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史上最高の試合【Mリーグセミファイナル最終戦】

こんにちわせりん、わせりんです。

Mリーグの歴史に新たな1ページが刻まれましたね。

4月30日に行われたセミファイナル最終戦。

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メンツ的に最高峰とも言える一戦です。

正直、プロの放送対局って明らかなミスを、メンツの違い、ルールの違い、選手にはこんな意図があった、極限状態での戦い、気ぃ狂うわなどのよく分からない言葉で隠して騙し騙し見せているところがあるじゃ無いですか。

それはMリーグでも同じですよね。

周りは気づいてるけどわざわざ言わないだけです。

クリスマスに枕元に置かれるプレゼントは親が置いているってのは大人になるにつれて分かってくるじゃ無いですか。それを親を捕まえてサンタクロースじゃなくててめえが置いてるんだろうが!みたいな子供がいたら頭がおかしいですよ。

しかし、この試合は違いました。風林火山のファイナル進出を賭けた戦いというエンタメ的に盛り上がる側面ももちろんあるのですが、内容も素晴らしいものでした。

ここまでミスが少ない試合はMリーグでも初めてなんじゃ無いでしょうか。しかも、単に高い手をあがったあがられたでは無く、オーラスが多井プロのアシストによって終局するという珍しい展開になっています。

いかにも玄人だけが楽しめそうな内容に聞こえますが、間違いなくこの試合の中には人を惹きつける魅力と熱さと技術がありました。

私も今まで見てきた試合の中で一番好きな試合になりました。

もう既に、色々な人が絶賛して観戦記や感想などがたくさん呟かれたり書かれたりしていますので、もしかしたら二番煎じどころか三番煎じ四番煎じくらいになる可能性もありますが、私なりに気になったところを全てピックアップして書いています。

ありがたいことに巷の観戦記では物足りない毒を求める人が私に観戦記早く書けと発破をかけてくれましたので、褒めるだけじゃなくきちんと間違いには指摘も入れています笑

明日から始まるファイナル前に見ると気持ちが昂って盛り上がれると思いますのでMリーグのお供に是非読んでみてください。


◉はじめに

今日はいつもの記事と少し形式を変えて書いています。

いつもであれば局ごとにミスのあった打牌を取り上げて検討する形式なのですが、今回は各選手の内容が良かったので、選手を一人決めてその人の視点で始まりから終わりまでの打牌を通して検討しています。

この形式で全員分の視点を検討しているのでもちろん記事のボリュームはすごいことになってます笑

内容的にも勝又プロの視点で検討しているときに出てくる役牌を一枚だけ絞るという項目は今までの記事にも書いてない真新しい項目で実践でも使えるので参考になると思います。

細かい条件はいいので「風林火山は連帯すればファイナル進出」という条件だけ頭に入れて長いので数日に分けてお読みください。

今回の記事も

田中航プロからお借りしました。私が作ってと言ったら作ってくれる顔イケメンの私と真逆の心イケメンです。皆さんフォローしてください。

と言うことで、元気よく日本一ためになる、Mリーグ観戦記事に参りましょう。

それではどうぞ。


<堀慎吾視点>

総評:言わずと知れた超トップレベルの選手ですが、病み上がりのせいか本当に細かいところで精彩を欠いていたように見えました。それでもめちゃくちゃ強いのですが笑

◉東一局、4sを切ってホンイツに向かった場面

今回のミスレベル:20/100(ボウリングでストライクを出した時にイエーイ!とハイタッチの素振りをするも自分だけ無視されるレベル)

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自風の西がトイツなこともあり、ホンイツを目指すと高打点が狙えます。ドラが東なのでホンイツで使いやすいのもいいですね。

ということで、9sからとかではなく4sから切ってホンイツ一直線の打牌をします。

しかし、これは9sを切っておいた方がよかったように思えます。

二つ理由があって、

一つは、ピンズの未完成のターツが77899pの部分で一盃口を伴うということです

これが例えば67789pのような両面であれば門前でテンパイした時にリーチのみの1300~vs西ホンイツの3900の比較になりホンイツが優位になりやすいのですが、今回はリーチ一盃口2600~vs西ホンイツ3900の比較です。

