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そういえば成長して実家を出るまでの間、毎日のように鳩の声を聞いていた。

どこにいるのかははっきりしないのだが、部屋にいると「ででぽっぽー、ででぽっぽー」という声が良く聞こえてきた。調べてみると繁殖期のキジバトがででぽっぽーと鳴くらしいが、キジバトなんかいたかな。ドバトは近所にたくさんいたけれど。それに年中、ででぽっぽーと聞こえていたような気がする。

部屋の窓からは、晴れていれば、ゆっくりと円を描きながら空を舞うトンビたちがよく見えた。鳩とトンビと住宅地にお決まりのスズメたちが常に近くにいた。ちなみに今住んでいる所では、カラス(ホソとブトとがよくケンカしている)、スズメ、イソヒヨドリ、ヤマガラ、ウグイス、暖かい季節はツバメあたりが常連である。この前はキビタキを見かけた。


noteにいろいろ書いていることからわかるように、実家はある意味、めちゃくちゃな場所だった。それもあって、両親とは今でもほとんど話をすることはない。最近になって一月か二月に一度、母親と電話で話をするぐらい。こちらからかけることはまずない。母も歳をとったためか、今となっては話をしていても別に嫌な気持ちになることはないのだけれど、過去の縛りは大きい。


先日、母から電話があったので話を聞いてみると、知り合いの鳩が死んでしまってとても悲しいとのことだった。普段そういう話はしないので、よっぽど悲しかったらしい。

野鳥なのに知り合いというのも不思議な話だが、詳しく聞いてみると、ある大きな八幡神社(詣でる人がたくさんいるようだ)に出かけたときにその子に出会って、それからしばらくして、毎日のように母の前に現れるようになったらしい。その神社と母が住んでいるところとは全然離れているのに。

母によれば、どうやら近所で動物を虐待している人物がいるらしく、その被害にあったとのこと。動物を虐待する輩は、そのうち人間を攻撃するようになるはずなので交番に伝えておいたほうがいいと言ったら、現場を押さえてないので無理だと思うと泣いていた。

思い出した

父もそうなのだが、二人とも酷く虐待されて育ったのに(実家がめちゃくちゃだった理由の多くを占めていると思う。どうすればいいのかよくわからなかったのだろう)、動物や自分よりも弱いものにとても優しいのだった。

いろいろと問題のある人たちだ(った)けれど、よく考えてみれば、ものすごくよい性質を持っていた。家族にその優しさが向きにくい(複雑性PTSDのために無意識の抵抗があったのかもということが今では想像できる)のが大きな欠点だったけれど。


パートナーである彼女によれば、動物や自分よりも弱いものに優しい性格は自分も受け継いでいるらしい。両親からは本当によい性格をもらったと思う。その点はとても感謝している。

そして母を毎日見てくれていた鳩さんにも。

鳩さんの周りには、今、母の涙から生まれたカスミソウがたくさん降っているはずだと思う。