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日記2018/11/26〜12/2

2018-11-26 ワンダーランド
遅刻だ遅刻だと口走りながら駆けて行く、時計を持ちタキシード姿のウサギを追いかけて、渡辺電機(株)さんは夢の中へと誘われて行った。氷点下の上野不忍池のベンチ下で凍死するまでの、この世で見る最後の夢…となるはずだったが、カードの兵隊たちを切り刻みハートの女王を凌辱せんとしたその刹那、ケツの激痛で飛び起きた。見ると、背後に安倍総理が貼り付き、そのちんぽが渡辺電機(株)さんのケツに深々と突き挿さっている。なにしとんねんこら、どかんかい。命拾いしたことに気付かず罵倒する渡辺電機(株)さんと、犬のように夢中で腰を振る安倍総理の頭に、白い雪が少しずつ、降り積もっていった。

2018-11-27 ヒューマン・トルネード
笠地蔵の教えに従い、街のミケランジェロや小便小僧にコンドームを被せる日課を欠かさなかった甲斐あって、ある朝、渡辺電機(株)さんが起きて窓を開けると、全裸で黒のコンドームを装着した安倍総理が、仁王立ちで微笑んでいた。いいのかよ、こんなとこでアブラ売ってて。そう言いながらボスジャンをはおらせてやったが、元気すぎる陰茎は勢いよくジャンパーを跳ね飛ばした。私はね、電機さん。コンドーム一丁の裸一貫から叩き上げて、総理の座まで上り詰めたんです。2秒でわかるウソ。もう疑う余地もない、横綱の変装だった。コンドームひとつ身につけて下関駅を夜行で旅立つ私を見送ってくれたのは、コンドーム被せの内職で私を大学に行かせてくれた、母だけでした。延々と続く横綱のウソを無視して、スマートフォンを開いてLINEを確認した渡辺電機(株)さんが見たものは、画面を埋め尽くす横綱からの「あいしてる」スタンプの嵐だった。

2018-11-28 ファラウェイ 〜明日へ〜
しまむらの500円ワゴンから買ったつんつるてんのスーツの背中にマジックで「アルマーニ」と書いたガムテープを貼り、颯爽とまんがの持ち込みにやって来た渡辺電機(株)さんを、日産のゴーン会長は丁重にもてなした。会長室の応接セットのテーブルに置かれた、ホカホカのふかしいもが山盛りの大皿を勧め、さあ好きなだけ召し上がれと微笑むゴーン氏は、どう見ても横綱の変装だったが、渡辺電機(株)さんはそんなことはどうでも良かった。無我夢中でおいもにかぶりつくと、ポロポロと大粒の涙を流し、うんめ、うんめ、と繰り返した。やがて満腹になり、むにゃむにゃと呟いて眠りこけてしまった渡辺電機(株)さんを、横綱はそっと抱えあげた。さあ電機さん、おすもうの国へ行こう。それ以来、渡辺電機(株)さんの姿を見た者は、いない。

2018-11-29 土俵の鬼 稽古場の天使
神聖な土俵でちんぽをいじってんじゃないよッ!
横綱に叱責された渡辺電機(株)さんは泣きながら稽古場を飛び出して行き、それきりミクシィもニコニコもアカウントを消して、部屋へ戻って来なかった。だが、翌日も何一つ変わらず朝稽古が続けられたと知るやバツが悪そうに戻って来て、今日も稽古が始まるよ〜〜んと、相変わらずのボーイソプラノ声で歌い上げた。腕組みをして無表情のまま反応しない横綱に、渡辺電機(株)さんがもじもじ不安そうに見上げていると、横綱はフッと笑みをもらし、ちんぽは無しだぞ!と呟き、立ち上がった。いそいそと嬉しそうに付き従う渡辺電機(株)さんを、誰もが苦笑して見送った。そんな2人が、なぜサバ缶を巡って血みどろの殺し合いを繰り広げたのか…。

2018-11-30 バブルと寝た男たち
ジューリアーナ!トーオキョォーーッ!!絶叫しながら全裸で駆け込んできた渡辺電機(株)さんを、衆院予算委員会の面々は無言で振り返った。彼らは一様に狐の面をつけており、微動だにせず、渡辺電機(株)さんを見つめていた。やだ、ノリ悪う。渡辺電機(株)さんは心細い気持ちになり、自分だけ裸なのが急に恥ずかしくなってきた。へいへいおじゃま虫ー!バイバイの手つきをしながら静かに後ずさった渡辺電機(株)さんだったが、狐の面が一斉に立ち上がると、ヒィッと泣き声をあげ小便を漏らしながら、全力疾走で逃げ出した。だが、焦れば焦るほど、足が滑って体が前に進まない。背後にどんどん迫る、狐の群れ。おれなンにもしてないよォッ!!悲鳴をあげて汗びっしょりで目覚めると、そこは崩れ落ちたジュリアナ東京の廃墟の、朽ちて埃の積もったお立ち台の上だった。バブルが弾けて28年。終わりのない、一人ぼっちの夜だった。

2018-12-01 Punk is dead
ファック、オォ〜〜フ!!気合いを入れて片目をつぶり舌を出し、思い切り中指を立てた渡辺電機(株)さんだったが、サラサラのおかっぱにトンボメガネ、白のタートルネック姿では、新宿の地下ライブハウスに集うパンクスたちの反応も、芳しくは無かった。しかもタートルネックの下はふるちんで、可愛らしいラッキョウのような陰茎が、鳴り響くバスドラの音圧で小刻みに揺れており、凶暴なパンクスたちも対応に困った。あのう、迷惑になりますんで、どうかここは…。モヒカンで舌にピアスを挿した入墨だらけの大男が、恐る恐る文明堂の包みを差し出して渡辺電機(株)さんに退店を促す。モーゼの十戒の海のように道を開ける屈強なパンクスの間を、渡辺電機(株)さんは可愛い尻をふりふり、嬉しそうにカステラを頬張りながら、去って行く。この手で、パンクのブームが終わる90年代初頭まで食いつないだというが、今、何処でどうしているやら…。

2018-12-02 ヒアリのパラダイス
ホカ弁屋のカウンターからくすねたひとつかみのマヨネーズを手に、抜き足差し足で深夜のブロッコリー畑に侵入した、全裸の渡辺電機(株)さん。新鮮野菜でヘルシー夜食って寸法よ…とほくそ笑む間も無く、全身アオムシにたかられて泣き叫びながら飛び出して来た。そこに迫る、爆走するダンプのエンジン音とヘッドライト。眩い逆光と轟音と土煙ののち、辺りに静けさと暗闇が戻ると、地面には飛び散ったマヨネーズと、数匹のアオムシが蠢くだけで、渡辺電機(株)さんの姿は、跡形もなく消えていた。次の夜。となりのバナナ畑に、ゴミ捨て場で拾ったチョコホイップを手に、抜き足差し足で忍び寄る、全裸の渡辺電機(株)さんの姿があった。呼応するかのように、畑の地表に空いた穴から、凶暴なヒアリの群れが、ゾロゾロと姿を現し始めていた。

座敷童子(牝14)子鬼(牝10)妖怪(牡5)と3人育てているので、ご支援いただけると非常に助かります。