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日記2018/11/12〜11/18

2018-11-12 アイドル屠殺人
政府健康管理局の者です、抜き打ちギョウ虫検査に参りました。さあ、一列に並んで尻を出しなさい。突如楽屋に現れた、白衣で変装したつもりの渡辺電機(株)さんを、AKB48の精鋭たちは容赦しなかった。完膚なきまでにフィジカルを叩きのめしてからの、終わりのない言葉の暴力。出番を告げに来たADを突き飛ばして、泣きながら裸で楽屋から飛び出して行った渡辺電機(株)さんは、あざだらけの全身に油性マジックで「卑怯者」「ド助平」「虫」「ウオノメ」「ヒメイトマキボラガイ」「トイレそのあとに」「E電」「チャリで来た」などと書き込まれ、小ぶりの陰茎にはザリガニが二匹ぶら下がっていた。「選手交代」遠ざかって行く泣き声と入れ替わるように響く、モンゴル訛りの野太い声。ギョウ虫検査用セロファンの束を手に、ホッケーマスクで顔を隠し、大銀杏を結った大男が、ゆっくりと楽屋へ向かって行く。惨劇が、繰り返されようとしていた…。

2018-11-13 藤山寛美物語
まずM-1優勝を足がかりに芸人として頂点に立ち、バラエティに進出して複数の冠番組を持ち、ゆくゆくはタレントとしてマチャアキの後継者に…との目論見で入った吉本総合芸能学院では、火星なまりが災いして友だちもできず苛烈ないじめに遭い、やっとのことでウガンダからのお笑い留学生G.G.アミンとコンビを組んだのは、入学した年も押し詰まった11月のことだった。この時点で詰んでいるとしか思えない渡辺電機(株)さんの芸能人生だったが、火星人と土人のコンビ漫才は全く予期せぬ化学反応を起こし、聞く者を爆笑の渦に巻き込んだ。あらゆるコンテストを総なめにして、更にはひな壇芸人からバラエティの常連、遂には念願の冠番組を持ち、芸能界のドンと呼ばれる頃には、渡辺電機(株)さんとアミンの身体は完全に融合し、思考も入り混じり喋る言語も火星とウガンダのチャンポンで、誰もが話を理解しないままに笑い転げ、耳から大量の火星ハンミョウの幼虫をあふれさせて狂い死にした。どうやってもマチャアキの後継者にはなれないことを悟った渡辺電機(株)さんが故郷の火星へ帰る頃には、地表は完全に火星ハンミョウの大群に覆われ尽くし、わずかにウガンダのアミンの生家のみが今も変わらず、ピューマの乳搾りをして昔ながらの暮らしをしているという。

2018-11-14 エクスターミネーター
長く鋭い鎌で生き物の首をスポーンスポーンと刎ねながらやって来る五人組の死神、その名もいきものがかり。彼らが通った後には人も動物も、息をするものは何一つ残らない。累々たる首無し死体の山を築いてやって来た彼らを、渡辺電機(株)さんは「YouTubeで何曲か聴いたことあるけど、あんま面白くなかったっす」と、追い返した。その後レンタルや違法DLを通して彼らの音楽と真剣に向き合った渡辺電機(株)さんはその素晴らしさに気付いて大いに反省し、機会があれば謝罪して感想を伝えたいと願ったが、既に地上のいきもの全てを殺し尽くしてしまった彼らにはもう、二度と会うことは叶わなかったという。

2018-11-15 パラサイト
スルメのように全身粉を吹いて干からびて死んでいた渡辺電機(株)さんの亡骸を、稽古上がりの横綱が見つけた時には、近所の子供たちが遠巻きに取り囲んでつつき回し、ミイラだミイラだと大騒ぎになっていた。こらぁ、やめんかガキどもが。横綱の怒声に一斉に振り返った子供たちの目は、虹彩が横長の爬虫類の眼だった。耳まで裂けた大きな口で、長い舌をチラつかせてゲラゲラ笑う子供たちは、躍り掛かった横綱から蜘蛛の子を散らすように素早く逃げ回った。クソッ爬虫人類め!核搭載の大銀杏ミサイルを発射しようと構えた横綱の背後から、空気を切り裂いて幾筋ものコウガイビルが伸び、子供たちを撃ち落とす。振り返ると、仁王立ちした渡辺電機(株)さんのミイラの口から、何匹ものコウガイビルが伸びて、子供たちの背に深々と突き刺さっていた。横綱、核ミサイルは最後の手段だぜ。ニヤリと笑ったミイラが軽くて手を振ると、背中を突き刺された子供たちが一斉にピクンと同じ方向に跳ねた。よし、寄生完了。満足げに微笑んだ渡辺電機(株)さんのミイラは、ばさばさと崩れ落ち、粉になって四散した。春には、寄生された子供たちの腹を食い破って何万匹という渡辺電機(株)さんの幼生が孵り世界を滅ぼすことになるが、何も知らない横綱は、ただ呆然と見守るばかりだった。

