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【問】タイムパラドックスとは何か、小4息子に理解できるよう、60秒以内で回答しなさい。という話。

「ねぇママ。『タイムパラドックス』ってなに?」

息子の話は唐突だ。つい2秒前、私が息子に言った台詞は確か「キャベツも残さず食べなさいよー」だったはずで、その前は息子がyoutubeで見たゲーム実況動画の話を一方的に聞かされていたはずで、そう考えると二人とも、それぞれ壁に向かってボールを投げている状態、という意味ではお互い様なのだが。

ともあれ、タイムパラドックスとはまた随分と難問である。
夕飯の焼きそばをもぐもぐしながら、私は油断しきった脳味噌の回転数を無理矢理上げに入る。

「……えーっと、『タイムトラベル』は分かる?」
「うん、分かる!」

オーケーオーケー、ドラえもんをよく見ているだけあって、そこはクリアできているらしい。タイムトラベルから説明をするとなると、話が長くなりすぎて息子が耐えきれないだろうが、パラドックスの部分だけで済むなら何とか説明出来る……か?

「えーっと、○○(=息子)は昨日のおやつにアイスを食べたじゃない?」
「うん」
「今から○○が、昨日にタイムトラベルしたとする。そこで、昨日の○○がアイスを食べるより前に、アイスをみんな食べちゃったとするね?」
「うん」
「すると、昨日の○○がおやつを食べようとして、冷凍庫を開けてもアイスはない!」
「ないね!」
「可哀想だねー?」
「可哀想だねぇ!」

息子はクスクス笑いだした。よかった、アイスの例は分かりやすかったようだ。

「すると、昨日の○○はアイスを食べられなかったってことになるね。話が変じゃない?昨日も今日もアイスを食べた○○と、昨日アイスを食べられなかった○○は、同じ○○じゃなくなっちゃってる。そういう風に話が変になるのが、タイムパラドックス」
「わかった!ごちそうさまー!」

本当に分かったかどうかは定かでないが、とにかく納得したらしい息子は、焼きそばの皿をシンクに片付けるや否や、バタバタどこかへ走っていった。「明日の準備しなさいよー!」と叫びつつ、私はヤレヤレと息をつく。

いやー、頭使った。何とか説明できて良かった。

無防備な日常に唐突にぶちこまれる、この息子による「○○って何?」という爆弾は、常に私の脳味噌の限界を試してくる。
前回は夫の見ていたTVのニュースをチラ見しての「天皇陛下って何?」で、

「えーっと天皇陛下ってのは日本の国の象徴で、象徴っていうのはシンボルで、えっとえっと……くまモンみたいな!」

と言ってしまった直後に「やべ、なんか違う」と思い直し、

「アレだよアレ、かぐや姫に出てくる『みかど』っていたじゃない!?偉い人、あれが天皇!あと神社の神主さんの親分もやってる!」

と慌てて絞り出して事なきを得た(と思う)のだが、危うく「天皇陛下=くまモンみたいな感じ」という、いくら何でもアレすぎる定義を息子にインストールしてしまう所だった。その道の人に聞かれたらマジでヤバい。

息子に分かる単語だけで、息子に分かる概念の範囲で、この手の質問の回答を考えるのは、本当に本当に難易度が高いのだ。しかも時間制限・文字数制限が厳しい。説明が長すぎると息子の興味が逸れてしまって、最後まで聞いてくれないのである。この制限時間は昨年度は30秒ほどだったが、今年度はやや伸びて、多分60秒ぐらいになった。つまり一応成長はしているのだろう、と思うのだが……

頼むから、長く聞けないならせめて、もうちょっと簡単なことを聞いて!
ややこしいことを聞くならお願いだから最後まで聞いてーーー!!

と悲鳴を上げたい気持ちである。

ただ、本当に本当に難しいのだけれど、実はこういう質問に答えるのは割と好きだったりもするので、出来れば早急に時間制限と、使える単語制限の緩和を息子にお願いしたいところ。
君のカーチャンの脳細胞の老化防止のためにも、頼んだぞ、息子よ。

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