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夢日記10

 久しぶりに背広にネクタイ締めて、広いレセプションホールみたいなところにいる。何かのパーティが行われているようだ。そこにいるのは身なりのきちんとした外国人の男性ばかりで、英語が飛び交っていることからして、ここはどうやら海外のホテルらしい。
 俺の同僚や知人は誰もいない。しかし、ロバート・キャンベル氏、ピーター・バラカン氏といった有名文化人がいて、グラス片手に周囲の人たちと談笑している。
 キャンベルさん、YouTube配信時々見てます、とか、バラカンさん、ウィークエンド・サンシャイン大好きで毎週必ず聴いてるんですよ、とか話しかけてみようかなと思うが、こちらは向こうを知っていても、向こうはこちらを全然知らないのだから、こいつ誰?と迷惑に思われるだけだろう、と臆した気分になる。1人で水割りでも飲んで暇をつぶそうと思う。

「I'll take it off」と言いながら上機嫌のバラカン氏が突然服を脱ぎ始める。酔っているのかもしれない。周囲にも同じように服を脱いでいる姿が幾人かみえる。何かの余興なのだろうか。
 素っ裸のバラカン氏はレセプションホールから廊下に出て、向かいの講義室のような部屋のドアを開ける。そこには女子学生ばかりが百人ほどはいるようだ。大丈夫なのか…と思いながら廊下から見ていると、バラカン氏は教壇のある前のドアから堂々と入って行き、教壇の前に立って微笑みを浮かべながらお辞儀をした。室内はざわつき、悲鳴とも歓声ともつかない声が上がり、やがて騒然となる。
 レセプションホールに戻ったところで「Why don't you take it off too」と近くにいた学生風の若い男から笑顔で話しかけられる。この場の雰囲気からすると、そうした方がいいのかな、という気がして俺は服を脱いだ。脱いだ服は、その若い男が「I'll put it away」と言って足早に何処かに持って行ってしまった。一瞬呆然とし、それから慌てて彼を追ったが、人混みの中で見失ってしまう。仕方なく廊下に出ると丁度エレベーターのドアが開いたところだった。エレベーターには他に誰も乗っていない。若い男は先に下に降りて、クロークに俺の服を預けたんじゃないか、と思い、1階のボタンを押すが、エレベーターは逆に上昇してゆく。見ると、30階まで直通で他の階には止まらないようだ。
 エレベーターはガラス張りで、通りに面している。落ち着かない気分のまま1人、眼下に広がってゆく外の街を眺めた。 

 30階についた。誰も乗って来ませんように、と祈る気分でいたが、ドヤドヤと5、6人のビジネスマンが乗り込んできた。彼ら全員が全裸の俺をジロジロ見ては何か囁き合っている。俺は隅っこに立って外を眺めたまま知らんふりをした。
 エレベーターは下降してあっという間に1階についた。開いたドアから出ると、多くの人が行き交っていて、裸でいるのは俺だけだ。ジロジロ見てくる人、見ないふりをして歩調を速めて通り過ぎる人、小さく声を上げて口を押さえる人。
 クロークを探すが見つからない。フロントもない。どうやらここはホテルのロビーではなく、ショッピングエリアのど真ん中のようだ。エレベーターまで引き返そうとしたが、焦っているせいか今度は乗り場が見つからない。

 どうしよう。俺は前を押さえてみっともない姿で立ち尽くす。もう、早く捕まった方がましだな、と思う。英語できちんと事情を説明できるだろうか。通訳なしだと無理だろうなぁ、と思いながら近くのベンチに腰をおろした。どうせすぐに警官がやってくるだろう。

 隅の方からどよめきが聞こえた。見ると、裸の男の集団がダンスしながら歩いている。周りに人々が群がりスマホのカメラを向けている。バラカンさんがいる。ロバート・キャンベル氏も裸だ。俺はそちらに向かって歩いた。裸の男の1人が俺に気づいて手を上げた。安堵で涙が出そうになった。ああ、俺は彼らの仲間になれる。もうこれで後はどうなってもいい。バラカンさんがこちらを見たので、俺は大声で「One Two Sun Shine!」と叫んだ。

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