なぜMDFとGTOは乖離するのか

はじめに

@ogt_pokerさんの「ブラフの境界線ハンドがチェックEV=ベットEVとなるようにディフェンスレンジを設定すると、そもそも多くの場合MDFから乖離する」というツイートを見てMDFの疑問が解消されたので、自分なりの解釈を記事にします。

MDFの定義

MDF = 1 - (ベット/(ベット + ポット))
で計算されるディフェンス頻度(コール頻度 + レイズ頻度)であり、この頻度でディフェンスすることによって相手がブラフでベットした場合のEVを0にすることができる。

GTOのディフェンス頻度

PiosolverなどのGTOソフトを使っている方なら分かると思いますが、GTOのディフェンス頻度はMDFから乖離します。
フロップ>ターン>リバーの順で乖離が大きい傾向があり、リバーでは乖離が小さいケースが多いですがそれでも乖離が0になることは稀です。

なぜ乖離が起こるのかこれまで考えていなかったですが、ogtさんのツイートを見て以下の理由を考えました。

乖離が起こる理由

先ず、GTOでブラフキャッチを行う理由を考えます。
それは「相手がブラフを増やすことによって追加の利益を得ることを阻止する」と考えられます。

この「ブラフを増やして利益を得る」を実現するには以下の条件を満たす必要があります。

チェックレンジの最弱ハンドのチェックEV < そのハンドのベットEV

このチェックEVが0でない限りはMDFを守ってブラフベットEVを0にする必要がありません。これがMDFと実際のディフェンス率が乖離する理由です。

具体例

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このケースではコール側のディフェンス頻度はMDFをわずかに下回っておりあらゆるベットに約1BB以上のEVを与えている様に見えます。

しかし、ベット側のチェックレンジを見ると22のような弱いハンドでもチェックで相手のドローミスに勝ってポットを獲得できる可能性があるのでチェックを選択しています。
また、K9sのチェックEVは0ですがブロッカー効果(相手がフォールドを選択す99などのハンドをブロックしてしまっている)でベットEVが下がっているのでチェックが選択されています。

これらの理由によりディフェンス頻度がMDFを下回ったとしても、必ず相手が追加のブラフで利益を得られるわけではないことが分かります。

乖離が大きくなるケース

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上の例と同じシチュエーションでリバーでAが落ちた場合、ディフェンス率が劇的に下がります。
この状況ではベット側の最弱チェックハンドQJoですら40BBのEVがあり、これだけディフェンス率を下げても相手がブラフを増やす動機になりません。この様に相手のレンジ全体のEVを引き上げるカードが落ちた場合はMDFとの乖離は大きくなります。

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弱いチェックレンジを持っている状況でBMCBを打たれた場合も乖離は大きくなります。このシチュエーションではOOPが強いハンドの多くをベットレンジに使っていて、OOPがチェックした場合はIPはチェックでポットを獲得できる確率が高いです。その為OOPがこれだけディフェンス率を下げてもチェックをベットに変更して利益を得られません。

まとめ

フロップ、ターンではあらゆるハンドにチェックEVが存在するのでMDFを意識する必要はないと思います。
リバーでは乖離が小さくなるので有効な指標ですが、特定の状況では注意が必要です。


誤りがあると思った方はTwitterなどで指摘していただけると幸いです。

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