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ついさっきまで他人だった人がいつの間にか家族のようになるそんな不思議なレストラン

今週はWAGYUMAFIA香港からアンダーソンシェフがやってきている。お互いに行っている交流会の一部だ。ほとんどすべての店舗を回って最新のWAGYUMAFIAを吸収してもらう。不思議なのは主従の関係ではなく、お互いに切磋琢磨しているのがこの香港と僕らの関係だ。WAGYUMAFIAが今あるのも、香港に最初にオープンしたからに他ならない。香港という舞台装置が出来たことで、現場で閃くタイプの僕は乾杯トレインや金粉を振りまく独自のスタイルを確立していった。今日はそれを逆輸入して更にブラッシュアップをかけた僕らのオリジナルフラグシップである西麻布でのセッションだった。

コロンビア、LA、サンフランシスコ、カタール、ブルガリア、シンガポール、そして日本勢といういつもの多種多様な人種が集まるのがWAGYUMAFIA。日本のWAGYUMAFIAは初めての人もいる、そんな人には僕はこう説明する。

「僕の原点はホームパーティなんだ。ここは僕の家、そして君たちは招かれた客というわけ。」

最初は他人でも、帰るときにはきっと家族みたいになる。それがWAGYUMAFIAだから楽しんでね。最初はそれはいいねぇっという顔をしているが、隣同士の客が話し始めるレストランなどまずない、僕が氷を温めていくように隣同士を紹介していく。そうするとそこで新しい会話が生まれる。何を話しているかは僕らには届かないが、表情が朗らかになっていくのをみると嬉しくなる。

蓋を開けたらペスカトリアンやベジタリアンやビーガンということは良くある。それでもこの雰囲気が好きでと楽しそうにしている。今日のLAからの客人の一人は、ペスカトリアンだった。肉は15年食べていないとそういった。すぐに僕らはベジタリアンとペスカトリアンメニューに取り掛かる。メニューが少し出てくると旅の疲れもあってか、「ごめん、もうお腹いっぱい」と伝えてくる。そうか、ゆっくり雰囲気でも味わってとすぐに伝える。

気づくとシグネチャーの熟成の神戸ビーフが登場する。手渡しで食べさせていくオリジナルのスタイルに、なんと彼のターンで僕にもくれとの合図を出す。「あれ?」と思ったら、パクっとその肉を飲み干しているではないか?すぐにかけより、「肉だよ?」と尋ねると「15年ぶりだよ!」とハイタッチしてくる。パートナーが目を大きく丸くしながら、「彼が肉を食べるなんて本当に信じられない」と大笑いしている。

最後はキッチン内にみんな集まって、みんなでワインを注いでいる。みんな笑顔になっていて、あのときのホームパーティのようにみんな旧知の仲間のようになている。そうだ、僕らはWAGYUMAFIAで出会った家族同士なんだ。

「いつLAにやってくるんだ?そうしたら、絶対会おう。」

僕らも新しい家族がまた生まれた瞬間なのだった。

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