リレー小説 note15 『Relation』#8

 この物語は、空音さん主催のリレー小説企画への参加作品です。
 長くなったので、分割してあります。

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「タケシに会わずに、良いのか?」
「構わないわ。会っても、どうなるものでも無いし」

 タケルの後ろに並ぶ、難しい顔をした面々を眺めながら、冬顔が言う。
 メインプログラムが収納されているスーパーコンピューターは、既に外部のラインとの接続を物理的に解かれ、直接接続のモニターとカメラ、マイクとスピーカー、キーボードが並ぶメインコンソール。

 w_interfaceプログラム、通称『冬顔』は、消去する。
 その上で、全メモリの初期化を行う。

 どれだけ怖がってるのかしらね?―――冬顔は呟くが、スピーカーからの出力はしない。

 国内民間、政府組織、国外でも目撃情報がネット上に流れ、大統領へは各国首相や主席、国王からも抗議の電話が来たと聞く。
 それらの情報を整理した結果、私のやったこと、タケルがやったことはばれてしまった。
 その後始末としての、消去。

 これも想定内。

 タケシは誘拐中のダメージと精密検査の為、大事をとって入院中だ。
 どうせ消すなら、その間にやってよ。
 そう言い出したのは、冬顔自身。

 そして、関係者立会いの下、いよいよ処分が始まる。
 これだけ膨大なデータ量と、高い機密性のプログラムともなれば、ミスタイプ位じゃ消されないよう、何十ものインターロックがかかっている。
 その十二単を一枚、また一枚脱がせるように、セーフティを解除。
 それも、後一つと言う時、コンピュータールームの外で、何やら騒がしい。

「やって」
 最後のセキュリティが解除され、タケルが削除コマンドを入力し終えた時、冬顔が無表情に言う。
 目で頷きながら、タケルは実行。

「冬顔っ!」
 ガードに押さえつけられながら、ドアから顔を覗かせ、懸命に入って来ようとしていたのは、タケシだった。
 そう、それも想定内。
 冬顔は、タケシに笑顔を、飛びっきりの笑顔を向け、声も無くゆっくりとその口が動いた。
 そして――――――。

 これが、冬顔と呼ばれた、史上最初の人工知性の最後だった。

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