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【キャリアに悩む商社マン必見】 ジェネラリストとも言われる商社マンが見出したベンチャー企業での経験の活かし方とは

CASE 002
杉崎 琢人
2014年総合商社に新卒入社。会計系を中心に業務システムのプロジェクトマネジメント、連結予決算、M&Aなどを経て2019年から株式会社日本データサイエンス研究所(JDSC)のデータサイエンティストとして勤務する。2019年9月からは勤務の傍ら東京大学大学院(修士課程)へ進学予定。

1. 商社の経験はベンチャー企業でも活かせるのか?

ー 総合商社からベンチャー企業に未経験枠で転職したと伺いました。

私は2014年に総合商社に新卒入社し、会計システムなど大型SIプロジェクトのPMO、海外現地法人でのIT戦略プロジェクトや食品関連ビジネスの予決算・M&A業務を経験し、入社から5年後の2019年にベンチャー企業である株式会社 日本データサイエンス研究所(※ 以下 JDSC)へ転職しました。

JDSCの採用枠はデータサイエンティストでしたが、機械学習系の業務経験はなかったので未経験枠での採用でした。

「総合商社からベンチャー企業に未経験者枠で転職」と聞くと「仕事のやり方にカルチャーマッチするのか」や「条件面で大幅ダウン?」といった印象がありますが、リアルな話をお伝えできたらと思います

ー JDSCではどんなお仕事をしているのですか?

直近では機械学習を活用した、ある卸ビジネスの仕入れ・発送量最適化プロジェクトに、データサイエンティストとして携わっています

これまでクライアントでは、毎日大量に発売される新商品を全国何万店もある店舗のどこにどれだけ送れば良いのか 等の全体調整を3桁単位の人員を投入して行っていました。

その業務をシステム化するプロジェクトに携わっています。機械学習を活用した需要予測を機能として提供しつつ、各店舗との取引条件や輸送費などの変動費、モデル自体の精度などを加味して機会損失を最小化するための最適化計算までを行っています。

古くからあるビジネスなので、クライアントから提供されるデータに足りない項目があったり、データフォーマットがバラバラだったりするのが難しいところです。

クライアントとの対話を通じて入手した知識を元に、AIにとって解釈しやすい形にデータを加工する「前処理」と呼ばれる工程が重要になります。また、ビジネスフローが複雑であることから、商品ごとに使えるデータの種類が異なるなど、オペレーション上の制約条件が生まれてきたりもします。

こういった複雑な問題を解決するためには、単に数理統計や機械学習の知識だけでなく、ビジネスに対する想像力や、様々な立場の関係者をまきこむコミュニケーション能力まで求められます

私自身、最初は自分でコーディングやアルゴリズム等の開発作業が多かったですが、チームメンバーが増えるに従って、手を動かす側からタスクマネジメントや他職種との橋渡しをしたりといったロールが増えてきました。

そういったケースに直面すると、商社で培った問題解決能力や、他人を巻き込む力がベンチャー企業でも十分に活きていると実感します

ー ベンチャー企業の中で、商社の経験はどんなふうに活きていますか?

先程のプロジェクトを例にすると、クライアントが求めているのはAIの導入や予測それ自体ではないんですよね。予測の結果、どこにどの商品をどれだけ発送すれば良いのかという「ビジネス課題に対する結論」をクライアントは求めているんです。

クライアント目線では当たり前に聞こえますが、開発目線だとAIを導入して運用することが目的になってしまい、向き合うべきビジネス課題にアプローチできていないケースもあったりします。

商社で学んだのはこういった「ビジネス課題に対する解決能力」です。特にクライアントにビジネスインパクトの大きい課題を解決するためには、機械学習などの手段だけでなく、現場のオペレーションから抜本的に考え直しシステム実装する必要があります。

JDSCのコアバリューに「Impact Based」(=提供価値の多寡を最優先の指標とし、あらゆる行動に照らす)という考えがありますが、つまり社会に対するインパクトから逆算して行動するということで、商社でもまさに同じ考え方を学びました。

どれだけ優れた技術でも、適用できる領域が小さければ効果も小さいし、システムが実装/運用され利益をもたらしていなければ絵に描いた餅になってしまいます。それを実現するための案を考えたり、プロジェクトの妨げになる要素を一つ一つ取り除いていく問題解決能力、他者を巻きこむ力が、ビジネスにおいて必要になってきます。

今回、独学で必要知識は身につけていたとはいえ、職種としては未経験だった私がデータサイエンティストとして活躍できているのは、そういったベースとなる力を商社時代に学べていたおかげだと思います。

仮に新卒の時の自分に戻ったとして、とてもJDSCの同僚たちとまともにディスカッションができるとは思えません(笑)

ー ベンチャー企業でも活かせる「ビジネス課題に対する解決能力」とは、具体的にどんな経験で得られましたか?

