紙「週刊レキオ」に2023年3月30日に掲載された連載記事「葉っぱで分かる木々明解」(上画像)を一部改変して再掲載したものです。

【葉】葉は裏面に細かい網目模様が目立つことが特徴。ふちは普通ギザギザがある。バラ科の常緑低木で、本州〜東南アジアに分布。
【花】ウメに似た花が3〜4月に咲く。花の中心は最初黄色く、後に赤く染まる。
【実】果実は直径1㎝弱。一応食べられるが、硬くて身は薄い。

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