生活保護日誌.82
前回の投稿から、かなり時間が経ってしまいましたね。
どうもお久しぶりです。二足の草鞋です。
デジタルデトックスのほうは、何とかなりました。前回投稿の時期に比べてインターネットとのいい距離感を保つことができるようになりました。
まあ、これは今現在の話でしてまたインターネットにずぶずぶの生活に戻ってしまうのかもしれませんが、神経質にタイマーロックコンテナを起動させてネット機器を閉じ込めることもせずにたまには暇つぶしの道具としてインターネットを介して漫画や動画を見たりして、液晶やキーボードやマウスをあたくっています。
こうして久々にnoteの場に立って、読者の皆さんに自分をさらけ出す前に、インターネットさんに、ディスプレイさんに自分を晒しているわけですから、僕のブラウザ履歴を皆さんにさらけ出すわけにはいきませんけども僕の今の心持を介してまた皆さんと繋がれたらなと思いまして、
こうしてまたnoteに記事を上げたいと思います。
自分なりに様々な出来事がありましてそれらをすべて言葉にしてまとめ上げたい、そんな欲があって、でもその欲ばりな自分に縛られていたら人に何を伝えればいいか分からなくてとりとめのない日々を送ることに息が詰まりだした今日この頃。
ここに書けなかったこともここに書けたことも、文章、忘却、生活のそれぞれの彼方に届いたらいいだろうなあと、肩の力を抜いて、体から言葉を抜き取って、また新しい縁に向かって突き進むために身持ちを軽くする。
長々とした前振りで失礼いたしました。
それでは、縦横無尽、でも単調、向こう見ずの鈍行列車が発車します。
案内人は二足の草鞋。
ごゆるりとお付き合いくださいませ。
駅1
僕はとにかく歩いていました。
人が怖かったからです。自分も人なのに何無責任なことを言っているんだとのたまいたくなりますが、外に出るのが怖かったのです。
道行く人々、道路を駆る車、見上げ見る空の面積を占領する建物群。
僕はまたもや人の目も、ましては人の顔すら見れなくなりました。でも僕は人を見ることなく動く対象に視点を定めることなく歩く術を持っています。
視覚以外の、聴覚、触覚、嗅覚を総動員して
耳で視る、
肌で視る、
鼻で視る、
そうすることでこのコンクリートで囲まれた、電波によってデバイスに釘付けにされ人の意志をコンクリートのように固く規則性たる見えない檻に閉ざされた世界から自分自身を守るために、
僕は徹底して他人を避けました。
道を歩くとどこもかしこも人、人、人、人。
僕もその「人」の一員で有象無象の一部ですけどね。
とにかく一人になりたかった。
インターネットは、テキストやイメージやムービーを総動員して人の存在を脳の中にこれでもかって植え付けてくる。
コンクリートの上を歩かされている、歩くことを余儀なくされる現代社会に生きる僕も規則だった道を歩くほかない。同じくそうして歩く人たちと必ず、道で出くわす。
一生家の中に閉じ籠っていられたらどんなにいいだろうか。
でも僕の住まいはワンルームの平凡極まりないマンションで、両隣には他人の気配を感じさせる生活音が時たまに僕の四角い領域を侵犯するものだから、
僕が神経質だからいけないのだろうか、僕がもっと鈍感になるべきなのか、でもさ僕がこうして世界を感じ取るってのは生まれてこのかた僕にとってこれが普通だとして今まで生きてきたのだから今更変えられないじゃん。
もちろん、耳栓をしたり、買い物に行ったりカフェで一服しに行ったりして自分の住処を遠ざけた。第一、買い物しないと食うことに事欠くことになるしだからといってネットスーパーで食べ物を配達してもらうのは自分のプライベートを犯される気持ち悪さがこの上なく僕を憂鬱にさせるから。
家でも一人になれない、外に出たらもってのほか。
僕は生まれ持った自分の特性を恨む気持ちもあるし、だけれどその自分の世界の感じ方によって、太陽の温かみ、風に揺れる葉っぱのざざめき、空気の冷たさ滑らかさなどなど自分が人間である前に一つの動物としての自然の一員と気付かされる、そんな内から湧き上がる本能としての感動に、今までどんなに助けられてきたか。
僕はとにかく歩いてみた。人がいない道を選んで歩いた。
自分で言うのも何なのだが、僕は人の存在を物の存在を見つけることに関しては特段に早いと自負している。
だから遠くに人がいたり車がいたりすると瞬時に気付いて
「あ、ここには人がいる。ルートを変えよう」
と一度来た道を戻ったり、別の道に選び直す。
その道でも人がいたら問答無用でまた別の道を探し、歩く。
またおんなじ道じゃんか。
でも、不思議と前回通ろうとした道とは違って人が通り抜けた道として、誰もいなくなったその道を、今度は僕一人が突き進む道として、歩く。
だからこそ買い物に行くにも一苦労である。
目的地として定めたスーパーになかなかたどり着けない。
僕は街のジャングルに絡めとられた敗残兵のごとく彷徨い、ゼーハーゼーハーと体に残る水分残量を気にしながら本当に目的地に着くのだろうか、ましては家に無事帰ることができるのだろうかと。
ただスーパーに行くだけなのに、ただ外を出歩くだけなのに、僕は
「本当に生きて帰ってこれるのだろうか」
と半ば死の気配を己身に感じた。
その気配にまた鞭打たれながら街をひたすら亡霊する。
朝日に見送られて歩き始めたのに帰路につく頃には月がいた。
今になって思うに僕は、自らのこだわりに憑りつかれていた。
内にも、外にも一人になれる居場所がない。
だから僕は歩き続けるほかなかった。
(駅2に続く)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?