見出し画像

コンサルタントのペルソナ規定術

 みなさんこんにちは。
マーケティングディレクター兼データサイエンティストのtohari.です。
マーケティング業務に携わっている方であれば、ペルソナづくり、ターゲット規定の重要性はすでに十分ご理解いただいているかと思います。特に日本市場は超成熟化社会と言っても良いほど、どの市場をとっても商品やサービスが溢れ、その中で自社商品やサービスを認知させるには、「差別化」がとても重要なキーワードとなっています。そしてその差別化を行う上で重要なのがターゲティングであり、ポジショニングということになります。

その一方で、どのようにターゲットを規定するかはそれほど簡単ではありません。「一応規定はしてみたもののきちんと言い当てられていない気がする」「ペルソナを考えたが、商品・サービス・マーケティング施策への反映に十分生かしきれていない」といったご経験をお持ちの方も多いと思います。

そこで今回は筆者がこれまでの業務で描いてきたペルソナ、ターゲット規定の方法についてご紹介していこうと思います。ペルソナ、ターゲット規定にはいくつかのポイントがあります。これらを踏まえることで、自社商品やサービスの差別化ポイントやマーケティング施策への活かし方がわかってくると思います。ペルソナ・ターゲット規定が上手くいかないとお悩みの方はぜひ一度お試しいただければと思います。
 
 

属性で規定できるほど現代市場は単純でない

ペルソナやターゲット規定を行う際によくやるのが、属性(デモグラフィック)での規定です。20代女性、中高年ビジネスマン、シニア層など、確かに年代・性別はターゲットイメージを規定する1つの要素でイメージしやすいという特徴があります。ですが、現在の成熟社会においては性・年代で規定しても、その中においてさえ競合が多く存在し、デモグラだけでは自社商品を差別化することはとても困難です。

そのためターゲット規定に嗜好性(サイコグラフィック)を用いるブランドも多く存在します。新し物好き、エコ意識が高い、教育に関心が高いなどと言った規定がそれにあたり、確かに嗜好性軸は価値意識に直結するので、属性以上にユーザー像の浮き彫りには役立ちますが、色々価値意識に関する想定を追加していっても、商品・サービスにどう繋げるか、またはプロモーションにどう生かすかと言った段階になると意外に使えない、といったことも起こりがちです。
 

ペルソナ化でまず行うべきは顧客情報のチェック

ペルソナ・ターゲット規定作業を始めるにあたり、まずは具体的に自社の顧客情報を眺めてみるところから始めることをお勧めします。

顧客情報と言っても、会員情報から購買情報、アンケート情報、WEBアクセス情報など様々です。ECサイトなど会員情報と紐づいた購買データがあればベストですが、なければアンケート情報などでも良いですし、ある範囲で考えれば良いです。

そこで行いたいことは、自社顧客を購買頻度で考え、特に最も人数が多いであろう「中心顧客層」と「ロイヤル顧客層」の2種類の顧客情報のチェックです。

その2種類の顧客情報に関して、定量的に分析する必要はなく、それぞれいくつかずつデータを抜き出して見てみるだけで結構です(もちろん定量的に分析できればなお良いですが、そうすると分析ツールや技術の問題が出てきて難易度が一気に高くなるので、いくつかだけで良いです)。
中心顧客層もロイヤル顧客層もいずれも自社ブランドを支えている最も重要な顧客ですので、その2つに関して、「なぜそうであるのか」の行動や意識をペルソナ化していきます。

例えばロイヤル顧客層であれば、リピート率が非常に高く自社ブランドの最もファンな顧客ということであるので、そのような顧客の特徴として、月に何回くらい来店し、何を購入してくれるのか、どのような点で自社ブランドを好んでくれているのか、自社店舗やサイト、サービスのどのような点に利便性を感じているのか、または不満に感じているのかなどを考え、ペルソナとしてまとめていくということです。中心顧客層であっても同様です。

このようなペルソナ化においては属性や商品に関係しない価値観などは補足的に追記するだけでよく、重要なことは購買結果から逆算して、その前の行動や行動の中で感じているであろう事柄、さらにブランドを好む理由など、行動の理由を直接的に仮説していくことにあります。
ペルソナ化はマーケテイングに生かすことが目的なので、人物像より購買行動の解明・仮説こそが重要なのです。
 

リテラシーの規定(仮説)がペルソナ化のもう1つのカギ

ペルソナ化にあたってもう1つ重要な視点が、当該商品・サービス市場全体に対するリテラシーの高さの規定(仮説)です。

リテラシーとは、簡単に言えば「どれくらい詳しいか、どのくらい意識が高いか」ということですが、例えば化粧品であれば美容、旅行サイトであれば旅そのものに対して、どのくらいこだわりがあってどの程度知識を持っていそうかを、ロイヤル顧客層、中心顧客層それぞれにおいてペルソナ化してみます。

