読書感想『あいにくあんたのためじゃない』柚木 麻子


自分勝手な行動でブログを炎上させたラーメン評論家、夢を語るが何も行動しないフリーター、コロナ禍でシングルマザーになる決意をするもつわりに苦しむ妊婦、落ち目の元アイドル、なぜかつぶれない商店街のマダムショップ、アパートの中庭で子供を遊ばせることを禁止された母親たち…身近にあるようなそれぞれの行き詰まりに何とか対処する短編集。
理不尽な仕打ちにそれぞれが思いっきりやり返す痛快な一冊。


個人的にはラーメン評論家に傷つけられた人たちがやり返す話と、中庭を禁止されたアパートの住人たちの話が特に好き。
まずラーメン…凄い読んでて納得してしまうんだが、なんでラーメン好きな人ってあんなに上から目線で自分が正しいみたいな人が多いのか(笑)
これは僕の性別も関係してるのかな?
もう、描かれているラーメン評論家がめちゃくちゃイメージにあるラーメン評論家で、その自分本位な行動もなんかリ位あるに見たことあるんじゃねぇかってくらい納得度が高くて。
そのラーメン評論家に傷つけられた人たちが、それぞれができる努力を最大限してやり返す一編がまずとても面白かった。
そして、コロナ禍で安心して遊ばせられたアパートの中庭を取り上げられた住人たちがその中庭を取り返すために奮闘するパティオ8もとっても面白かった…。
どうもあれだね、理不尽に取り上げられたり傷つけられた人たちが、微妙にズレた正攻法で全力でやり返す話が個人的に面白くて好きなようで…。
どちらの話にも共通してるのが、やられたからやり返す…ただし、自分たちの正義を貫いて、なところですかね。
ラーメン評論家は全貌が見えた時にちょっとゾッとするくらい執念深くて、でも正義は彼らにありって感じなのがとても面白かったし、中庭を取り返すやつは、じゃぁこうしましょう!ってアイデアがめちゃくちゃ斜め上で笑っちゃった‥‥。
一冊通して読みやすく、スパッと解決する話が多くてサクサク読めます。
ちょっと誰かにやり返したいと思ってる人は何かの参考になるかもしれない…いや、やり返してるけどやってることは全然違法じゃない感じがすごくいいので(笑)

あとつぶれないマダムショップとか、落ち目のアイドルの奮闘とか、目の付け所が面白い一冊でもありました。
柚木先生好きにはもちろん、一回読んでみたいなって方にもおすすめの一冊です。

・伊坂 幸太郎『フィッシュストーリー 』

・芦沢 央『バック・ステージ 』

・池井戸 潤『七つの会議』


短編集ってちょっと物足りない気分にもなるんだが、こう、一個一個のアイデアにクスッとさせられるのでこれはこれで楽しい

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