なので打点として特にホンイツが優れているわけではなく、副露が使える点においてホンイツのメリットがある感じですね。

なので、今回はメンツ手を見切らない9sあたりを切っておくのが良かったように思います。

二つ目の理由は上家の第一打が8sであることです。

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配牌オリ気味のチートイなどの場合は西がポンできる可能性が下がってしまいますし、最悪の場合はピンズのホンイツ被りもあり得ます。

単に手が整っているだけの可能性もありますが、それでもピンズが今後高くなる可能性があります。

後にピンズホンイツが出来にくくなることを考慮して、やはりこれは9sを切ってメンツ手の可能性を残した方がいいでしょう。

少なくとも・・・

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この時点で上家に対してピンズが高いという情報の解像度が上がっているので、最悪でもここで9sを切るべきだったと思います。

その後、

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西をポンした後に、9pが新ドラになってマンガン〜のイーシャンテンになったところで上家からリーチが入ります。

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4sを止めて、一旦1pを切ります。

手としてはイーシャンテンですし4sを止めるのは当たり前なんですが、この時58p、69pを引いたら堀プロがどうするかは見てみたかったですね。

上家のリーチはチートイなどの変則手は否定されてはいませんが、メンツ手だった場合は14sかピンズのどこかが濃厚です。36mもありますがリーチの前に3mのカンが入っているので少し薄めです。

対面の多井プロに1sのカンが入っています。自分から見て6枚見えの14sなので、もし上家が14sのターツを持っていた場合かなりの可能性で埋まってなさそうです。

69pの9pが既に場に2枚枯れていて4枚見えていることを考慮すると、58p引きや58pチーの69pテンパイではマンガンテンパイといえども4sを押さなかったんじゃないかなあと思っています。

6pから引いて58pが残った場合は4sを勝負しそうですが、6pがチー出来る場合は上家の待ちの筆頭である369pが否定されてしまうので4sの危険度が上がってしまいます。

と同時に上家が58pを掴んでもツモと言われる可能性も上がっているので6pチーの場合は4sを押さなかったんじゃないかなあと。

どこに正しい押し引きのバランスがあるかは難しいですが、堀プロはこのような判断をするんじゃないかなあと思います。


◉東二局、第一打に中を切った場面

今回のミスレベル:0/100(初めて使った柔軟剤の香りが好きな香りのレベル)

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これも堀プロらしい打牌ですよね。手にメンツがないですし打点もないのでほとんどの人が北を合わせ打つと思います。

堀プロ的にはメンツ手が十分狙えるということと、手が遅いからこそ役牌よりは一枚切れの字牌の守備力を持って置きたいってことなのでしょう。運良くテンパイした時だけ前に出るくらいの心構えですね。

6巡目、運良く自風の南が重なりました。ここでターツオーバーに受ける3s切り。

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自風の南がトイツなこともあり、素直に1p切りか2m切りがいいように思います。まあ、24mを払うのが模範的な打牌でしょうね。

マンズが良ければ13切り、ピンズが良ければ24m切りで基本的には使い分けていくことになりますが、マンズとピンズのどちらもいい場合はターツオーバーに受ける選択肢もあるでしょう。

今回はターツオーバーに受けた方がいい情報が無いので素直に24m切りですかね。

数巡後、

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結局ここでカンチャンを整理することになりました。二人の現物である3pの方を残して1pから切っています。

ここら辺は繊細でさすがといったところですね。

そして、

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下家の4sポンに間に合わないと判断してベタオリを開始します。上家の5s押しにきちんと反応して1pではなく南を切っています。

ぼーっと見ていると気づきにくいですが素晴らしい打牌です。


◉東二局、1sを切った場面

今回のミスレベル:0/100(朝の星座占いのいいところだけを信じるレベル)

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3sが二度受けなことと、白を切ってしまうと守備力がなくなってしまう点、そして最終形は發単騎にすることから12sを切っています。

