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Kindleと共に生きて

少し綴るのが早すぎるかもしれないのだけど、Kindleのサービスを利用してみて感じたこと、思ったことを色々書いてみようと思う。
私がKindleの自費出版サービス、Kindle Direct Publishingを利用し始めたのは、2016年頃からである。第一詩集が『song of river poetry』で、そこから立て続けに短期間で『ヒョウカ、ライガイ:RPGの詩学』、『Python311』、『誰にも見えない薔薇、あるいは見える素粒子』と、4つ詩集を出した。これが一番最初の出版である。その中には英訳された『ヒョウカ、ライガイ:RPGの詩学』も含まれている。詩集をKindleで出している人は、私が知る限りほぼいなかったので、ある種のパイオニアだった。こうして出た群詩たちは、小遣い稼ぎ程度にはよく売れた。とりわけ、アンドリュー・カンパーナさんによる英訳以降、海外、特にドイツでよく読まれるようになった。ただ、流石にドイツの人も身銭を切って異国語に挑むのには慎重らしく、詩集を購入するのではなく、まずは出来合いをアンリミで数ページめくって確かめてから、という落ち着いた読まれ方である。それでも、数ページめくるだけでも、やはりロイヤリティが発生する。私の理解が正しければ、購入した後はロイヤリティは発生しないはずなので、購入しない代わりに少しずつ世界で読まれているのがわかるという、なんとも言えない喜びがある。
時々世界で読まれて、海外から印税が入ってくるのは、割と嬉しい。しかし、海外からの印税は、外貨の形で入ってこないのである! 銀行口座を見ると、外貨から完全に変換されて日本円になって入ってきているので、殊に昨今の日本円をめぐる事情を考えれば、本来あるはずのお金を損しているかもしれないという気さえする。それでも、2〜3円とか、10円とかにはなる。なんとも寂しい金額だが、出だしにしては上々である。円が高いときに買ってくれた人ありがとうございます。
大事なポイントとして、本の値段は円の値段によっては変わらない、最初に自分が定めた額以上にも以下にもならない、ということはポイントである。逆に言えば最初に値段を高めにしておけば、あとから買ってくれる人がいると儲かるのである。ただ、Kindle本は何も実績がなくても出せるので、初心者には100円〜250円の価格帯がお勧めである(ちなみに250円以上から7割のロイヤリティにもできる)。アンリミで多少ゆとりのある人や、全然本の相場を知らない初心者にも安心の価格帯である。
Kindle本が出たばかりのとき、何やら海外の税金が問題になるみたいな話になって、手をつけなかった人がいたかもしれない。しかし、基本的にアメリカの税金の話なので、国籍が日本であればこの辺の税金に関する条項は、税に関するインタビューをタイプして署名するだけでクリアできるのだが、ここで選択肢によっては30%の源泉徴収になる。で、私はアメリカでは売れるわけがないと思っていたので、その税率でもいいと思っていた。しかし実際に書籍がアメリカで読まれたこともあるので、どうしたものかと思ったが、結局その30%の税率でも良いことにした。税金は払って世の中を良くするものである。
アメリカの税制にはほとんど詳しくないのだけど、現在のAmazonは日本法人で、適用されるのは日本の税法であるはずだ。そのため、少なくとも今は、海外のよしなしごととは関わらずにいたい。それで、私は全体の収益がほとんどなくても確定申告をして、還付金を頂いている。これでいい、と思う。
エターナロイドを出した辺りで、紙の本が欲しくなっていたのだが、ちょうどよくKindleがペーパーバックのサービスを始めた。それで手を出したのだが、エターナロイドのペーパーバックは、フルカラーで6000円以上する超高級な本になってしまったので、売り上げは全然なく大失敗に終わった。そういうわけで、ほとんど鈍器のように人を殴れることぐらいしか需要がない特級呪物となってしまった。それでもエターナロイドはまあまあ稼ぎ屋になってくれた。電子書籍の売り上げが伸びたのである。
蟲医シリーズは、企画の段階から確実に成功させるつもりでいたが、実際話題にもなり、成功した。今となっては、電子と紙で同時に取り掛かるのは、もはや当たり前になり、私にとっても恒例行事となっている。果たして、それでいいのだろうか? と思うことも、ないわけではないが、自分に続くセルパブ屋さんが出てきてくれれば、それでいいと思う気持ちもある。


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