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SNSの炎上リスクを減らす危機管理法

企業に誹謗中傷が集中砲火する炎上は、誰もが避けたいものです。特に企業における炎上では、批判が殺到するだけでなく、不買運動や株価の下落にまで発展してしまうこともあります。

なぜ、炎上は起きてしまうのか?
どうすれば炎上を回避できるのか?
もし炎上が起きたら、どのように対応すればいいのか?

この記事では、SNSを利用するなら知っておきたい炎上リスクを減らす方法を解説します。


なぜ炎上は起こるのか?

紙を燃やしている人物の写真
なぜ炎上は起こるのか?

シエンプレの調査によれば、年間の炎上件数は1,570件にものぼります。企業の公式アカウントが炎上する場合、その大半はアカウントそのものの発信に起因していますが、まれに従業員の言動でも炎上するケースがあります。

たとえば、コンビニのアルバイト社員がアイスの冷凍庫に入った写真を投稿し、炎上したことを覚えている人も多いのではないでしょうか。
また、大手アパレルの広告が「女児の性的対象化につながる」と批判されて炎上したのも記憶に新しいでしょう。

炎上の主な原因を記した表
炎上の主な原因

ですが、企業や従業員による問題行動があったとしても、すべてが世間一般に知られ、大惨事に至るわけではありません。炎上の原因となる出来事が発生してから広く認知されるまでには、次のようなステップがあるからです。

炎上の火種ができてから広く認知されるまでの6ステップのフロー図
炎上の火種ができてから広く認知されるまでの6ステップ

総務省の情報通信白書によると、「テレビを見て炎上を知った」という人が過半数を占めます。

次に多いのがネットニュースやまとめサイトであり、炎上がSNSに閉じている状態のときに鎮火できれば、炎上を限定的なものにすることがわかっています。これらを踏まえると、炎上は第一に「防ぐ」こと、続けて「限定的な範囲に抑え、大火事にしないこと」が大変重要です。

ここでは炎上の予防策を、企業の公式アカウントによるものと、従業員の個人アカウントによる問題行動とに分けて解説します。

炎上を予防するために 〜企業アカウント編〜

企業の公式アカウントによる炎上を予防するためには、ガイドラインを設定することが重要です。

企業のSNSアカウントを厳格に管理しようとすると、かえって自由闊達な投稿を制限してしまい、トレンドに乗りそこねたり、無難すぎる発信しかできず「誰も見てくれないアカウント」となります。

炎上を防ぎつつ、楽しいと思ってもらえる発信を心がけるには
「テレビ番組『○○』だったらボツになりそうなネタは採用しない」
「○○で言えないようなことは書かない」
といった、誰もが想像できるベンチマークが入ったガイドラインを設置するのが望ましいと言えます。

まずはリテラシー研修から

誤った情報を拡散したり、社会的に不適切な言動を発信したりするのは論外です。とはいえ「誤っている情報を、誤っていると認識して発信する」社員はまずいません。そのため、まずはネットの嘘にだまされないため、リテラシー研修を実施するとよいでしょう。

また、正しい情報を発信したとしても、伝え方によっては誤解を招くことがあります。最も多い炎上事例は「○○って本当においしい。XXはあんなにマズイのに」と、何かをけなすことで他のものを褒める文体です。

基本的に、公式アカウントでは「褒める文体」だけを使い、けなす文体は禁止するとよいでしょう。さらに、SNSでの情報発信は「記事やコメントの投稿」にかぎりません。
周りからは「いいね」の内容も見られています。たとえば、競合他社をけなす投稿に「いいね」しないといったガイドラインも設置すべきです。

誹謗中傷されたときに対応するか/しないかの判断基準

一部のクレーマーが騒いでいるとき、企業が誹謗中傷に対応すると、多くの人の目に止まって炎上を引き起こしかねません。
そこで、どのような状態になってから誹謗中小へ対応するかという、基準を設けます。

SNSの投稿内容は送信前に他者がチェックする

投稿する記事やコメントの作成者とは別の人がチェックすることで、情報の誤りや誤解を受けやすい表現などに気づくことがあります。また、投稿者やチェック者が確認するポイントをリスト化しておくことも有用です。

