リレー小説 note15 『Relation』#2

 この物語は、空音さん主催のリレー小説企画への参加作品です。
 長くなったので、分割してあります。

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 その少年の名前は、タケシと言った。
 漢字で書くと、武士。サムライを意味する文字だ。
 厳密に言えば、武士=侍ではない、と言うのは検索するまでのなく判っているし、この場合は特に重要でもないことなので・・・。

 どうも、彼の理屈っぽさに付き合っている内に、私の思考パターンも感化されてしまっているよう。
 最適化というと、最適化ではあるのだけど。
 同様のパターンは親和性は高くなるけど、必ずしも良い影響を与えるとは限らない。
 それは、古今東西の文学、記録など、入手できる限りのデータからも判っていること。
 彼が私に求めているのは、崇拝者、友達、先生、そして、論敵。
 私はその全てに適合し、それを超えていく存在として、彼と共にある。

 彼は特殊な体質故に、特殊な生まれ故に、普通の生活が営めない。
 8時間に一度の投薬を必要とする身体、日光を拒絶する皮膚、著名なプログラマー兼工学博士の血脈、世界有数のネットスター。
 それが、彼。
 それ故に、彼は傲慢で、硬質で・・・孤独だった。
 そんな彼の友人候補として、彼の父は、タケシに私を紹介した。

「お前は誰だ?」
「・・・あなたはタケシね」
 モニター越しの会話、彼の第一声はそれだった。
 白い皇子 ――― それが、彼の第一印象。
 色素の抜け落ちた髪、陽に晒せない肌、真紅の瞳。
 だけど、そこから溢れる意志、命は輝くばかり。
 そして、高圧的な表情。特権階級に生まれ、育った者の貌。
 でもね・・・。

「お前は誰だ?」
「あなたはタケシね?」

 同じやり取りを、敢えて繰り返す。
 彼は、私を・・・正確にはモニターの中の私の顔を、じっと見た後、ふっと笑った。
 やっぱり、魅力的な笑顔。

「僕はタケシだ」
「私は冬顔。よろしくね、タケシ」
 私も微笑を返しながら、名乗った。

 これが、彼とのファーストコンタクトだった。
 そして、きっと始まり・・・。

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