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TEAM SWALLOWS 2021〜煌めく瞬間に捕らわれて


もう数時間後にはキャンプインを迎えようとしている。短いオフだった。

しかし、未だに2021年11月27日のことを思い出すし、あの一週間に捕らわれて抜け出せない。ドキドキワクワク、様々な感情の間に蠢いた一週間だった。いや1年間だったという方が正しいか。

あの日、僕は15年来の夢をかなえた。
野球を好きになった時、日本シリーズは巨人や中日が出るものだった。
ハムや西武と繰り広げられる激闘を、外から指をくわえて眺めただけだった。

07年、岩瀬が呼ばれて揺れるナゴヤドーム、08の平尾や10年の岡田のタイムリーの映像を今でもはっきり覚えている。
2011年、おぼろげながら夢舞台が見えた。あの井端のホームランはいまだにトラウマだ。青木さんと日本シリーズに行けなかったことをとても悔いた。

13年、マー君が9回に出てくる姿、とても感動した。

15年、ついにヤクルトが日本シリーズに出た。
信じられないと思うが、出た。僕はその事実に胸が震えた。

しかし、あと4勝は、言葉にすると簡単に見えるが、実際はとても難しかった。

マーくんが去って以降は福岡の覇権だった。日本一4連覇。14年から20年で6回の日本一。19年20年はスイープ。今後はホークスの覇権が続くんだろうな。もしかすると今後ヤクルトにその瞬間は訪れないのかもしれない。諦めに近い感情を抱いたこともあった。ヤクルトじゃなくても日本シリーズを現地で見たいと思い、メラドのチケットを申し込んだりもした。西武がCSで負けたから意味なかったけど。01年や90年代の髙津さんが胴上げ投手となる動画を見て、あと15年早く生まれなかったことを悔いた。

ホークス、そしてパ・リーグの連覇をセ・リーグ最下位のヤクルトが止めるという妄想を何度もした。実現なんかしない、そんなのわかってた。その妄想は布団の中や空を見上げて黄昏るときだけのもののはず、だった。


しかし2021年、夢は現実となった。

開幕戦のサンズのHR、未だに忘れられない。開幕3試合終わった時点でグッチも離脱。今年も最下位だと確信した。4試合目の初勝利の後のコロナ禍。知った時は絶句以外の何物でもなかった。高梨のあの試合のピッチング、忘れられないなぁ。そして4月4日。梅野が廣岡に打たれた時、あれはショックだった。ドーム内も、廣岡を讃えるTLも地獄だった。

最後ばかりが注目されるけど、あの時期に頑張ったみんながいたからこその優勝だ、と思う。金久保の初勝利、雨の中見れてよかった。打ちまくる山田村上、かっこよかった。そしてついに来たオスナのサヨナラタイムリー。仲のいいみんなで喜び合ったのが昨日のように思える。

4月末から5月の苦しい時期を耐えたのも素晴らしかった。推しが戸柱に撃たれたのも忘れられない。まりもの力投で0-0の引き分け、西浦の値千金決勝HR、青木さんの2500本、懐かしい。近藤さんの頑張りもすごかった。

6月になると推しが活躍し出した。無死満塁無失点、最高だった。石川さんが戻ってきたのもこの頃だ。10-0の西武戦は最高だった。青木さん逆転タイムリーもあった。ぺいぺい3連勝は喜びより驚きだった。川端の決勝HR、あれも興奮したし、何より梅野くんの活躍が誇らしかった。

7月。4連敗を止める丈のスアレス撃破も印象深い。現地古賀くん4安打は嬉しかったなぁ。アホボケ翌日の星くんのリリーフ、なべちゃんの決勝タイムリーはめちゃくちゃ震えた。内川さんのサヨナラタイムリーに興奮してなぜか神宮から渋谷まで歩いたのもいい思い出。ドーム打ちまくりもあった。