印象に残っているのは1年間 ロンドンに駐在した時の仕事でした。

当時の現地法人では、経費精算システムのフローの中にレシートの原本を経理に提出するという紙文化の名残が残っていました。もちろん不正の防止や、領収書付きの経費精算書を回付することがフローの一部になっているなどメリットもあったのですが、紙とデータの二度手間になっていたし、承認者が出張で不在だと押印処理に1週間近く待つ事もよくありました。

そんな時、イギリスの法改正でレシートの電子保存が可能になったのを機会に、経費精算の申請を全て電子化するBPR(Business Process Re-engineering)案を上司にお願いして進めさせてもらいました。

商社本社と現地法人それぞれの内部統制や社内規定の担当者と相談し、経理担当を説得しつつ、システムベンダーと話し合いを続けました。なにしろ電子化については他の海外法人でも前例がなかったので、最終的には現地法人のCFOの方にも何度か直談判しに行ったりして、なんとか電子化に漕ぎ着けました。

次から次へと課題が発見されては解決策を考えるという大変なプロジェクトでしたが、その過程で色々な部署の方に助けていただいて、泥臭いながらも自社の課題を解決できたというのは自分の中でも大きな自信になりました。おまけに副産物として、英語も上手くなりました(笑)

この他にもGDPR対応のために個人情報を扱うシステムの契約内容を見直すため、弁護士と一緒に現地のベンダーと交渉したり、帰国してからは会計の部署で、IFRSの条文解釈について監査法人を説得するための材料を必死で集めたりとかもしました。

商社に在籍した5年間、情報システム, 法務, 税務, 会計と色々な仕事を経験してきた中で共通するのは「ビジネス課題をどう解決するか」でした。所属した部署によって課題は変わりましたが、異動するにつれ未経験の領域に対しても、自分の課題解決アプローチの精度が良くなっていることを感じました。

課題解決アプローチといってもすごくシンプルで「問題をどう定義して、分からないことがあった時にどうするか、周りにどうやって助けてもらうか」なのですが、意外と難しい。

商社で学んだ「ビジネス課題の解決能力」は言わば基礎体力みたいなもので、そこが身についていたのでベンチャー企業に未経験で飛び込みましたが、キャッチアップしながらスタートダッシュが切れた気がします。

私にとって商社は、優秀な上司や同僚に恵まれながら、様々な課題解決の機会を与えてもらえたとても良い環境だったと思います。

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2. 5年目で考えた「これでいいんだっけ?」

ー 商社でキャリアを積むなか、なぜ転職を考えたのですか?

商社の働き方は2つある気がしていて、5年くらいで辞めて起業したり転職する人と、20年30年と長くいる人。自分はもともと目的があって商社に入ったので、3年間経験を積んだら辞めようと思っていました。

ー 商社に入社した目的とは?

2012年、当時はまだ就活中の学生だった頃、株式会社ユーザベースの新野良介さんが登壇するセミナーを聴いたことがきっかけで、自分でビジネスをやってみたいと思うようになりました。新野さんは三井物産, UBS証券を経てユーザベースを起業した方で、その日は「金融 × IT」をテーマにお話をされていました。

スピーチの中で「大きい会社の一部になって、自分がいなければ他の人がやっていたであろう仕事をするのも一つの選択肢。でも世の中に必要なことを自分たちで発見して、自分たちの力で形にして、成功したら大きなリターンを得る。一回しかない人生だからこそ、自分の心がワクワクするほうに向かうのも選択肢の一つ。

といったことを話していました。ちょっと昔のことなので曖昧ですが「ワクワクするほうに向かう」という言葉がとにかく印象的でした。

それまではホワイト企業に就職して「自分の好きなトライアスロンを社会人でも思い切りやるんだ!」と思っていましたが、これをきっかけとして自分も新野さんのように自らのアイデアを世に問うて、形にしてみたいと思うようになりました。

新卒で商社を選んだのは、そのために自分に足りない点を補うにはどうしたらよいかと考えた結果です。

ー なぜベンチャー企業ではなくて、商社に新卒入社したんですか?

