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「計12時間も軟禁されひたすら詰問される…」お茶大アカハラ教員の暴虐と、加害者と大学の「共犯関係」

「原罪先生」「ちゅえ(泣)」等の愛称でおなじみのお茶の水女子大講師、神山翼氏のことをみなさん覚えているだろうか。

神山翼氏は男性フェミニストとして

「男性は女性に対して『原罪』を背負っているのだから、我が身を犠牲にして女性に尽くさねばならない」

という趣旨の発言を行いSNS上で大炎上したお茶大の教員だが、「炎上」後に神山翼氏が常習的なハラスメント加害者であったことが多くのお茶大生からの告発によって明らかになり、お茶大を巻き込んだスキャンダルとして(極めて悪い意味で)「時の人」になった男性教員である。

「研究室妻」などと噂される特定の女子学生との不適切関係や、それに付随するアカデミック・ハラスメント、他の研究室生に対する恫喝、過去に起こした女子高生に対するセクハラDM問題などの神山翼氏のスキャンダルについては本マガジン上で詳しく報じたが、取材を進めていくうちに本件は神山翼氏の個人的な問題に留まらないお茶大全体の問題ではないか?という声が取材先のお茶大生の多くから寄せられることになった。

たとえば神山翼氏のアカハラ問題について、神山研究室に所属する女子学生たちは学内の「ハラスメント相談室」に何度も相談していた。しかし信じがたいことに女子学生らが「ハラスメント相談室」に相談した内容が加害側教員にダダ洩れになっており神山氏のアカハラを大学に相談したことを激しく叱責されるという結果になってしまったのだ。筆者の元に寄せられたお茶大生からの告発DMの一部抜粋する。

昨年、学内Slackにアカハラに関して投稿した本人です。学内Slackの件も含めて、近藤恵教授(※)に呼び出され、「神山先生には業績があります。若くして非常に素晴らしい研究者です。あなたたち学生が声をあげたところで、大学側は神山先生をやめさせたりすることはしません。このような下劣な行為をするのはやめなさい。社会に出たらこれより厳しいことなんてもっとたくさんあります。」という主旨のことを個室で5時間ほど叱責されました。(夜遅くになっていたので、途中で泣きながら「帰りたい」と言ってもドアを塞がれ、怒鳴られて部屋から出させてもらえませんでした。)録音もありますが、学生の個人名が多く出てきますので公開はできません。

(※)事情聴取を受けた時はハラスメント相談室の専門家かと思っていたのですが、どうやら違うようで、人類学の教授だということが後からわかりました。ハラスメント相談室の専門家の方たちとは別に、学内の先生たちの中からも担当が選ばれるらしく、昨年の時点ではその担当が近藤恵教授だったようです。ややこしくて私も組織図に関してはあまりわかっていないのですが、近藤恵教授はハラスメント相談室の担当とは言っても、相談室の専門家の方々とは全く別です。近藤恵教授とは違い、お茶大の専門の方々は真摯に対応してくださっています。今回のXでの炎上よりかなり前からアカハラについて相談に乗っていただき、あまり詳しくは言えませんが現在も動いてくださっています。「お茶大当局が揉み消そうとした」というよりも「近藤恵教授が揉み消そうとした」です。

引用:セクハラ男性講師を野放しにしたお茶の水女子大学の異常な「隠蔽体質」

もしこれが事実だとすれば女子大学の運営態度として言語道断と言わざるを得ない。言うまでもなく女子教育において最も重要なのは女子学生がハラスメントに脅かされず安心して学べる環境作りである。

日本屈指の名門女子大学であるお茶の水女子大において「ハラスメント相談室」が機能不全に陥っており、常習的にハラスメントを行う教員が処分されるどころか当局に守られるのだとしたら、お茶大は女子大学として機能不全に陥っているとしか言いようがない。

というわけで本マガジンでは、神山翼氏という個人ではなく「お茶大のハラスメント相談室」についてさらなる取材を重ねた。

結果、神山翼氏以外のケースで「ハラスメント相談室」からの二次加害を受けたお茶大生にZOOMを通じインタビューすることに成功した。

本稿はそのインタビュー記録である。名門女子大学に蔓延する異常なハラスメントについて関心のある方はぜひご一読頂きたい。

なお取材対象のお茶大生Xさんは元所属研究室や卒業年度など素性を明らかにした上で取材に応じてくれたが、取材源の秘匿のため本稿ではそれらの情報を意図的に曖昧にしている。どうかご了承願いたい。


お茶大生Xさんへのインタビュー

聞き手:小山晃弘(以下「小山」)
本日はインタビューの機会を頂きありがとうございます。前回、神山翼氏の件でお茶大生のみなさんから色々と情報提供を受けたんですが、個人的にこれは神山翼氏個人の問題とは言い難いなと感じていまして…。
特にハラスメント相談室絡みの二次加害ですよね。相談内容が加害側教員に全て漏れてしまう。しかも相談したこと自体を長時間叱責されると。

お茶大生Xさん(以下「Xさん」)
そうですね…。正直私も、神山先生の件よりもそちらの方が異常なのではないかと思います。

小山
神山翼氏の研究室における不適切関係などは、あくまで神山氏個人の問題だと思うんです。ですが、そういうことが起きたとき学生側がそれを相談しても大学側がまったく対処しない、それどころか二次加害に加担する。そういう状況になると、お茶大は女子学生にとって安心して学べない場所になってしまうなと。

Xさん
ハラスメント相談室がおかしなことになってる件については、私も自分の件以外にも同じような話を聞いているので、かなり常態化してしまっているのではないかと思います。

