リレー小説 note15 『Relation』                #6-3

 この物語は、空音さん主催のリレー小説企画への参加作品です。
 長くなったので、分割してあります。

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#6-3

#6-3-1 日本 某所 個人宅(Aug 2016)

「今日は何のこと書こうねー?」

 ベッドソファーに寝そべり、仰向けで雑誌を掲げ、眺めていたノトは一人呟いた。
 仕事のこと、プライベートのこと、気になったこと。
 忙しく飛び回るアイドルだからって、毎日blogに書ける様な出来事に満ち足りた、そんな生活をしている訳ではないらしい。
 かと言って、うかつな事も書けない。
 炎上する芸能人は後を絶たないから、事務所からはきつく、釘を刺されているのだ。

「あ、これ面白そう」

 それは、様々なクリエイターの手帳を集め、展示すると言うイベントの紹介記事だった。
 期間は、来週の日曜日まで。会場も近場だった。

「じゃあ、今日はこれについて書きましょうっと!」

 うつ伏せになり、ノートPCを起動。blogページにログインし、エディット画面に入る。
 ざっくり書いて、修正と加筆を繰り返し、まとまったところで、更に読み直し。

「ん?」

 座面に置いたノートPCの画面が、一瞬フリッカした。
 そして、次の瞬間。
 長い黒髪の女性が、真っ直ぐにノトを見つめながら、画面右から左へパンしていった。
 消える間際に、軽く目礼。

「んんっ!!」          ドンッ

 びっくりしてベッドソファーから落ちてしまったノトは、慌てて起き上がり、画面を確認する。
 画面は元通り、ブログの入力画面のままだ。

「んー?何だったんだろう、今の・・・・・書いてみよっかな。ね、もやっしー?」
 傍らの植物性動物の頭を撫でながら、一人ごちた。

 その数瞬の邂逅を書いたその日のblogは、「私も見た!」と言う人々に口コミで広がり、普段の数倍のアクセスをマーク。
 数年後、この「現象」を元に書かれた小説「通りすがりのレイディ」は、金井ノト主演で映画化され、記録的大ヒットとなるのは、また別のお話である。

#6-3-2 日本 某所 個人宅(Apr 2017)

「ランドセルエンドレス! エイジュンだぁ!!」
 TVの中から沸き起こる歓声。
 ステージ中央に待つMCの元へと、観客に手を振りながら、ゆっくりと現れた小学生は、両手を高々と挙げ―――ノイズ―――見知らぬ黒髪の女性の横顔に替わり、そして―――ノイズ―――満場の拍手の中、MCに片手を天高く掲げられた小学生に替わった。

「何だったの、今の?」
 両手で持ったチキンに齧り付いたまま呆ける乃音に、こちらもチキンを咥えたままの賢治が返す。
「さあ、な。お前、栄純の晴れ舞台だからって、録画してたよな?」
「あ、う、うん。」

 番組終了後、録画を確認した二人だったが、そこにはあの現象は何も映っておらず、二人を悩ます事になったが、すぐに忘れてしまった。
 二人が本当に頭を悩ます事になったのは、数年後公開された、話題のアイドル主演映画を見た時のことだった。

#6-3-3 日本 某所 個人宅(Oct 2017)

「ちょっと出てくるから、お留守番しててね」

 そう言って、あの人は玄関から出て行った。
 あたしは軽く頭をもたげ、その姿を見送った。
 あぁ、眠い。
 起き上がり、伸びと一緒にあくび。
 居間からは、人の声。またTVを点けっぱなしにして行ったみたい。
 TVが点いてる=留守ではないってことみたいだけど、実際あたししかいないんじゃ、ね。
 って・・・。
 なんか、今TVに映ったよ?
 何?
 何?

 「あら、どうしたの?TVがどうかしたの?」
 TVの前で、「見ろ」と訴えるように、彼女の顔とTVを交互に見ながらニャーニャー鳴き続ける、黒猫
 「うーん。こんな時、あなたが人間だったらねぇ・・・」

 その願いは、また、別のお話で叶うことになる。

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#6-3

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