レーウェンフックは、赤血球、精子、細菌、原生動物、それに多数の微少な動物たちを次々に発見していった(中略)一部の細菌は、日の当たる海面に浮かびながら、太陽光によってATPを作っている。地下深くでは、また別の種類の細菌が、鉄原子にたくわえられたエネルギーを利用してATPを生み出している。生物は、十分な量のATPをため込むと、それを燃料として使い、その結合を断ち切って、なかに収められていたエネルギーを解放する(中略)一個のミトコンドリアは、三七個の遺伝子と、遺伝子からタンパク質を作るのに用いるリボソームをもっている。そしてときどき細菌のように増殖する。真ん中でくびれてちぎれ、それぞれが自身のDNA群を持つ、ふたつの新しいミトコンドリアになるのだ(中略)二〇億年前、われわれのミトコンドリアの祖先は、自由生活性〔単独で動きまわる生活形態〕の細菌だった。それがより大きな細胞(単細胞の真核生物)に呑み込まれ、ふたつの種は協力関係を築いた。ATPを提供するのと引き換えに、ミトコンドリアは、遺伝子の大半を失った。だがすべてを失ったわけではない。それに細菌の祖先のように分裂する能力も失っていなかった。