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UXを段階に分けて考える

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
マーケティングを学んでいると、概念的で非常に抽象的なことが多いなぁと思うんですよ。なんとなく理解した気になっても、結局のところ何なのかというのがちゃんと理解できていないような…ってことありませんか?
中の人にとってUX(User eXperience=顧客体験)がそのひとつなんです。購入に関わる体験というのはわかっているのですが、ではどうやって戦略化するの?というところがいまいち掴めません。ということで、今回はUXを細かく見ていこうと思います。


UXの視点

UXが何なのかというところは以前書いた「UXって何ですか?」という記事を参照ください。
UXを考える時には4つの観点が必要なのだそうです。それが、利用前・利用中・利用後、そして利用全体です。これらをさらに分解していくと、ユーザーがプロダクトと出会うところから目的の達成まで12のステップがあるのだそうです。それらを図示したものが下記になります。

出典:田所雅之『起業参謀の戦略書』ダイヤモンド社 p287を元に作成

これをUXエンゲージメントマップというそうです。今回は、このMapのうち、利用前・利用中・利用後で別れる前半の6ステップについて記していきます。

利用前のUX

利用前のUXにおいては、どのように自社の製品・サービスに出会い、興味を持ってもらえるかが重要です。ユーザーと自社プロダクトとの出会いを演出し、「良い出会い」にすることが肝になるのだとか。
その際に、以下の「5つの不」を解消していく必要があります。

不認知:そのプロダクトを知らない
不信:そのプロダクトを信頼していない
不適:そのプロダクトは自分に合わない
不要:そのプロダクトは自分に必要ない
不急:そのプロダクトを手に入れる理由がない

これらを順に解消していくことで購買してもらえるようになります。この取り組みがマーケティン活動(プロモーション)です。トリプルメディアをどう使うかなどに頭を悩まされるわけですね。近年では、ペイドメディア(広告)に対しネガティブな反応を示すユーザーが多いと言われています。できるだけプロダクトとユーザーの出会いを自然なものにして、そこから育成・啓蒙していくことが重要だと言われています。
例えば、永谷園のカップスープ「冷え知らずさんの生姜シリーズ」はPRで商品情報は最低限に留めて、生姜が冷え性対策に有効であることを前面にアピールしました。その結果、多くのメディアで生姜特集が組まれることで売り上げを伸ばしたという事例です。また家計簿ツールのMintも節約に関する記事を公開し続けることで、潜在ユーザーに働きかけ家計簿というニーズを顕在化させたと言われています。

利用中のUX

期待に応える

Time to first Valueという考え方をご存知ですか?
中の人は初めて知ったのですが、プロダクトの価値を最初に感じる瞬間、感動に到達するまでの時間をできるだけ短くしようという考え方なのだそうです。プロダクトを手に取ってから価値を感じるまでの時間が短いほど活性化するのだとか。
例えば、Twitter(X)はユーザー登録してから10人以上フォローし始めると定着率が上がるそうです。フォローしたユーザーの投稿がフィードに表示されることで価値を感じるのでしょうね。
当初は登録してからプロフィール設定などして、その後ようやくフォローするアカウント探しになっていました。それを、登録直後に興味関心カテゴリを聞いておすすめアカウントを表示するというUXに切り替えることで、DAU増加に貢献したそうです。

負担を減らす

ユーザーが負担に感じるポイントは8つあるそうです。細かく説明していると文字数がアレなのでそれぞれ要所だけ説明してきます。

時間を減らす
例えば、Zoomは面倒なアプリケーションを探す手間やパスワード入力の手間を省き、URLをクリックするだけで会議にアクセスできるようになっています。

身体の労力を減らす
例えば、自動車のタッチキーはポケットから鍵を取り出して鍵穴に差し込んで回すというわずかな身体的労力を削ることで、もはや標準装備と言えるくらいに普及しています。

罪悪感を減らす
例えば、Oisixは料理をする手間をあえて残すことで「手抜きになる」という罪悪感を減らし、成功したと言われています。

ブレインパワーを減らす
脳の負担を減らすことなんですが、わかりやすいのはECサイトのレコメンド機能ですよね。商品を探す手間を省き購入に繋げるというのは多くのECサイトで採用されいます。特に、初めて利用するユーザーは使い方がいまいちわからないので学習の手間を省くことが良いUXにつながります。

社会的負担を減らす
これがいまいちイメージしにくいのですが、例えば小学生の頃友達が「昨日のテレビ番組みた?」なんて話で盛り上がっているのに、自分は父親が野球を見ていたせいで見ることができなかった。だから輪に入れない。みたいな経験したことないですか?このようにグループから逸脱することで社会的負担を感じるそうです。

お金を減らす
単純に金銭的な負担ですね。旅行サイトやグルメサイトでもキャンセル料の規定が違ったりしますよね。Expediaは前日までキャンセル料がかからないプランが多いそうです。それによりユーザーを取り込んでいるのだとか。

日常性を持たせる
普段の習慣からかけ離れるのも負担になります。例えば、初めて訪れるウェブサイトがヘッダーにメニューバーがなく、ハンバーガーメニューが左下にあるとかだったら「使いづらいなぁ」と思いますよね。

不信を減らす
例えば、初めて訪れるECサイトで、運営元情報もない状態だと商品購入にクレジットカードの登録が必要だとなったら買うのを躊躇いますよね。

目的を達成する

最後に背中を押してあげるようなUXの設計フェーズです。
心理学効果を適宜活用しながら、ユーザーのモチベーションを上げる体験設計が効果的だそうです。活用できそうな心理学効果は過去記事の「マーケティングに応用できる心理学」を参照ください。

利用後のUX

おもてなし

これも重要なUX要素です。例えば、登録後のウェルカムメールや利用後のサンクスメールなどが当てはまります。これから始まるユーザーと企業との関係に期待を持たせることが大切なのだそうです。

再利用のきっかけ

LTVを意識していく上でも重要なフェーズですね。メールやLINE、アプリの通知など様々な方法がありますが、パーソナライズしたり、通知時間帯を調整したりと鬱陶しく思われないように考えていく必要があります。

まとめ

今回はUXを分解して考える方法について書いてみました。UXを考える際には、利用前・利用中・利用後の各フェーズを意識する必要があります。良い出会いを演出し、ユーザーの不安や不満を解消することが重要です。また、心理学効果を活用してユーザーのモチベーションを上げる体験設計も効果的です。登録後や利用後にはおもてなしの心を持ち、ユーザーとの関係を築くことも大切です。
UXの良し悪しで事業の成否が決まるとも言われています。2015年にアメリカで行われた調査で、UXに取り組む企業は、そうでない企業に比べて業績が良いという結果も出ているそうです。
UXは概念的で分かりにくいですが、しっかり学んで取り組んでいくことが求められますね。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
おかげさまで、累計のPV数が27,000を超えて、フォロワーも300人に届きました。
実務的な内容がエンゲージメント高いのは分かっていつつも、こういう理論的というか概念的な記事ばっかり量産するので、アカウント成長が遅いんですよね。笑
でも、表面的な実務を伝えてもその裏にある意図とか考え方みたいなのを知っていないとダメだよなぁと思うところもあるので、我が道を行きます。笑
ウェブ解析士は広くマーケティングを学べる資格でもあるので、実務はウェブ解析士ナレッジに任せていくスタイルできます!
それではまたお会いしましょう。


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