どういうことかと言うと

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このような形になっても結局は打点面でメリットの大きい發単騎でいいので1s(5s)を切るということです。

この形でも1sを切るのならこの時点で1sの役割は1sを縦に引いた時しかありません。縦引きだけを見るのなら1sだろうが白だろうが価値は一緒ですよね。

と言うことで、アンパイとしても使える白を残した方がいいってことですね。

何気ない一打ですが、自然に12sを切れるのはめちゃくちゃすごいですよね。雀力が高い。


◉東三局、オタ風の南を切った場面

今回のミスレベル:20/100(テーブルに備え付けの塩の出し方が分からないレベル)

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これはメンツ手としては厳しいので南が重なった時にホンイツに向かえるように9mか9sあたりを切った方がいいでしょう。

数巡後、

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メンツ手のリャンシャンテンになります。単純な効率で言うと89mを切った方がいいでしょうが堀プロは5m切り。

5mをトイツ落としすることになるので7m待ちがいい待ちになることと、副露している上家が4mを切っているので自分がリーチをかけた時にアンパイとして7mが選ばれやすくなることも踏まえての判断だと思います。

単純にピンズに感触がなかったとかもありそうですが。

いい判断だと思います。



◉東四局、仕掛けに対して9mを切らずに9pを切った場面

今回のミスレベル:40/100(電子レンジで温めたおかずを忘れてそのまま放置してしまうレベル)

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下家のソーズの染めと対面のタンヤオっぽくない仕掛けに対して9mを止めます。これは9mが危険というよりもテンパイ時に出ていくソーズがどちらにも切りきれないので、8mが自分から4枚見えている9mをアンパイとして残して置きたかったのでしょう。

しかし、

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この対面の白はポンしたほうがよかったでしょう。ポンして4pも切れますし7mも9mも切れます。残り3回のツモ番なのですからアンパイは足りています。ケイテンを取りに行かない意味がないです。

これは堀プロっぽく無いなあと思いました。この日は堀プロは病み上がりだったらしく、そのせいもあってか色々な処理が追いつかなかったのかなあと思っています。


◉東四局、6mを切って下家の親に絞った場面

今回のミスレベル:0/100(都道府県の場所が分かるレベル)

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下家の7sポンを見て、字牌がプロ試験に私服で行くくらい浮いているこの手では行けないと判断して絞りにシフトチェンジします。

自身のあがりは見ていないので他家に危険になりやすい6mから処理しています。

絞る絞らないは一段階上の技術だからいいとして、このように7sポンされた時に5巡目だけど間に合わないからオリよう!となることが実戦では大事ですね。

放銃率の高い人はこのような手からとりあえずダラダラと字牌を切って進めている印象があります。自分がこの席に座って座っていたら何を切るか考えてみるといいかもしれませんね。


◉南一局、7mを切ってスリムに構えた場面

今回のミスレベル:0/100(飼っている犬がお手を覚えたレベル)

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単純な効率だけでいえばもちろん白切りです。しかし、この手もドラが浮いている上に対面の親の仕掛けがホンイツでもなさそうなので単にめちゃくちゃ速そうです。

そのために、この手も間に合わないと判断して対面に対して既にケアをしています。

白が放銃になること自体はそんなに無いと思っているでしょうが、この手から万が一の放銃や、何らかの牌を鳴かせてしまい手をすすめてしまうことは避けたいってことですね。

3mか7mのどちらを切るかは親の現物の6mを残しておいた方が若干あがり率は高くなりそうですが、ポンされる可能性の無い7mを選択しています。

数巡後、

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これも3mを切ってます。対面をケアしつつドラが浮いているのでチートイを強く見た選択にシフトしています。

さらに数巡後、

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ツモが良くてメンツ手のイーシャンテンになってしまいました。