オリンピック。ガフィvs哲人とかヤクルト勢の決勝打、お姫様抱っこ。今思えばヤクルトの年なのを暗示していたのかもしれない。

後半戦。静岡の川端タイムリー、あれもよかった。燕パワーの原樹理もあった。そして苦しい場面での絶対大丈夫&嶋田事件。あの時期はもうだめかと何度も思った。9/15の阪神戦。荒木さんのスチールからの村上タイムリー、小川ー清水ーガフィで逃げ切った1-0。あの試合は大きかったと思う。あの時期はグラスラが驚くくらい出た。しおみサイクルもあった。
9/22、ハマスタ、9回表、ムーチョのタイムリー。遂に、首位に立った。春からよくここまで来たなぁ。まだ終わってないのに感慨深い気分に浸った。そして9連勝。16試合連続で負けたチームが13試合負けねえなんて信じられなかったよ。

行くしかねえと思って全部行った勝負の6連戦。どの試合も負けてもおかしくない中、「絶対大丈夫」となんど唱えたことだろう。あの一週間はずーっと緊張しっぱなしだった。初戦のマクガフ、終わりなき旅で出てきたときはウルっときた。哲人のサヨナラヒット。思い返しても意味わからん。そういえばあの一週間のMVPは西浦の気がする。いや、塩見か?
マジックが9になる。ようやく終わりが見えたはず…だった。

しかし、待っていたのは地獄だった。毎日阪神の結果を見てはがっかりする毎日。塩見のトンネル。絶望して今季初めて途中帰宅した。もうだめだ。正直諦めて最後は布団から出てこれなくなっていた。

それでも腹くくって、最後は勝った。絶対大丈夫だった。セ・リーグ制覇。
その夜は喋って飲んだ。素晴らしい夜だった。
ありがとう中日ドラゴンズ。

雄平の引退試合ができたのもよかった。

クライマックス、正直キツイかなと思ってたけど杞憂だった。奥川!塩見!けけ!慎吾さん!そして青木さん!怖いくらいにとんとん拍子だった。

そして迎えた日本シリーズ。

第一戦、青木さんが日本シリーズに立っている。それだけで10年前がフラッシュバックして胸が震えた。

しかし、まさかのサヨナラ負け、あぁ、やっぱり日本一は無理かもしれない。いつもはおいしい先輩と食べる焼肉も、この日だけは味気なく感じた。

それでもこういう逆境を跳ね返すのが2021のチームスワローズ。けけの頑張りでタイに戻して帰京する。

初めて現地で日本シリーズに足を踏み入れた第三戦、足が震えた。選手の整列やアオダモ植樹。普段はほとんど見ない光景。これがずっと夢見てた日本シリーズか。

むーちょおおおおおおおおおお!!!さんたなあぁぁああああああ!!!!ドームが揺れる。歓喜に沸く。心が震える。すげえや。
第四戦、石川さんの真骨頂が見られた。6回、同点直後のタイムリー。石川さんに勝ちがついた。それも日本シリーズで。本当に良かった。
そして第5戦、この物語の冒頭のシーンを迎えることになる。あとは記してきた通りだ。



文字通り日本シリーズにふさわしい熱戦ばかりだった。

「最下位同士?」「誰も見ない」「注目度が低い」
そう言われて悔しかった。見返してくれ。そう願った。

願いは叶い、この声は日に日に変わっていく。
「今年は面白い」「毎試合やべえ」そんな声であふれ、毎日のように「日本シリーズ 面白い」がトレンドで上がってきた。リア友がインスタで「今年の日本シリーズ面白すぎてつい見ちゃう」といわれた時はガッツポーズをした。見たか!

