indifferentレンジの推測

indifferentレンジってなに?

この記事ではindifferentレンジ(以下IDレンジ)を次のように定めます
『均衡において、あるベットに対してコール(レイズ)とフォールドが混合戦略になっているハンドの集合』
※(厳密にはEVを使って定義するべきなのですが、Piosolverの仕様上このような定義を使っています)

IDレンジの具体例
下の画像の状況だと88は全てIDレンジに含まれます

IDレンジが分かると何がうれしいの?

フォールドの上限が分かる

IDレンジはフォールドレンジにおいて最もEVの高いハンド群なので、フォールド上限(=コール下限)を示しています

バリューの必要条件が分かる

コールされた場合に勝っていることがあるのがバリューハンドに求められる条件ですが、これはコールの下限に勝っていると言い換えることができるので、IDレンジより強い役を持っていることがバリューハンドの必要条件であると言えます

どうやってIDレンジを推測するの?

MDFを使った簡易モデル

MDFを使ってIDレンジを推測する方法があり、手順は以下の通りです

  1. ベットサイズからMDFを計算する、これをx%とする

  2. ベットを受ける側のレンジのハンドをEQ順に並べ、下位x%をフォールドレンジとする

  3. このとき、フォールドレンジとディフェンスレンジの境界になるようなEQを持ってるハンドがIDレンジである

簡易モデルの欠点

均衡におけるディフェンス頻度(コールとレイズの合計)がMDFと一致するならば、高い精度で簡易モデルはIDレンジを推測できそうですが、実際にはそうでないケースがあり、ディフェンス頻度がMDFよりも低ければIDレンジは強くなり、高ければIDレンジは弱くなります

均衡におけるディフェンス頻度の推測

均衡におけるディフェンス頻度さえ分かれば簡易モデルの方法によって、より正確なIDレンジを推測できます
ここでは、集合分析から得られたデータを基に頻度を決める要因について考察します

ディフェンス頻度を高くする要因

  • ベットを受ける側がIPである
    IPの方が有利という単純な理由と思われる

  • レイズに対するディフェンスである
    レイズは同じサイズのベットよりもMDFが低くなるので、
    ディフェンス頻度との差がプラスになりやすい
    また、レイズに対してMDF以下のディフェンスをするとコールEVが高いハンド以外は全てレイズを返す戦略が最適となるが、そのような均衡はほぼ存在しない

ディフェンス頻度を低くする要因

  • レンジベットをしている
    この場合、増やすブラフがないのでMDF以下のディフェンス頻度でも搾取されない

  • 相手のレンジのマージナル部分が高いチェックEVを持っている
    MDF以下の頻度でしかディフェンスされないのであれば、どんなハンドでベットしても+EVが保証されるが、チェックした場合のEVがそれ以上ならばブラフを増やしてEVを増やすことができないので低いディフェンス頻度が均衡になりうる

※追記(2023/1/29)
ディフェンスを低くする要因と書いていますが、これは正確ではない表現でした。正しくはMDF以下でディフェンスする戦略が均衡に含まれる条件で、詳細は以下の通りです。

戦略の組(a,b)を均衡、Nをbがaのベットに反応するノードとする
このときNにおいてbがMDF以下ディフェンス頻度をもつならば、
直前のノードにおいてaは次の条件のいずれかを満たす
(ブロッカーの影響は存在しないと仮定します)
条件1 チェック頻度をもつハンドが存在しない
条件 2 チェック頻度をもつハンドにおいて、次が成り立つ
    チェックEV >=ベットの保証EV※1
証明
Nの直前のノードにおいて、どちらの条件も満たしていないとすると
チェック頻度があるハンドが存在し、かつチェックEV < ベットの保証EVとなるので、チェックをベットに変えることでaはEVを増やすことができるがこれは(a,b) が均衡であることに矛盾する

※1 コールもしくはレイズされた場合のEVを0として計算したベットEV

暗記最高!

MDFと均衡との乖離について前から考えてきましたが、実践で使えるような形でこの数値を予測するモデルを作ることはできませんでした…
そもそも、MDFを使った簡易モデルですら実践で使うには複雑すぎます

なのでボードの特徴ごとにMDFとの乖離の平均値とIDレンジの最頻値の役をまとめた表を作りました、リンクを貼るのでよかったら見てください

※追記(2023/1/29)
元データを誤って削除してしまったので、リンクを削除しました

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