小山
既にSNS等でそういう声が上がってるにも関わらず、大学当局がなんの反応を示さないというのも異常だと自分は強く感じています。本マガジンは小規模なメディアではあるのですが、可能な範囲でこの問題について取り上げられればと思ってます。

Xさん
よろしくお願いします。


ゼミ教官からの指導拒否

小山
それではハラスメント相談室の問題に行く前に、まず具体的にどのようなハラスメントがあったについてお伺いしても良いでしょうか。つまり相談室に相談した内容についてです。

Xさん
はい。当時、私は学部4年生で、○○先生の研究室に所属して××という分野の研究をしていました。ただある日、私が先生をかなり怒らせてしまいまして…。
(注:伏字は筆者)

小山
なにかトラブルなどあったんでしょうか。

Xさん
そこを詳しくお話すると、特定されてしまうそうなので、すいません。

小山
先生の研究に支障が出るようなトラブルを引き起こしてしまったとか、関係者に怪我をさせたとか、重要な機材を壊してしまったとか、例えばですがそういう感じのお話ですか?

Xさん
いえ。ひとつがゼミの集まりで私が場を乱すような振舞いをしてしまったのと、もうひとつが先生のお手伝いをしている時に先生の言いつけを意図せず破ってしまったことがあって…。それで何か被害というか、人や物に損失が出かねないような話ではなかったと思います。

小山
なるほど。まぁ長い学生生活ですからそういうこともあるでしょう。ここまではごく一般的な研究室の日常という感じですが、そこからどう展開したのでしょう。

Xさん
このふたつの事件を切っ掛けに、先生が私に対して一切指導をしてくれないような状況になってしまいまして…。どんなメールを送っても返信がまったくないし、ちょうど時期的に卒論提出の直前だったんですが、送った卒論にも目を通してもらえない状態になってしまって。

小山
かなり典型的なアカデミック・ハラスメントですね…。もう少し具体的に、何年の何月頃だったかお伺いしても良いでしょうか。

Xさん
先生を怒らせてしまったのが202X年の12月です。卒論の提出期限が翌年の202X年の1月だったので、ちょうど卒論の詰めの時期だったんですが、先生を怒らせてしまってから全く連絡が取れなくなりました。

小山
おぉ…。

Xさん
謝罪メールにも返信を頂けなくて、卒論についての質問なども無視され、仕方がないので自力で卒論を書き上げたのですが、「卒論を書いたので見てください」という連絡もお返事は頂けなくて…。先生を怒らせてしまった件からもう1ヵ月は経ってたのですが。

小山
ちょっと「困る」という言葉では言い表せないほど困りますね。卒業後の進路などは決まってたんですか?

Xさん
修士課程に進学する予定でした。もちろん修士でもその先生の研究室に所属するつもりだったのですが、卒論も見てもらえず、さらに先生は「卒業論文を見てない学生には単位を出さない」とも仰ってたので、そもそも学部を卒業できるのかもわからず、途方に暮れてしまって…。

小山
そこでハラスメント相談室に相談するに至ったと。

Xさん
そうです。もう当時はそれ以外の選択肢が思い浮かびませんでした。


ハラスメント相談室の機能不全

小山
細かいお話になるのですが、ハラスメント相談室に行ったのは卒論提出の前でしょうか後でしょうか。

Xさん
1月の提出の直前ごろです。

小山
ハラスメント相談室に行ったときの対応はどんな感じでしたか?

Xさん
そのときは相談員の方が優しく相談に乗ってくださいました。そこで「学部長にも相談してみたら」とアドバイスを頂いて、その通りにしました。

小山
これ他のタレコミ頂いたお茶大生も皆口を揃えておっしゃってるんですけど、ハラスメント相談室の担当者の方はみんな親身に相談に乗ってくれたという風に言うんですよね。逆にタチが悪いような気もしますが…。

Xさん
まぁ、話はちゃんと聞いてもらえたとは思います。そこで「学部長に相談してみたら」と言われたので、実際に学部長にメールでアポを取ってこの件について直接相談させてもらいました。

小山
学部長の反応はどうでしたか?

Xさん
一連の流れというか困ってることについて相談したのですが、そのときはもう本当に卒論提出期限の直前でしたので「時期的にとりあえず卒業論文を提出する方が大事」という話を頂いて、「とりあえず書き上げて提出するように」と指示を頂きました。

小山
なるほど。まぁ善後策としては理解できます。とにかく提出しないと卒業自体危ういわけですから。といっても修士課程以降どうするかなどアカハラに付随する問題自体は何も解決されてませんよね。学部長が一連の経緯を知っていたにも関わらず抜本的な問題解決が為されなかったあたりもガバナンスが機能していないのを感じます。

Xさん
そうですね。卒業はもちろん心配でしたが、予定されてる修士課程への進学がどうなるのかとか、研究室は変えざるを得ないのかとか、心配なことは無数にあったので…。


計12時間の軟禁と叱責

小山
指導教官の指導を受けられないまま卒論を書き上げ提出するわけですが、その後はどうなりましたか?

Xさん
卒論提出後に「卒論を出しました」というメールを出しましたがしばらくは連絡がありませんでした。ただ1月下旬になって急に連絡があって。「卒業論文に関する話があるから来なさい」と。(卒論の)発表練習を見るから、というような内容の連絡でした。なので卒論の発表原稿を持って先生の所に行ったのですが…。卒論の発表練習を見てもらえるわけではなく、「あなたハラスメント相談室に行ったでしょう!!」と。

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週に1-2回程度更新。主な執筆ジャンルはジェンダー、メンタルヘルス、異常者の生態、婚活、恋愛、オタクなど。

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