【Pauper】何故パウパーの緑は最弱なのか

●前置きの前置き

長いから太字で「ポイント:ほげほげ」って書かれてるやつだけ読めば大体わかるよ。

●前置き

パウパーは「『小さい+1アド』を積み重ねていくフォーマット」である。
モダンホライゾンと統率者レジェンズを皮切りに大幅にカードパワーが上がり、もうかつての「ちょっとしたコモンカードを使って君だけのデッキを組んでわちゃわちゃしよう」というフォーマットではなくなり、立派なエターナルフォーマットの一つになったが、この前提はほぼ崩れていない。
カードの質は上がったが、1枚で+2以上のアドバンテージを獲得できるカードの枚数自体はほとんど変わっていないし、出てきても基本的に禁止されている。

めちゃくちゃ手札増えるねえ
3枚引いたらだめだよ
このメカニズム最近レガシーも壊してるらしいねえ

ここに挙げたものは一例だが、基本的に「常軌を逸したアドバンテージ獲得カードは禁止される」という認識である。この常軌を逸したアドバンテージというのはハンドアドバンテージに限らない。

こういうのもそう。今回伝えたいことはここじゃないからわかって

マジック:ザ・ギャザリングにリミテッドの概念がある限り、よほどのことが無い限りこのラインを著しく越えたカードは作られない。
昨今のリミテッドチームは優秀で、どのエキスパンションもリミテッドは概ね好評だ。現代のパウパー環境に影響を与えるようなカードが何枚も作られたらリミテッドが壊れてしまう。当然だけど商品の売上的に重要なのはリミテッド>>>パウパーだからね。
ってかお世辞抜きにリミテッドはずーーーっと面白い。マジで良環境。イコリアとゼンディカーの夜明けあたりは特に面白かった。

ポイント:商業価値はリミテッド>>>パウパー

よってパウパーには後続を皆殺しにし、盤面を制圧する圧倒的クリーチャーはいないし、1枚でひっくり返る爆弾カードも刷られない。
あとテキスト長いややこしいカードも刷られない・・・と思う。

こいつテキストめっちゃ長くてびっくりしたよね

というわけで、それら禁止されるべきカードを除外して、カードとカードを組み合わせて生み出された僅かなアドバンテージを積み重ねて勝利するのがこのパウパーというフォーマットの基本的構造である。

●パウパー最弱の色「緑」

結論から言うとパウパー環境において緑は最弱の色だ。
戦乱のゼンディカーあたりから直近のローテーション前のひたすらに緑のクリーチャーが強かったスタンダードをやっている人間からしたら信じられないだろうけど、クリーチャーの色である緑が一番弱いのだ。

「緑単ストンピィ」という古からあるアーキタイプがある。
緑の優秀なウィニークリーチャーを《巨森の蔦/Vines of Vastwood》で守りながら《怨恨/Rancor》や《象の導き/Elephant Guide》で強化し殴り倒すストンピィのお手本のようなアーキタイプである。

現代のカードの採用も常に検討されてアップデートされておりデッキパワーとしては申し分無い。緑のデッキの良さがバランス良く全て詰まった初心者にも中上級者にも是非使ってもらいたいデッキだ。環境理解とコンバットのスキルが備わった上級者が使用すればきちんと勝てる。スプラトゥーンでいうとわかばシューターみたいなものかな。

しかし昨今のパウパーシーンでこのデッキがメタ上位にきたことは無い。
何故だろうか。

それはこのデッキのベースにある構造が「1と1を足して2を作る」ものだからだ。

2/2のクリーチャーに+3/+3修正のエンチャントを貼って5/5のクリーチャーを作って勝つ。わ~強い。手札は2枚使っているけどね。
でもあのトップメタの青黒テラーってデッキは手札を減らさずに1枚で5/5になるクリーチャーを召喚できているね。
あの親和ってデッキは0マナで4/4のクリーチャーを召喚しているし、除去されようものならそれを生贄に捧げて2ドローに変換しているよ。
緑単ストンピィはどうだろうね。

緑単ストンピィの弱さはこの愚直さにある。

いくらクリーチャーの質を上げようと、そこに手札のリソースを割いている以上除去られると多くのアドバンテージを失ってしまう。
そのアドバンテージを埋めるのは熟練のプレイングスキルであり、その技術は初心者が持たないものである。
「初心者がはじめの一歩で使うのにうってつけだが、熟練のスキルが無いと高みには登れない」マジでわかばシューターじゃん。

スタンダードの緑が最強なのは除去られても何らかのアドバンテージを失わない「出たら仕事をする」カードばかりが採用されているからなのが大きく、残念ながらコモン構築であるパウパー環境にそんなクリーチャーはほぼいない。

お前らみたいなのが
コモンにいて
たまるか

「呪禁オーラ」は除去られることによるアドバンテージ損失をなくしているが、生物:オーラ:土地=1:1:1という事故リスクが常につきまとう。
「エルフ」はアドバンテージ獲得に長けるが《踏み荒らし/Overrun》のようなカードが無いため文字通り踏み荒らす力が無い。
「ランプ」は赤の力を借りて赤緑を最弱の2色カラーから脱却させてくれたが、やはり重い。
このような感じで緑を主としたアーキタイプは何かしら大きな構造的欠点を抱えている。