実は、その後ご縁があってユーザベースに新卒で入らないか、とお誘いいただきました。創業者の梅田さんをはじめとして非常に優秀なメンバーが揃っていて、会社のビジョンもメンバーの方も好きで、とても魅力的でした。

ただ、ベンチャーであるユーザベースさんの中でも戦略コンサルタントや投資銀行など超一流の環境で経験を積んできた方々が、その経験を生かして戦っているのを目にして「自分のファーストキャリアは本当にベンチャー企業で良いのだろうか?」について考えるようになりました。

ユーザベースの皆様のことは今でも尊敬していますし、一緒に働きたい気持ちも強かったですが、彼らのように将来BtoBのビジネスを手掛ける際に、やはり典型的な大企業の中の動き方を知っていると知らないとでは大きな差が出る。今はまだ自分の可能性を絞り込む段階ではないと判断しました。

結果として選んだのが総合商社でした。まず自分に足りないと感じていたウェットな人間力の部分と、ハンズオンでのビジネス経験を積みたいと思ったのが理由です。また、保有するデータの観点からも、商社ほど多業界・多国家のBtoBデータが集まる企業は殆どなく、そこに着目したビジネスができれば面白いだろうなという思いもありました。

ー 商社マンになって5年目になり、何がきっかけで転職を考えたんですか?

先程の通り目的があって商社に入社しているので、定年まで勤めるというより3年くらいで離れることを元々イメージしていました。一方で、入社してからは仕事も楽しかったですし、5年目まで毎年新しいことができるようになっていく感覚がありました。

現状の自分を見ると普通に幸せで、このまま会社に残り続けることも選択肢として考えるようになりました。その一方、仕事をこなすスキルが上がっていくにつれて「これでいいんだっけ。チャレンジできているんだっけ。」と思うようになりました。

給料も良いし、深夜残業やパワハラもなく、幸せに生活している。でも気づけば居心地の良さに甘え、ハングリーさが後退している自分に気づいたんです。例えば、昔は遅い時間に帰宅した後、カップラーメンをすすりながら技術書を読んでいたのが、いつの間にかそんなことしなくなっていたり。これは会社に残ることを考えだしてから自覚した甘えの習慣の一例でした。

居心地の良い環境を捨てるのは勇気のいる決断でしたが、ユーザベースの新野さんの「一度きりの人生だから」という言葉に背中を押されました。

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3. 自分にあうベンチャー企業は待ってるだけでは見つからない

ー 当時、どんな転職活動をしたのか教えてください

まず転職サービスに登録してエージェントから案件紹介が受けられるようにしました。ベンチャー企業で経歴を活かせそうな案件をいくつか紹介されたのですが、正直判断が難しいと思いました

ー 判断が難しいとは?

私が転職先に求めていたのは「1.スタートアップ的な動き方。 2.特定の業界の課題感。3.自分の強みとなるスキル」のそれぞれが学べることだったのですが、求人票を見るだけではそのチームからどのような知識を吸収できるのか、プロダクトの完成度はどうか、業界の課題にリーチできているのか、といった部分がなかなか見えてきませんでした。いくつか進行中の案件もありましたが「本当にこの中から決めてしまってよいのか」とも思いました。

そんな時に、WARCの加藤 健太さん(※)にお会いしました。どこのエージェントもテキストベースの似た案件が多いなか、加藤さんはベンチャー企業でどんなキャリアを作っていきたいか等、いろいろ話を聞いてもらいました。また、ベンチャー業界の現状や待遇、キャリアなどリアルな話を教えてくれました。

※ 転職者1万人と会った私が断言する「ベンチャー転職者がいま圧倒的に増えている理由」とは。

加藤さんと話す中「AI系のベンチャー数社と、WARCとつながりのある株式会社 東京大学エッジキャピタルの投資先で、合いそうなポジションがあるか探してみましょう」と提案してくれました。

この時、加藤さんが投資会社とつなげてくれた事で、転職先の選択肢が一気に広がりました。

ー WARCのサービスは、転職活動にどんな良い効果につながりましたか?