「面白い日本シリーズにする」という意味ではオリックスさんが仲間に思えた。オリックスファンが「ヤクルトとやりたい」と言ってくれたのに喜んだ。公式さんが「因縁の好敵手」こう言ってくれたのは心から嬉しかった。下位に沈む&同じ地域の人気チームの陰に隠れるといったところ、魅力あふれる若手、新しい球界のスター、メジャーから帰ってきた&やってきたスター、チーム愛を貫くべテラン…なんか親しみがわく部分が多い。だからこそ魅力的に見えたのかもしれない。勝手に思ってるだけかもしれんけど(笑)

「全員で勝つ」vs「絶対大丈夫」。お互いが死力を尽くしたように思う。ムーチョが「精魂尽き果てた」というのは偽りのない事実じゃないだろうか。3か月経って改めて思う。オリックスとじゃなかったらここまで面白く、胸が熱くなる試合にはならなかったと。宗もアツアツだったけど。また、相まみえられたら幸いです。

とはいえ辛かった。一試合の勝敗で大きく戦況は変わる。ドキドキしながら、18時を迎え、試合中も毎試合喜怒哀楽が激しいし。ホッとできるのは勝って寝るまでの数時間だけだった。まあ10月からずっとそんな感じだったけど(笑)

でも今ならわかる。それが本当に恵まれて、幸せで、最高な時間なんだと。
そうじゃなければ、一週間経っても「帝国華撃団」と「もすかう」のオリックス1,2番コンビの登場曲が頭の中で流れ続けないし、お風呂で毎日川端のタイムリーやサンタナのホームランを見ることなんてない。ましてや、3か月後に10000字を超える体験記なんて書けない。多分、今後の人生で戻れる日々があるなら?という問いをされたら、この秋に戻るだろう。


やっぱり、チームスワローズ2021は、僕らの心を惹きつけて離さず、体、金、すべてを奪いつくすだけの魅力を持っていたと思う。戦うたびに強くなる。ジャンプの世界がそこにはあった。読んだことないけど。青木さん、石川さんが優勝する姿は、やっぱり2011を思い返すと、ようやくあの悔しさを塗り替えられるというか、胸がいっぱいになった。この最下位のチームを引き受けてくれた高津さん、山田、小川、石山…という日本一を目指してこのチームにのこったメンバーが喜んでいるのが嬉しかった。そして村上、奥川、高橋、清水という新たなスター、復活、覚醒した慎吾さん、ムーチョ、しおみん、大下さん、樹理。グッチさんや今野君、近藤さん、嶋さん、なっしー、まりもといった移籍して夢を掴んだメンバー、ガフィ、オスナサンタナサイス二スアちゃんというコロナ禍でも全力で戦ってくれた助っ人たち、他にも梅氏、星くん、坂本さん、古賀君、大西くん、なおみち、ひゆう、荒木さん、たけし…そしてファームも魅力的だった。本当に最高のメンバーだった。みんなが報われてくれたのが嬉しかった。チームスワローズ2021は、決して「最強」のチームではなかったかもしれない。しかし、間違いなく「最高」のチームだったと思う。
このチームを僕の心、体、金すべてを尽くして追えたのは、僕にとって何事にも代えがたい財産だし、最高の青春だったと誇りを持って言える。幸せだった。浪人してまで東京の大学入ってよかった笑


ヤクルトファンを辞めないでよかった。
振り返ればファン2年目にはサヨナラエラーで眼前優勝され、オフにラミレスグライシンガーがそのチームに抜かれるいなくなるトラウマを獲得し、ようやく癒えつつあったと思った11年には井端に新しいトラウマを植え付けられた。15年に優勝した。ヤクルトも優勝できるんだと思った。しかし、そこからもキツかった。17年、受験以上にヤクルトの結果に病んだ。18年、CSで悪夢を見た。19年の16連敗はほんとうにしんどい毎日の連続だった。20年はなかなか光の見えない1年だった。それでもヤクルトファンであり続けたからこそ、最高のチームに出会えて、この優勝を心から喜ぶことが出来るのだと思う。2021もある意味精神を蝕んできたけど(笑)。本当にヤクルトファンになってよかった。そして、辞めないでよかった。


新しいシーズンが始まる。またこのチームは色々な試合をして僕の精神を蝕むのだろう。しかし、きっといつか神戸の夜のような時が来る。

そう信じて僕は今年も神宮へ通う。



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