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全員精神疾患者のバンド「cheekcut」の曲ができるまで

「登場人物紹介」

・ぴょん
ベースボーカル。昔一緒に飲んでた看護婦に「あんな顔が死んでる人初めて見た!」と驚かれる。鼻が外人みたいに高い。

・はるこ
キーボードボーカル。日本海から来たバンド最年少の女。唯一車を運転出来るのは彼女だけである。何故か農業に詳しい。

・アライタイツ
ドラムス。ぴょんとほぼ同い年。2020年になった途端に白髪と腰痛がはじまって愕然とする。親父が最近出家した。


前回書きそびれたのだが、ぴょんと僕が出会ったとき、そういえば同じく界隈で知りあったギターがいたのだった。

完全に精神疾患スリーピースロックバンド結成の流れではあったが、正直ギターとはあまり価値感や趣味が合っていなかった。

しかしそのギターにより、「デパスオーバードーズ」というとんでもバンドを組まされそうになる。僕はぴょんとは組みたかったけど、そのギターは絶対に組みたくなかったので大ピンチであった。
でも結局そいつはなんか色々やらかしてどっか消えたからほっとした。なんだデパスオーバードーズて。用法容量は守れ。


さて、そんなデパス野郎が消え、ベースボーカル、キーボードボーカル、ドラムのスリーピースギターレスロックバンドという変わった編成となった。病んだクラムボンである。

cheekcutの作詞作曲はぴょんくん。ベーシストが全て作詞作曲するバンドもなかなかいないだろうが、さらに彼はあまりベースから曲を作らない。まずあやつは思い浮かんだ鼻歌から作るのだ。そしてメロディを固め、歌詞をつけてからベースラインをつける。変わった曲作りをするなぁと、いつも思う。

前にぴょんの鼻歌を聞いた知人のちみっこが、しばらくそれを口ずさむと言った可愛い事件もあった。すごくほのぼのしたし、ぴょんの作ったメロディはちみっこにも響くんだなぁとしみじみした。

基盤が出来たら、ぴょんからベースラインとメロディを聞き、僕とはるこはドラムとキーボードを考える。通話などでこんな感じ〜と伝えたり伝えなかったりする。譜面には起こせないふわふわ漂うイメージから曲作りがはじまるのだ。

そして、各々考えたフレーズやリズムを持ち寄り、月1回スタジオに6時間入って疲れるまで曲作りをする。5分で完成する曲もあるが、贅沢に何時間、何日間もかけて作る曲もある。スタジオが終わる頃には皆ヘトヘトになり、翌日か翌々日筋肉痛になるのだ。

スタジオ外の役割としては、バンドのTwitterを更新してるのがぴょん、撮影、簡単な映像編集をしているのが僕、はるこは....だいたい踊ってばかりいるような気がする。


ぴょんと僕は19歳そこらで楽器をはじめ、その数ヶ月後にはライブに出ていた。2人共独学で突っ走るような練習をしており、ずっと耳コピであった。なので両者は楽譜が一切読めず、ほぼ感覚といわゆるノリで演奏している。彼はスタジオ毎にベースラインを変えてくるし、僕もあまり決まったドラムは考えておらず、その場その場で変えることも多い。

そんな2人に対し、はるこは譜面の音楽、ブラスバンドを10年近くやってからバンドの世界に飛び込んできた。現在とても苦戦をしている。しかもたまに変な拍子や連符?も出てくるので、楽譜のない音楽に慣れるのに必死になっている。そこは非常に申し訳ないな、と思う。いつもごめん、でも頑張って。



さて、ここまで読んでいただいたらわかるかもしれないが、僕らはバンドとして「精神疾患」をそこまで押し出してはいない。確かにメンバー全員精神障害、発達障害を持っているが、それを音楽に着飾るのは違うな、と感じている。

全員精神障害者手帳3級持ちのバンド、と物珍しい名刺代わりにはしているが、名刺代わりにしているのみである。各々障害に配慮はしているが、あとはただただ3人共黙々と音楽を作っているだけなのだ。

このバンドで誰かを応援するつもりはないし、生きづらさを訴えるメッセージもない、自殺について語ることもないのだ。そこに対する熱意はないんだと思うし、なくても良いんじゃないか。あくまで我々はね。



最後に、cheekcutとして活動する上で守らないといけない三原則を紹介しよう。


1.無理しない
2.遅刻は許す
3.誰かが飛んでも恨まない

夏くらいには、ライブしたいな。


文:アライ  タイツ

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