WARCの加藤さんと会う前は、転職サービスのエージェントから送られてくる案件を、マイページで見て確認して返信する感じだったのですが、テキストで確認できること以外の情報がなく、自分に合っているのか判断がつきませんでした。

一方、WARCはつながりのあるベンチャー企業をあの手この手でつないでくれて、社員の人と話すきっかけを作ってくれました。

会って話を聞けるのがとにかく良かったです。待っているだけでは、良い案件って巡り会えないんだと実感しました。自分で話を聞きに行ってみると、自分がその会社にフィットするかどうか、具体的にイメージできます。

WARCを利用すると、会いに行くためのきっかけや、リアルな情報が得られるのがとても良かったです。

結果的に、東京大学エッジキャピタルが投資しているベンチャー企業3社が残り、どれもおもしろそうな仕事でした。その3社の中から今働いているJDSCを選びました。

ー 採用時、商社の待遇とベンチャー企業の待遇の違いは気になりませんでしたか?

商社などの大企業に比べて給与が下がるというのが通説です。しかし実態は会社によって様々なことが、転職活動中の対話を通じてわかりました。給与は下がるけどストック・オプションがつく会社もあれば、ストック・オプションの付与を選べて、付与しなければ給与がそんなに変わらないケースもありました。また、ある一社は商社の給与よりも高い金額を提示してくれました。

ただ、加藤さんも記事に書いていますが、待遇やポジションよりも大切なのは、ビジョンやカルチャーです。経営者のビジョンに共感して一緒にやりたいと思えない限り、ベンチャー企業でがんばっていくのは難しいと思います。かといって、実現するかわからないストック・オプションを心に、手弁当で働くわけにもいかないですよね。

ベンチャー企業を選ぶ時は、その会社が今後どのように伸びていくのかを、分かる範囲で調べる事も大事かもしれません。

将来、その事業が成功した時にどれくらいの規模のビジネスになるのか、企業価値がどうなるのか正確に予測することは不可能ですが、上場している類似企業をいくつか調べ、目論見書を読むことで、ある程度その会社が属している市場の規模や、上場時の企業価値を推測することはできると思います。

ストック・オプションを付与されるならなおさら、この事業がうまくいったら何年後にどれくらいの価値になるのかをわかる範囲で調べるのは、納得の行く転職をするためのポイントかもしれません。

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4. 商社マンがベンチャー企業でスタートダッシュをきるためには

ー 商社からベンチャー企業に転職した時に、スタートダッシュを切るためのポイントを教えて下さい。

商社マンはジェネラリストが多いので、専門性がないところを気にされる方もいるかと思いますが、ベンチャーでは一人で色々な業務をカバーすることになるので、むしろ未知の問題への取り組み方のほうが大切な気がします。私自身、データサイエンティストですが、プロジェクトマネージャーやエンジニアに近い仕事もしていますし、分からないことは都度勉強してキャッチアップしています。

また、典型的なベンチャー企業にとって解く課題は山のように転がっているので、問題の解き方だけでなく、どの問題にいつ向き合うべきなのか、優先順位を考えることも重要です。

ビジネス課題に対する着眼点に関しては、商社のマインドセットとベンチャー企業は親和性が高いかもしれません。

商社やコンサル出身の人は、ベンチャー企業に入社後も船の舵取りするポジションにいく人も多いので、課題に対する嗅覚とか、ビジネスを俯瞰してみれる大局観とかは、ベンチャー企業でも引き続き求められると思います。

ー メンターとして転職希望者にどんなフォローができると思いますか?

私のようなキャリアが、大企業で働く人のみんなに参考になるとは思いません。ただ、大手総合商社で働いている人の中で、将来的にベンチャー企業を通じてチャレンジしたいと思っている人や、世の中にアイデアを問いたいと思っている人、あるいは未経験の業種に転職しようとしていて不安に思っている人は、お話をすることでお役に立てると思っています。

「チャレンジしたい!」という気持ちが少しでもある方は、自分のような転職経験者やベンチャー企業に詳しい人に、自分で聞きにいく、ということから始めてみると良いかもです。WARCはそのきっかけをつくってくれるサービスなのでおすすめです。

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