ただ、これを適当に「担当者とその上司」に設定してしまうと、両方ともリテラシーがないゆえに炎上を防げなかったり、上司が多忙すぎてSNSの投稿が遅延してしまったりします。

ダブルチェックする担当者は「担当者と、ネットリテラシーがある別の担当者」かつ、お互いにすぐ連絡が取れるツールを使うとよいでしょう。

企業・個人アカウントでは使うデバイスを分ける

過去に、企業アカウントと個人アカウントの切り替えを忘れて、企業アカウントで私的な投稿をしたことが炎上した事例があります。

会社で支給しているデバイス(PCやスマートフォン)では多くの場合、私的利用を禁止しています。そうしたデバイス使用のルール違反をなくすのはもちろんですが、特に「SNS担当者は企業アカウントと個人アカウントで同じデバイスを使わない」運用を徹底しましょう。

普段からエゴサーチする

また、普段から自社名でSNSを検索し、自社に関してどのような情報がインターネット上に流れているかを調査します。これを、エゴサーチといいます。

SNS担当者がインターネット上の全ての投稿に目を通すことは難しいかもしれません。そういうときには、自社に関する情報を収集してリスク判定を行うようなサービスの利用を考えてもいいでしょう。

炎上を予防するために 〜従業員アカウント編〜

従業員が炎上を引き起こさないためには、ガイドラインを作ったり研修を実施したりして、「何がよくて、何がだめか」をはっきりさせましょう。責任感、当事者意識といったふわっとした言葉で自覚を求めても、具体的なルールがわからず炎上するケースが後を絶たないからです。

ガイドラインの作成

まずは、SNSを使うときの心構えや注意点などを記載したガイドラインを作ります。ガイドラインに設定すべき最低限の項目は、以下の通りです。

  • 自社の社員でなければ知り得ないことを書くと、自社や取引先から賠償請求されることもある

  • 犯罪をおかすことで、会社から解雇されたり、賠償請求されることがある。たとえば痴漢行為をしていることが撮影され、SNSにアップされたことで、逮捕されるだけでなく会社のイメージを貶めたとして、損害賠償請求されるかもしれない

  • 自分のSNSにおけるイメージが会社のイメージに直結するケースがある。そのため、「たとえやっていることが合法でも、悪い印象を持たれたら炎上する」ことを押さえておく

  • たとえ「全世界に自分の実名と住所がバレても怖くないことしか、SNSへは投稿しない」と考えておけば、多くのトラブルは防げる

  • 匿名だから安全とは限らない。過去には瞳に写った窓の写真を拡大され、住所が特定されたケースすらある。

  • 鍵アカウント、非公開アカウントでもリークされることは多々ある。鍵アカウントだからといって、周りを信用しすぎない

  • インターネットに記事や画像を投稿すると、それを完全に削除することはできず半永久的に残ってしまうケースがあります。この結果、就職活動で不利になったり、結婚や住宅の入居審査にまで影響を及ぼしたりすることもあります。

ガイドラインや研修内容を定期的に周知する

こういった研修は、入社時に行っても時間が経つと忘れられてしまうものです。「研修を行ったから大丈夫」と安心することなく、ガイドラインや研修内容を定期的に周知しましょう。

炎上したときの対処法

3人でパソコンを見ながら何かを検討している様子の写真
炎上したときの対処法

残念ですが、どんなに気をつけていても炎上してしまうことはあります。
しかし、適切に対応することで炎上の早期沈静化を図ることができます。

炎上を定義する

まず、何でもかんでも批判を炎上と捉えるのではなく、炎上を定義しましょう。たとえば「自社名で検索して、6割が特定のことに対する批判だったら炎上」といった具合です。こうすることで、批判に右往左往せず、冷静な判断を下せます。

炎上発生時の連絡フローを作っておく

炎上が起きたときに、SNSの担当者のみに対応させないようにしましょう。
必ず、社内では事前に「誰に連絡して、誰が何をするか」業務フローを作っておきます。

大体、炎上で大事になるケースでは「担当者がひとりで解決しようとして、初動で大きなミスをやらかし、それが公になってさらに揉める」というのがあるあるの失敗例となっています。

