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【読書記録】空棺の烏(阿部智里)

【あらすじ】
人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」のエリート武官を養成する全寮制の学校「勁草院」に入学した少年、雪哉。次の日嗣の御子たる若宮派と巻き返しを図る兄宮派との間で激化する対立の中で次々と起こる事件に雪哉た立ち向かう。競争の中で少年たちは友情を深めていく…(あらすじより)

【感想(ネタバレあり)】

数年前から追っている阿部智里さんの八咫烏シリーズの4作目を久々に再読。

突然の学園もの!若宮に仕えたときの力をつけるために勁草院に入学した雪哉。次々と起こる事件に雪哉が立ち向かう!とあらすじにあるけど、立ち向かうどころか半分くらいは雪哉が仕組んでいる…!笑

勁草院にいる兄宮派を炙り出すために、あえて対立を激化させるよう仕組んだり、将来若宮の優秀な部下となるよう、目をつけた者をうまいこと育てたり、全て雪哉の掌の上で事が進んでいて、感心するというよりはむしろ恐ろしい。

特に明留のお見舞いにきて、明留の勘違いというか、思い違いを正すときの雪哉は怖かった〜普段のすっとぼけた感じが一切なくて、明留のこともお前呼びで、これまでの家の力を極力使わないようにする雪哉じゃなくて、家の力でも権力でも若宮のために、目的を達成するために、なんでも使っていくという意志が見えて、今までの雪哉とは全く違うんだということが感じられたシーンだったな。

先生の一人である清賢に「化け物を倒すためには、己も化け物になるしかない」と思っているだろうと言われて、図星だからか答えに窮するシーンもあるって、雪哉が色んなものを犠牲にしてでも若宮に仕えて猿たちと戦おうとしているという固い決意みたいなのが垣間見えた。でもそれって孤独だよね。

だから、雪哉が勁草院で仲間たち友情を育めたことはちょっと救い。特に懐が深い茂丸は、雪哉にとってどれだけ救いになってることか。茂丸は雪哉には腹黒い一面があって、目的を達成するために仲間たちを利用してるかもしれないけど、そこを含めてお前と付き合ってるんだよ、ということを雪哉に言ってあげるシーンは結構ほろりときた。

真の金烏の新たな謎も出てきた。真の金烏の遺体は通常、外界との山内をつなぐ禁門の周囲を囲むようにして、棺に入れて安置されるんだけど、若宮の先代の金烏は遺体がなく、まさに空棺。遺体がないせいか、受け継がれるはずの金烏の記憶が若宮にはない。

この先代の金烏の遺体、実は禁門の向こう側にあって、先代の金烏は禁門を山内の外側から封印して亡くなっていた。遺体に触れた若宮は、少しだけ記憶を取り戻すんだけど、先代の金烏が亡くなったときの記憶がわずかに戻っただけで、なぜそのような自体になったかはわからないまはま4作目は終わる。

早く続きを読まなきゃ!これ、リアルタイムで読んでたらどうなるか気になりすぎると思うんだけどみんなどうしてたんだろう。

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