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엄마의 성적표(ママの成績票)w

   もう15年ほど前の話になる。

韓国人のママ友数人とカフェで話している時のことだった。

子供の成績の話が始まった。

ママたちの教師に対する怨念がヒートアップしてきて、阿鼻叫喚と形容しても良い様な、すごい熱を帯びた話の途中、唯一の外国人である私に、ちょっとした解説を加えてくれた人がいた。

「韓国ではね、小学校3年生までの子供の成績は、『엄마의 성적표(オンマェ ソンジョクピョ=ママの成績票)』なのよ。4年生になったら、みんな塾に行くでしょ。だからそれまではママの成績票なのよ。」

韓国人ママ友との会話

だから子供の成績は、そのままママの子育ての出来の評価であり、ママという仕事の成果でもある。具体的にいえば、彼女達の中では、五段階評価で5以外はあり得ない世界だ。もし少しでも悪い成績を取るようなことがあれば、子供たちは家庭内で体罰必至だし、もしくはママが鬱々としてメンタルをやられちゃったり、時には教師批判に発展する。

教師批判するだけではなく、職員室に乗り込んで直談判することもありふれた光景だ。それが高じると「あの教師、辞めさせる?」という相談に発展することもあり、それを横でつぶさに見ていた私としては、恐怖におののくしかなかった。

ちなみに、ママはどのように子供の成績に関与するかというと、課題と試験対策に対するフルコミットである。全ての学科の課題を把握し、横でつきっきりで指導する。時にはママが代理で課題を作成するようなこともフツーにある。

だから、名実ともにそれは「ママの成績表」であり、それは韓国内では当然すぎることであり、例外はほぼない。だからその年齢の子供の成績が悪いと、「ママの指導が悪い」と万人が思うわけである。

あまりにも価値観が違いすぎるのだが、特に私に実害があるわけでもないから、彼女達の話を聞くだけに留めていた。教師批判が繰り広げられて、「え、先生のおっしゃることの方が正しいよね」と思うようなことでも、それを素直に発言したら彼女達の逆鱗にふれるだけだ。静かにしておくのが得策だ。

ところがだ。

こちらは残念なことに大阪人で、いついかなる時にでも笑いを取りたいと思ってしまふわけで。この重い重い空気をなんとか違うムードに持っていきたかった私は、「BAKU(末っ子)は、(成績は)どうだった?」と聞かれたついでに、正直に答えてしまった。

「それがさー、バクってさー、ハンドライティング(手書き習字みたいなもん)で『(五段階評価の)2』なんてとっちゃってさー。すごいよねー。子供4人もいるのに、初めて見たよー、そんな数字。でもさ、そのまんま、ただ手で書くだけなのにさー、どうやったら『2』なんてとれるんやろねー、逆にすごいよねー。先生には『単にneat(キレイ)に書くだけでいいのに、どうしてできないんだろう?』なんて言われちゃってさー。」

と、さもオモロい話を持ち出した風に無邪気に話してみた。

ここで「やっだー、BAKUダメじゃん!wwww」

と、ドッと笑いが起きるかと思ったのだが、場内がいきなりシーンとなっちゃったのだ。

友人達も、どう反応していいか分からなかったのだろう。「5」以外は人間にあらず、「4」なんてとったら卒倒しそうな方達ばかりの中で、前人未到の「2」という数字を持ち出したわけで(汗)。

この場で話していいのは、自分の子供がいかに優秀かという話と、それを認めない教師がタコだという話までで、自分の子供の悪い成績、ひいてはその原因と思われる「ママの力量」の至らなさを、自ら暴露して自虐的な笑いを取ろうとしているカルチャーそのものが、全くウケなかった……..orz

「ま、まぁさ、まだチャンスはあるから、来学期頑張れば。ね。」
「そ、そうだよ!大丈夫だよ。バクオンマ(バクのママ)、ファイティン!」

と、手を握って慰められてしまった…….orz

笑って欲しかったのに…….orz

おそらく陰で「バクオンマ、大丈夫か?わかってるのか?ママとして終わってるってことが。」と噂されていたことだろう。別にいいけどさw

日本では、同調圧力が強すぎて息苦しいという話がよく出てくるけれど、同調圧力という点においては、韓国の方が圧倒的に強かったよ。だからこそ、ママたちは、その価値観の呪縛を受けていたという印象があった。

少なくとも当時はね。

個人的には、脳の柔らかい子供の頃こそ、大人側の価値観を押し付けられることなく、知的好奇心を自由に炸裂させてあげて欲しいなぁ、なんて思っちゃう。でもその「子供時代に広げた脳の活動の多彩さ」が垣間見えるのは、大人になって仕事をするようになってからのこと。学校の成績では全く見えない能力なのだ。だから親はそこまで待てずに、分かりやすい目先の成績で、子供の能力を判断しがちである。

叩き潰した知的好奇心の芽は、そんなに簡単に取り戻せない。学校の成績に表れないけれど大事なことは、それぞれの親が自分で考えるしかない。その過程で、周囲からの親(自分)に対するネガティブな評価がついてまわっても、そこは踏ん張らないとねw

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