最低でも、担当者がすぐに法務部と広報部と連携できる仕組みは作っておきたいところです。法務部だけ、広報部だけとのやりとりに従うと「合法だけど慇懃無礼」「イメージアップには繋がるけれど違法」という、バランスに失した対応を取る可能性があります。そのため、かならずこの2部署と連携してください。

また、上司が不在のときには誰に相談するかという代替案の検討や、休日や夜間に炎上した場合の連絡体制の構築も大切です。

炎上を消火するために適切な手順で対応する

炎上によって深刻な事態を引き起こさないために、適切な対応を適切なタイミングで行います。

1)炎上の発生を社内で共有する
炎上が発生したら、事前に作成したフローに則って社内で共有します。

2)必要な情報の収集と対応の検討に着手する
炎上の原因や拡散範囲など必要な情報を収集して、どのような対応をとるかの検討に着手します。

3)炎上に対する謝罪や対応について第一報を打つ
炎上が発生したら、早急に公式なコメントをアナウンスします。

この段階では炎上に対して詳細な情報を発信することより、炎上対策に乗り出していると迅速に発表することを優先します。
「炎上が起きていると認識した」など簡潔なコメントでもかまいません。

このタイミングでは「炎上させた相手を批判しない」よう注意します。相手に100%否があっても、それを表明するには法務と広報の確認が必須だからです。

4)炎上に関する情報を公表する
ある程度情報がまとまったら、第二報として「何が起きたのか」「何を自社の責任と認識したか」「どう対応するか」をまとめてリリースします。

なお、これ以降は問い合わせに原則として対応しません。なぜならば、個別の問い合わせは、担当者ごとに言っていることの食い違いが出やすく、さらなる炎上を招きやすいからです。

もしコールセンターなどでまとめて対応するレベルの炎上(というよりも、ここまでくるとリコールのような大型不祥事)であれば、全員が同じ質問に同じ回答をできるよう、マニュアルを作ってから対応します。

5)ユーザーの悪意によって炎上が続く場合は弁護士や警察に相談する
通常はここまでの対応で炎上は沈静化します。
しかし、ユーザーが故意に誤った情報を継続的に投稿し続けることで、炎上が続いてしまうこともあります。

悪意のある投稿は名誉毀損や業務妨害と判断されることもあるので、弁護士や警察に相談することも視野に入れます。

炎上の対応過程で心がけること

炎上が起きたときの対応を通して、心がけるべきことがあります。

投稿をすぐに削除しない

炎上の原因となった投稿を削除すると、事実の隠蔽と捉えられて更なる炎上を生みかねません。
もし削除するなら、謝罪するときや状況が落ち着いたときなどタイミングを見極めた上で、削除することを明示してから行いましょう。

言い訳をしない

過失による炎上の場合は、言い訳をしないことが鉄則です。

たとえば、問題を起こしたのが委託先だったときに、過失の原因は自社ではないとコメントすると責任の転嫁とみなされます。委託先のやらかしは、自社のやらかしと腹をくくるしかありません。

また、「誤解をお招きした」といった表現は、責任を読み手に持たせる表現であり、さらなる炎上を招きます。全面的な謝罪の姿勢を貫くことが、問題の収束につながります。

炎上を繰り返さないために

炎上の後は、改善策を検討して実行すべきであることは言うまでもありません。自社の過失でなかったとしても、炎上の火種を察知する方法が十分でなかった可能性を検証したり、ユーザーと良好な関係を構築することを試みたり、どうすれば炎上を繰り返さずにすむかを考えましょう。

炎上は、まれに事業を継続する上で致命的なダメージを与えるリスクを孕んでいます。炎上を起こさないために、炎上が起きたときに適切に対処するために、多くの企業が専門家の力を活用しています。

炎上を「完全に防ぐ」ことは不可能です。ですが、炎上の件数、規模を最小化する方法については知見がございます。SNSのアカウント運用でお悩みのことがあれば、お気軽にご相談ください。

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