2018-11-16 バナナを持った男
どうせ死ぬならサグラダファミリアのてっぺんから豪快に飛び降りて…!アダルトサイトや八百長相撲など、あらゆる金儲けに手を出しまくってことごとく行き詰まり、もはやこの世に何の未練もない渡辺電機(株)さんが、残りの有り金はたいてはるばるバルセロナまでやってきた。死を前にホテルの部屋で身を清め陰茎を拭き、真新しい白装束に身を包み、厳かな気持ちでいざ訪れたサグラダファミリアも、間近でよく見るとその材質はすべてエロ同人誌を裁断した紙でできており、年代モノのクリーミーマミやでじこの稚拙なエロイラスト群を踏み分けてよじ登るうちに段々、頭の中のモヤモヤがスッキリと形を取り始め、頂上に立つ頃には、それは明瞭な形で、表紙フルカラーB5版48P定価800円(税別)のエロ同人誌の構想として、結実していた。ここが、おれのパワースポットだったんや。急ぎ帰国して取り憑かれたように執筆し、渾身の仕上げを施して発行したエロ同人誌はまったく売れず、さらに傷口を広げた渡辺電機(株)さんはある日、全裸で合格鉢巻、両手にむき身のバナナを持ち、靖国通りを爆走するバニラカーめがけて奇声を発しながら突進して行った。

2018-11-17 サイケデリック忍法帖
ペイズリー柄のまわしを締め、マッシュルームカットの上に大銀杏を結い、頬にはLove & Peaceのペイント、土俵下で呼び出しの声がかかるまでは派手なサングラスを着け、サイケ力士と呼ばれた渡辺電機(株)さんだが、かんじんの相撲はからきし弱かった。それでも、どこからか調達してきたマリファナやLSDを献上することで当時の横綱に取り入り、威光をかさに肩で風を切った。だが、国技である相撲を汚すそんな所業を、時の権力が看過するわけがなく、間もなく渡辺電機(株)さんは日本政府の放った暗殺忍者軍団に追われる身となり、チューリップハットとパンタロンで変装し、魔法のタンバリンを手に、親友のインコを肩に、七色の飛行船で虹の国へと逃亡したが、もちろんそんなのは全て幻覚に過ぎず、実際は相撲どころか一介の貧乏な初老キモオタで、ワンフェスで買った五月みどりのフィギュアで一刻も早くシコろうと入ったビックサイトのトイレで、フィギュアの生乾きのシンナーでトリップしてしまい、ヨダレを垂らして死んでいる姿が発見された。幸せそうな死に顔だったという。

2018-11-18 エッチな大一番
おぅい、誰かキンタマ落としたぞ。横綱が、もち巾着のような可愛らしい袋入りのきんたまを高くかざし呼びかけたが、支度部屋の力士たちはもぞもぞと股間を確認し、ついてるでごんす、おれじゃないでごんす、などと安堵の表情で顔を見合わせるばかりだった。なんだ、いないのか。じゃあ食っちまうか…。思わぬ取組前のご馳走にありつき、嬉しそうにあんぐりと口を開けた横綱が、ふと動きを止めた。一番奥に陣取った横綱の正面、入口に仁王立ちする憤怒の表情の渡辺電機(株)さんと、目が合った。てめえッ横綱!キンタマ返せッ!!だが、すでにその怒声は甲高く、身体つきは丸みを帯びて優美な曲線を描き出し、発散するエロスが横綱の股間を射抜いた。こりゃあ、大事な取組前に目の毒だぜ…。苦笑いしながら目をそらした横綱の鼻の穴から、真っ赤な鮮血がしたたり落ちる。やだもう、横綱のエッチ!恥じらう渡辺電機(株)さんと、自然に巻き起こる笑い声。ほっこりした空気の中、結びの一番の時間が迫っていた。

座敷童子(牝14)子鬼(牝10)妖怪(牡5)と3人育てているので、ご支援いただけると非常に助かります。