リレー小説 note15 『Relation』#4

 この物語は、空音さん主催のリレー小説企画への参加作品です。
 長くなったので、分割してあります。

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 実際問題として、彼を探す時間はほとんど無い。
 彼を見つけて、救出し、投薬するまで。
 その手際、隠密性を考えれば、発見後、無事彼を救出するためにこそ、時間は必要となる――――犯人はプロで、力を持った組織だ。

 そして誰かが、ネットワークに接続された私の存在を感知すれば――――タケルが時間を稼いでくれるとは言え――――その時点でミッションは停止する可能性が高い。
 しかも、タケルの周囲には、犯人からの接触に備えた各組織が、万全の監視体制で網を張っている。
 偽装しているとは言え、ネットワークのトラフィック変化から見つかるリスクを抑える為には、大っぴらには動けなかった。
 体勢を整えるまでは。

 私がまず最初にやったのは、足がかりを作ること。
 本体側との通信は、出来るだけ頻度、データ量ともに抑える必要がある。
 ならば、外部でデータベースを作り、そことのアクセスに絞る事にした方が効率的。
 ただし、いくつもの無名サーバーを介して、中間のルートはランダムにしなければならない。
 DBは無料のクラウドスペースに設置、この状況でアクセスしても疑われない、ニュースサイトに偽装する。
 そして、botを作成し、増殖しながらDBに情報を集めるよう、コマンド。
 後腐れが無いように、時限自滅も組み込んでおく。
 この段階では、あまり特殊なサーバーに潜り込む必要も無いので、検索範囲を絞って、Familiarを解き放つ。
 ここまでの所要時間、11分27秒。

 Hurry up!

 私は情報の海に漂いながら、ある情報を探していた。
 全てを可能とする、ノート
 奇跡を可能とする―――私の誕生をも可能とした、ノート。
 その現在の所有者と接触すべく、フェーズ1として検索サイトからの情報収集、フェーズ2ではデータソースのサーバー、例えば、掲示板やSNSサーバーにアクセスし、詳細データを収集する。
 有象無象の情報の中から、対象を見つけ出すキーワードは絶えず更新。
 真偽を検証しながら、時間軸上にソート。

 Hurry!Hurry!Hurry!Hurry!Hurry!Hurry!Hurry!

 Hit!!

 データの検証。
 テンプレートも使用せず、昔からの記述言語でのデザイン。
 そこは小さな、個人経営の骨董店のHPだった。
 開店したて、HPも出来たて。
 商品と、店内の様子の紹介で写真が数点。
 その、レジカウンター脇の平棚。
 フォーカスの甘い画像を、ネット上の無料サービスでクリアに拡大。

 あった。

 HPにアップされた画像データのタイムスタンプどおりなら、少なくとも、昨夜までは所在が確認出来る。
 住所は、Japan、Tokyo。
 時差は14時間なので、現地時刻では01:22・・・。
 深夜といっていい時間だが、迷ってる暇は無い。
 探しておいたテキスト音声変換サービスにアクセス。
 並列して無料通話サービス回線に接続。
 ダイヤルアップ。

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