ここで下家のリーチに対して3pを切ります。

これはよく言われる「宣言牌の裏筋は通る理論」ですね。2p切りのリーチに36pは通りやすいよねって話です。

これは元々、245pの形で持ってたら2pをリーチまで持っておかないから2p切りリーチには36pが安全になる!って理屈なのですがこの理屈には穴がありすぎます。

例えば223445pの形や122345pの形は36p待ちになりますが2pを最後まで持っておくでしょうし、24pから5pを引いての変化や23345pなどから亜両面の36pに受けたケースもあります。単純に122pからペン3pに受けた可能性とかもありますよね。

確かに245pの形で持ってたら2pをリーチまで持っておかないから2p切りリーチには36pが安全になるという理屈自体は合っているのですが、逆に2pを最後まで持っていたから36pになるケースも同様に増えているので全体としては36pは安全になっていません。

じゃあ、宣言牌の裏筋安全理論は使えないじゃん!と思うかもしれません。

そんなことはありません。2pを最後まで持っていて36pになるケースがどのくらいあり得るかを考えてあげればいいのです。

もう一度、場面を振り返ってみましょう。

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リーチ宣言牌を含めて2pが自分の目から3枚見えています。これにより223445pや122345pの2pを持つパターンが減っています。残り一枚の2pが手に無いと複合系が作れないですからね。

また、亜両面やノベタンになるケースも36pよりも25pの枚数が多いために25pに受けるので可能性がかなり減っています。

さらに、園田プロはトップ目です。もし36pのテンパイをした場合は待ちの薄さと親の現物であることを考慮して役ありであればダマを選択するケースが多くなるでしょう。そもそも南がドラなために高打点のテンパイが作りにくいでしょうから、平和やタンヤオのみのダマになるケースはそこそこありそうです。

以上のことから、2pが宣言牌の時に36pが当たるケースが減っているので3pは通りやすいとみてイーシャンテンキープしています。

ドラの南が浮いているので手の価値としてはイマイチですが、西も3pも危険度に大差なさそうですしラス目であることも含めて押したのでしょう。

シビアな判断だと思います。


◉南三局、見えない攻防

今回のミスレベル:0/100(久しぶりに学生の頃に聴いた音楽を聴いて懐かしむレベル)

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この局が堀プロ絡みで一番見応えがあったんでは無いでしょうか。上家のホンイツっぽい仕掛けに対して白を仕掛けます。

ここから、

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上家に5sの手出しが入ります。この5s手出しを見逃しません。

2副露ならまだしも3副露で5sをホンイツぼかしのために持っているのは考えられないため上家は5s周りのソーズを最低一枚は持ってそうです。つまり、上家がテンパイしているならホンイツではない、ホンイツならイーシャンテンであることが分かります。

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その情報を頭に入れつつテンパイしました。カン2mも4mが無いためによく見えますが、上家がホンイツの場合は2mがトイツで持たれている可能性もあるので確実な西が待ちに入るシャンポンを選択します。

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すると、上家がドラの9mをチーして4sを切り裸単騎になりました。

この時点で上家は

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のような形から何らかのマンズか字牌を持ってきてホンイツに移行したことが分かります。

この何らかの牌の候補で可能性がある牌を考えてみましょう。

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この時点でホンイツに行きたくなる牌ってことですよね。マンズであれば2mか3m、字牌であれば西か中であればホンイツに移行してもおかしくなさそうですね。

つまり、堀プロはそのうち3mと西に関しては掴んでもあがりになりますし、2m引きでも3mを切るかオリるかの選択ができます。さらに言うと、5sを切る前にション牌の發を切っているのでション牌への評価が低い打ち手と考えれば同じ条件の中の場合はホンイツに向かわない可能性があります。

以上から上家の待ちは23mか西の可能性が非常に高そうです。堀プロはほぼ負けなしですね。

ということで、

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カンです。打点を上げたいというよりは自分の負けがないのでカンしたって感じでしょうね。カン自体はそこまで突飛なことではありませんがそこに至るプロセスや思考はさすがトッププロですね。


<園田賢視点>

総評:全体的にきちんと打てていました。たまにお茶目な仕掛けをするくらい。運がないです。

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