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熊本大学ID公開講座入門編 ID学 vol.14

エジプトに来ています。スリランカを9か月で切り上げて(後悔)5か国目、教養科目として日本語が必修の大学で働き始めました。最近、思うんだけど、いろいろな国で働けるのは素敵なんだけど、いろいろ自分の中で積み上がっていかない部分があるな… そしていつまでたっても下っ端のままだな… 

ま、いいんだけど(あまりよくない)。

スリランカの契約を終了して最近後悔しているのは、やっぱり日本渡航を控えた学生(日本企業に正社員として入社する学生)の「とりあえずなんか会話ができるようにして」という企業側の要望を都合よく解釈して、自由にできる環境を手放してしまったこと。すっごい大変だったけど、今思えば楽しかった…(遠い目)。お金もよかったし…

さて、熊本大学のオンライン公開講座「インストラクショナルデザイン入門編」を受講しました。6時間半におよぶ講座本体(同期型)に加えて、事前課題と事後課題があり、修了証もでる有料講座です。


学習目標

講座自体がインストラクショナルデザインに基づいて設計されているので、受講することで学習者側の立場を体感できるのが、意外と大きい。

【学習目標】
①IDの基本的な理論10個を具体的に説明できる
②ARCSモデルを使って課題を見つけ出して改善できる

基本的な10個の理論は、次の通り。

メーガーの3つの質問/ガニェの9事象/IDの第一原理/学習成果の5分類
4段階の評価モデル/学校学習時間モデル/アンドラゴジー/TOTEモデル
ADDIEモデル/ARCSモデル

勉強したことがあるのは「ADDIEモデル」(大学院で科目選択)と「ARCSモデル」(大学院+独学)、何となく知ってるレベルが「ガニェの9事象」(養成講座で勉強した記憶)、あとの理論は注目したことなかった。すべてこの本に載っています。

鈴木克明(監修)、市川尚・根本淳子(編著)「インストラクショナルデザインの道具箱の101」北大路書房

事前課題の中で各理論についての資料を渡されるんだけど、この本からの抜粋なので、本をもってるわたしとしては特に新しいものではなかった。けど、そもそも101もの理論全てを読んだわけではないので(というかほとんどARCSしか読んでない)ページを開くきっかけになりました。ただ、友達にもいったけど、この本だけだとどうもピンとこないんだよね… わたしは。

基本的な10個の理論

学校学習の時間モデル
はじめに「なんか面白そう」と思ったのがこの理論。というのもたぶん、言語学習って結局はどれだけ継続できるか(時間)が大きな要因になるからだと思う。くわしくは、IDについていろいろ発信してくれているリープ株式会社のブログを参照のこと。

Youtube動画もあるらしい。

要するに、学習者の能力に依らず、授業や課題の内容を工夫することで学習効率を上げることができるよねという理論です。

ガニェの9事象
これは本当に有名なので、教育に携わっている人はほとんど聞いたことがある理論ではないかと思う。ちなみに同じリープ株式会社のブログに説明があり、今日はリープ祭りになりそうな予感。動画もある。

受講後、せっかくだから何かアクションを起こそうと、自分の授業をこの9事象(9つのプロセス)に沿って見直してみた。完全にその通りの流れになっていて「だからID理論って、結局当たり前のこといってるだけなんだよね…」感に陥った。

ただこの間、Twitter(新X)でガニェの9事象と第二言語習得論は相性が悪いのかもしれないという呟きを読んでハタと考えた。つまり、暗示的習得とガニェの9事象に沿った授業は相容れないということ(だと思うん)だけど、たしかにID理論は言語学習に特化した理論ではないので、そうかもなと思う。そもそも第二言語習得論も理論がたくさんあって、どれをもって第二言語習得論というのかよくわからないんだけど(私にとってIDも同様)、たとえばクラッシェンは習得(無意識的な学びのプロセス)と学習(意識的な学びのプロセス)において「第二言語能力の向上は『習得』によって起こる」と主張したんじゃなかったかしら。そう考えるとたしかに、IDと第二言語習得は相性が悪いのかもしれない。

とすると、行動中心主義と第二言語習得論を基盤とする国際交流基金の「まるごと」をどう捉えるか。行動中心主義って必ず行動目標(Can-do)があって、わたしの中ではIDと重なっていたんだけど、暗示的学習にはなり得ないということか。いやいや、文法規則なんかは暗示的な習得になるんじゃないか。でもいまの大学では「理解編」も使うから暗示的じゃないけど。

という一連のぐるぐるを経まして、PhaseというかFieldというかが違うのかねと結論付けました。ガニェの9事象は授業設計に用いるもので、学習者を惹きつける授業設計の指針とでもいうのか、そういう理論なので、授業であるという前提条件から「暗示的」にはなり得ないんですね。第二言語習得論で提唱される「暗示的習得」は、たとえば「まるごと」で文法規則を暗示的に習得する可能性があるように、また別次元の概念な気がするので、相性は特に悪くないのではないかというところに落ち着きました。もはやTwitterでの呟きと違う話になってるかもしれない感は否めないけど。

ARCSモデル
講座では半分以上の時間をARCSモデルに割いて、ブレイクアルトルームでの活動などもあった。やはり影響力のある理論なんだなと改めて思いました。とくに印象に残ったのは「危機感を煽られて行動する人は結果的に1割程度」「何をやっても動かない1割に入れ込みすぎると10割が動かずに終わる」というセリフ。これはもう動かしようがない事実なわけですね。お互いに人間ですからしょうがない。逆にいえば、10割を動かす力があったら、日本語教師なんかやってないという話ですよ。なにごとも「適当」が大切。

受講後のまとめ

入門編の収穫は次の通り。
①まずは注目すべき10個の理論を示唆してもらった
②10個の理論を設計のどの段階で使うかが整理できた

10個の理論の使い方ガイドライン

このガイドラインを参照しながら仕事をしようと思う今日この頃(やってない)。来年1月に応用編を受講する予定です。おしまい。