「他のカラーも大体そうだろ」と思うかもしれないが、緑は特に顕著なのである。何故か。緑が「クリーチャーの色」だからである。事項で詳しく説明する。

ポイント:パウパーにおいて緑のアーキタイプはどれも不器用

●リミテッド目線で考える緑の意図的な弱さ

スタンダードシーンにおいて今日びクリーチャーのインフレは凄まじく、上記の除去られた時の損失を最小限にする優秀なクリーチャーが数多く刷られた。
その結果最もクリーチャーが強い緑が長くスタンダードを蹂躙することとなった。あと次いで強い白。
最近は落ち着いてきたけど、かわりに今度は真っ黒になってしまったけどNE☆

緑のグッドスタッフで使用されるクリーチャーは大体レア以上で、コモンが採用されることは滅多に無い。
コモンになってくると各色のクリーチャーの質は比較的均等になり、緑だけが飛び抜けて強いということはほどんど無くなる。先述の通りリミテッド開発チームは優秀なので、ボムレアゲーは仕方ないにしろ全体的なゲームバランスは絶妙に調整している。コモンのクリーチャーカード単体でのパワーは控えめに、ドラフトアーキタイプを駆使して各色に平等に選択肢がある方向で開発を進める。

アンコモン以上は構築シーンに影響を与えてしまうので、バランス調整の役割がコモンに与えられるのはあまりに合理的だ。

ポイント:リミテにおいて各色のコモンクリーチャーカード単体のパワーは均等にデザインされている

ここで重要な要素が「ドラフトアーキタイプ」である。
最近の傾向として、2色の組み合わせ10通りにテーマを割り当てて、そのテーマにそったピックが上手くできると強いデッキが組めるようになる。
多少の差はあるが、開発の段階では当然パワーを均等にして色が極力偏らないようにする。
偏らないようにするのに最も効果的な方法は何だろうか。
クリーチャーの色である緑を顕著に強くしすぎないようにすることである。
緑だけアーキタイプガン無視で強いカードが作られてたら当然緑に偏るからね。

そんでもってリミテッドはいにしえのような1ブロック3セットにまたがる3パックを使用することはなくなった。
つまり1セットでメカニズムは完結し、エキスパンションごとのシナジーが薄くなってしまった。
それでも緑がクリーチャーの色である認識はそのままである。

つ ま り

白:ウィニーの色+セットごとの特徴
青:飛行の色+セットごとの特徴
黒:除去の色+セットごとの特徴
赤:火力の色+セットごとの特徴
緑:クリーチャーの色+セットごとの特徴+顕著に強くしすぎないようにする調整

めちゃくちゃざっくり書くとこうなる。こうすることでリミテッドが非常に面白くなる。実際面白い。

ポイント:クリーチャーの色である緑をやや下方修正することでリミテのバランスが取れる

「そんな、じゃあクリーチャーの色である緑の良さは基本セットくらいじゃないと発揮されないじゃん」

うん。そうだね。

そうなのだ。基本セットなら緑のカードパワーは上げても問題ない。それが緑の役割になるから。

緑はクリーチャーの色!
緑はクリーチャーの色!!
緑はクリーチャーの色!!!

でもその基本セットがあまり作られていないんだよなあ。

ポイント:最後の希望である基本セットが出ない

●まとめ

ここまでのポイントをまとめる

  • 商業価値はリミテッド>>>パウパー

  • パウパーにおいて緑のアーキタイプはどれも不器用

  • リミテにおいて各色のコモンクリーチャーカード単体のパワーは均等にデザインされている

  • クリーチャーの色である緑をやや下方修正することでリミテのバランスが取れる

  • 最後の希望である基本セットが出ない

もう答えがほぼ出ているのだが、健全なリミテッド環境のためにどうしても緑のクリーチャーの質を落とす必要があって、その下方修正&基本セットによるリカバリー供給断絶がまんまパウパーに影響しているのだ。
その下方修正が積もり積もった結果、緑がパウパー最弱の色になったってワケ。
強いカードは禁止すればいいけど、弱いカードはどうしようもないからね。

具体例を挙げろ?これだよ!でも団結のドミナリアのリミテッドマジで面白いから!

●終わりに

というわけで上手く伝わったかどうかはわからないけど、どうしてパウパーにおいて緑という色が弱いかを書きました。
しゃーないんだよ。ここでバランス取ろうとするとリミテッドが壊れるんだよ。それは一番やっちゃいけないんだよ。

テコ入れについても考えたけど
・リミテッドを想定していないセットでコモン落ち
 →バランス調整が難しすぎて環境壊しかねない
・「アドバンテージの色」の要素をコモンにも持ってくる
 →これはアリ。《紆余曲折/Winding Way》とか《ラノワールの幻想家/Llanowar Visionary》みたいなの。
くらいしか浮かばなかった。まぁここはPFPが考えることだから黙っていよう。

個人的に一番ちょうどいい緑復権のコモン落ちはこれ↓

常識の範囲のスタッツを持っていて、デカブツとも相打ちとれる

何にせよ現状のシステムではちょっとやそっとのことじゃ緑最弱伝説は覆らないんじゃないかなと思っています。

じゃあ僕はそろそろグルールアグロの調整をしないといけないから終わりにしますね。

は??緑は最弱なんじゃないのかって???おまえの緑系デッキへの愛はこんな弱小ブログの記事で諦めるような矮小なものなのか????お前の緑魂で!!!この記事を!!!否定してみせろよ!!!


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