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セオリー無視な「26案出し」

「クライアントへの提案」で思い出すエピソードと言えば、2010年。
全国展開する某建設会社さんのウェブサイトリニューアルに伴い、広告用のポスターを急遽デザインすることになった時のこと。

あまりに急なオファーだったこともあり、社内の空きリソースの都合、デザインを担当したのは短大卒入社のクリエイター(21歳)だった。

実務経験ほぼゼロな彼女は、めっちゃ残業しつつ、ひたすら試行錯誤し、アイデアを練り練って、26案のデザインカンプを作成した。

「なぜ26案?」と聞いたら、
「アルファベットはA~Zまでしかないので」とのこと。

A案~Z案まで、計26案。
いわゆるカラーバリエーションとかじゃなく、それぞれユニークなものだった。プリントアウトされた26枚を手に、私はクライアントとの会議に向かった。

テーブルに並べられた、26案。
すべてを見たクライアント担当者は「こんなに考えてくれたの!?」ってビックリしつつ、「よし、最終判断はデザイナーさんに委ねよう」と答えた。

それは「頑張ってたくさん作った」功績を讃えるとかじゃなく、クライアント含むチームメンバーの誰よりも「ポスターのことを考えまくった」彼女こそが最終判断に相応しい人物と捉えたクライアントの意向。

年齢が若く、経験値が浅くとも、
クライアント以上に「じっくり考える」ことはできる。
そこに期待と信頼を寄せたクライアントがいた。

そのクライアント企業との仕事は、そこから14年以上続いている。

「案を絞らずな26案出し」とは、なんともセオリー無視な提案だけど、あらためて、クライアントワークにおける提案への寄り添い方を(ちょい別角度から)学んだエピソード。


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