なぜリテラシー仮説が重要かといいますと、それが情報発信のベースとなるからです。特にWEBサイトやSNSなどにおいては、商品を直接知らないユーザーもサイト来訪してもらうために、商品情報だけではなく、化粧品であれば各種美容情報、旅行サイトであれば各地の観光情報など、様々な関連情報をコンテンツとして用意していくことになると思います。その時、こだわりの強い人、知識の豊富な人を多く集客したいのか、それとも知識や経験が浅い人を中心に集客したいのかによって、コンテンツ、情報発信の内容が大きく変わってきます。

つまり、リテラシーの高さは顧客ニーズと直結する重要な要素なので、そこを明確にし情報発信することで「これは自分にあった情報だ」と感じてもらうやすくすることができるのです。
 

ペルソナの更なる有効化

さて、ここまで2つの顧客層のペルソナ化の進め方についてご紹介してきました。続いてこれらペルソナをさらに有効にするためのもう1つ工夫についてお話しいたします。

これまで行ってきたペルソナ化の内容は、購買行動に紐づく意識だったり、商品・サービスに関係するリテラシーの高さだったり、いわば現在の顧客状態を見える化する作業でした。

多くのペルソナ化は良くてここ止まりなのですが、ペルソナ化作業をより有効にするためには、そこからもう1歩進めてこれからのマーケティング施策に活かす内容を想像し、それをペルソナに加えていきます。

事例をもとに具体的にお話ししていきます。

上記はWEBサイト開発におけるペルソナ化の一部です。

ここに書かれているのは、これまで規定・仮説してきたユーザー像を、これから作るWEBサイトにどう活かしていくのかをアイデアベースで出したものになります。つまり企画の1歩手前のような内容(アイデアフラッシュ)をペルソナ化作業に組み込んだものになります。

このケースの場合、ペルソナを活かす対象はWEBサイトですので、WEBサイト企画に関するアイデアを「機能」「コンテンツ」「トーン&マナー」「サービス」「収益モデル」などのWEBサイトを構成する要素ごとにアイデアを出しています。

一般的にペルソナは顧客状態を描くだけのものがほとんどですが、このように企画の1歩手前まで踏み込むことで、ユーザー起点での企画精度をぐんと強めていくことができるようになるわけです。
 

ターゲット設定の基本的な考え方

最後にターゲット規定の考え方について少しお話しさせていただきます。

これまでの話の中で現在の中心顧客層とロイヤル顧客層の2通りのペルソナ化をお勧めしていますが、それではそのどちらを最終的なターゲットとして設定すれば良いでしょうか?

その答えは戦略そのものですので、1つの正解はありませんが、「どちらの獲得優先度が高いのか」というのが、その答えを導く問いになります。

中心顧客層は今の売り上げを支える顧客層であり、ロイヤル顧客層は将来の事業基盤としたい顧客層と位置付けることができます。この2つのうち、これから事業をさらに拡大していく上でどちらを優先して増やしていくべきか、この問いにきちんと向かい合って答えを出すことで、ターゲットをどちらにするかが決まってきます。

もちろん、この2つ以外の顧客層をターゲットにするという判断もあります。そのような場合には、ターゲットとなり得そうな顧客層に関しても同様に、ペルソナ化していく必要があります。

中心顧客層、ロイヤル顧客層の2つのピックアップは、ターゲットとなり得る可能性が最も高い2つとして取り上げていますので、それ以外にもターゲットの可能性が想定される場合には、その顧客層についてもペルソナ化をしていってください。
 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
ペルソナ化のポイントをまとめますと、以下になります。

  • ペルソナ化の最初の作業は、自社で保有している顧客情報の中から、現在の中心顧客層、ロイヤル顧客層の2つ(もしくは必要に応じて追加)の情報・データをそれぞれいくつかピックアップして眺めてみる。

  • それらの事実情報をベースにして、それぞれの顧客層に対してペルソナ化を進める。

  • ペルソナ化のポイントは、大きく3つ。

    • なぜそのような購買態度、購買行動をとっているのか、またそれら購買行動の中で感じているであろうことは何かといった購買行動に紐づく行動・意識を仮説する(属性や購買行動に関係ない価値観等は、軽く付加する程度)。

    • その上で、商品・サービスの市場全体に対するリテラシーの高さもペルソナに加える。

    • またペルソナの目的となるマーケティング施策に対して、ジャストアイデアで良いので、一連の流れの中で仮説する。

  • ペルソナを行った複数の顧客層のうちのどれをターゲットにするかは、「今後事業を拡大する上で、最も優先順位が高い顧客層はどこか」という問いを考えることによって、その答えが導きだされる。

以上です。
もしわからないことなどあれば、いつでもお答えしますので、コメントいただければと思います。
 

【お仕事のお問い合わせは以下からどうぞ】
各種マーケティング施策(WEBマーケティングやサイト制作、CRM・データ分析、ブランディングなど)や商品・事業企画についてのアドバイス、社内セミナーや研修会などの依頼も受け付けております。週一の定例ミーティング、月イチや隔週での壁打ちなど、色々な形態で、それぞれの事業者様に応じた価格にて行っておりますので、お気軽に以下よりご相談ください。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?