【ぶんぶくちゃいな】「無言」が語る暗殺事件

今週のトップニュースはなんといっても、北朝鮮の指導者、金正恩の兄、金正男氏の暗殺だろう。長年現場を渡り歩いてきたニュースメディア関係者も、「『暗殺』なんて言葉がメディアにでかでかと出るのを見たのは久しぶり」と言っていた。

空港という、人通りが多く、また監視カメラから逃れられるわけがない場所で起こった事件であることを考えると、現代人としては奇妙な思いである。

だが、事件後の捜査の進展はあまり思わしくない。一時は「もう死んでいるのでは」と伝えられた実行犯たちが捕まりつつあるものの、実際のところ誰がそれを命じたのかなど、具体的なことが何一つわかっていない。

そして、中国政府の庇護を受けてマカオや北京に家族と暮らしているとされていた金正男氏が、マレーシアで何をしていたのか? 襲われた13日はちょうど春節から2週間あまりが経ったところで、長めの休暇からマカオに戻るところだったのかと思いきや、家族は同行していなかった様子である。

台湾メディアでは、金氏はマレーシアに暮らす愛人を訪ねた帰りだったという記事も出ている。彼の滞在は事件とはなんの関係もなかったのだろうか。

すぐに「北朝鮮政府の仕業だ」と結び付けられて報道されているが、金氏自身の生活が日頃からあまり知られていない上、マレーシア滞在の目的もわからないままなので、これといった証拠が出てこない限り、我々情報の受け手はメディアが流す「憶測」を受け取って消費するだけである。

ただ言えるのは、金正男氏が本当に亡くなったこと、そして長年彼を庇護してきたといわれる中国政府にも、当事国の北朝鮮やマレーシア以上に緊張感が走っていることだけだ。

●無言を貫く中国政府

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