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心理テストの種類と特徴(その1)

これまで、説明してきたように、人物試験・面接試験は、受験者との直接対話により、受験者本人の特性(性格的側面や行動様式など)を、受験者の表情、態度、話し方等を通じて、把握する選抜手法です。

しかし、時間が限られていることもあり、いくら経験豊富な試験官でも、短時間に見抜けない特徴的な面があるかもしれません。
それを補佐する資料の一つとして、性格・適性テストといった、いわゆる心理テスト等の活用が考えられます。

今回から4回に分けて、心理テストについて、ワンランク上の人事担当者や試験担当者が知っておくべきことを説明していきたいと思います。
                            (Mr.モグ)

心理テストの種類と内容【総論】

一般に、心理テストは、人間のパーソナリティーや行動のある側面に対して、過去のデータの蓄積から、一定の信頼性と妥当性を検討した上で作成されています
そのため、ある質問に対する受験者の回答が、これまでのデータ蓄積の結果と照合することで、「〇〇という傾向があると認められる」と判断することができるのです。

例えば、ある受験者が面接の場面で口数が少なく緊張している状況を見たとき、A面接試験官は、「気分が落ちやすい抑うつ的なパーソナリティーを持つ人物」と判断するかもしれません。
しかし、別のB面接試験官は、「人前で萎縮しやすい内向的なパーソナリティーを持つ人物」と判断するかもしれません。

そのときに、(信頼性と妥当性が検討されている)心理テスト抑うつ性と内向性の得点を事前にみることができれば、その後の質問を展開するなかで、受験者のパーソナリティーの妥当性を確認することが可能となります。

また、実はその受験者は面接に際して非常に緊張していたために口数が少なくなったのであり、普段は明るく外交的な人物であった場合、心理テストでは特徴的な結果が出ていないということが分かれば、その後の質問を展開するなかで、普段の受験者のパーソナリティーを探ることが可能になります。

心理テスト活用上の留意点

他方で、心理テストは、受験者が(自分のことを)自分自身の判断で答えた回答データをもとにして、パーソナリティーの得点が推定されるものです。そのため、その受験者が自分をよく見せようとして(受験者が考える理想のパーソナリティー結果が出るように)回答を誤魔化している可能性もあり得ます※。

※これについては「ライスケール」によって、受験者のウソを(ある程度)見抜くことができるとされています。
例えば、
通常100問程度からなる質問のうち、前半に、「積極性の有無」をみる質問が出され、後半にも(切り口を変えて)同じく「積極性の有無」をみる質問を出し、両者の回答が矛盾していないかを判断するものであったり、
②通常、完璧な人間はいないことを前提に、「私は、これまでウソをついたことがない」「決めたことを諦めたことは一度も無い」といった質問に対する「ハイ」ならば、それはウソをついていると判断するものです。

また、心理テストの信頼性と妥当性を検討した際の(当時の)データと現在のデータのズレが生じている可能性※も否定できません。

※例えば、20年前の「内向的パーソナリティーの得点」と、IT化が進み社会全体が個人ベースで動く傾向が強くなった現在における「内向的パーソナリティーの得点」その重みが異なってきているかもしれません。


さらに、受験者が自分自身のことをよく理解していない状況で、心理テストに回答していることも考えられます(例えば、他人からみると社交性が非常に高いのに、本人は(特に社交性が高いとは思わずに)それが普通であると思い込んでいる状態で、心理テストに回答している場合など。)

そのため、心理テストの活用は、慎重に扱うことが重要です。
あくまで(受験者と対面で行う)人物試験の補助として活用することが望まれます
心理テストの結果の引きずられて、無用なバイアスが生じることを避けなければなりません。

例えば、本来の受験者は、内向的でないにもかかわらず、心理テストの結果が内向的と出ていたことで、試験官が、(面接をする前から)受験者を内向的な人物を思い込んで質問を展開することのないようにする必要があります。

心理テストを補助的に活用するメリット

しかし、心理テストを補助的に活用することは、
①短時間の面接で判別しにくい受験者のパーソナリティーをある程度見極める判断材料になること。

②通常の面接や行動観察でわかりにくい受験者のパーソナリティーが、心理テストの結果に表れる可能性があること。

③心理テストの結果を活用することで、効率よく質問を展開し、効果的な面接ができること。

といったような、メリットがあるのです。
 
なお、心理テストの検査方法は、大きく分類すると質問紙法、投影法、作業検査法があります。

質問紙法
 性格や行動上の特徴、心の状態、対人関係のあり方などに関する質問に対して、被験者自身が自己評価をして、「はい」「いいえ」の2段階や、(「はい」「いいえ」「どちらでもない」の)3段階といったように回答する方法。
その代表的なものとしては、
○矢田部ギルフォード性格検査(YG性格検査)
○ミネソタ多面人格目録(MMPI)

などがあります。
投影法
 さまざまな捉え方が可能な「図柄」「絵」や「未完の文章」等に対して、枠を設けないで、被験者に自由に表現させ、その反応を観察することを通じて、本人も気づかない深層心理の欲求・葛藤などから、被験者の性格等を判断する方法。
検査結果の判定が数値で明確に算出されるのではなく、観察結果から総合的に判断するものであるため、質問紙法に比べて、検査時間が長くなり結果の曖昧さがある反面、(被験者の)より深層にある人格傾向、内面の状態を解釈することができるとされています。
その代表的なものとしては、
○ロールシャッハテスト
○文章完成テスト(SCT)

などがあります。
作業検査法
単純な計算など、簡単な作業を行わせて、その結果から被験者の性格等を判断する方法。言語能力の依存が少なく、被験者が自らの状態を回答することがないため、回答に歪みが生じにくいとされています。
その代表的なものとしては、
○内田クレペリン作業検査
などがあります。

まとめ

 今回は、心理テストの概要について説明してきました。
心理テストの大部分は、受験者が、自らを振り返りつつ、質問に対して回答する方式をとっている者が多いことから、受験者によっては(自分の本心と異なる回答をして)、自分をよく見せようとする可能性があることを指摘すると共に、人物試験や面接テストにおける試験官の補助として活用することメリットをお伝えしました。
さらに、心理テストの検査方法を3つに分け、それぞれの概要について解説してきました。
ワンランク上の人材選抜を行う際には、心理テストのメリットとデメリットを理解した上で、適切に活用することが望まれます。

次回は、具体的に個別の心理テストについてその特徴テスト結果の解釈方法について解説していきたいと思っています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。(Mr.モグ)


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