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キットカットのマーケティング戦略がすごかった件

はじめに


皆さんこんにちは!
マーケ・営業プロセス向上委員会のバーチャンです。

今回は「キットカット」のお話です。

今や知らない人のいないチョコレート菓子「キットカット」。
キットカットを製造販売するネスレジャパンさんは、2008年に郵便局とタッグを組んで、あるマーケティング施策を行いました。

その施策は大成功し、なんと世界的に有名なカンヌ国際広告祭の
「メディア部門」で日本企業初のグランプリを受賞しました。
いったいどんなマーケティング施策を行ったのでしょうか?

今日はそんなキットカットにまつわる話を掘り下げいきながら、
マーケティングにおいて大切なことは何なのか調べていきたいと思います。

ちなみにこの記事はこんな人におすすめです。

  • マーケティングの基本の「き」が知りたい方

  • キットカットがここまで日本で売れている理由を知りたい方

  • ただただチョコレートが好きな方


キットカットとつながりがあるイベント

皆さんはキットカットに対してどんな印象を持っていますでしょうか?
例えば「ウエハースが入ってる」「丁度良いサイズ感」「パキッと割れるのが気持ちいい」などなど、いろんな印象があると思いますが、
ある特定のイベントと紐づけて思い浮かべる人も多いのではないのでしょうか。

そう、あるイベントというのは「受験」です。

ご存じかもしれませんが、キットカットは受験シーズンの応援アイテムとしてたくさんの方が購入される商品です。
でも、実はネスレジャパンさんがマーケティング活動を行う前から、
キットカットは受験シーズンに売れていたんです。

元々ネスレジャパンさんが受験キャンペーンを始める前から、
キットカットは「九州地方で12-1月になぜか売れ行きが伸びる」という調査が出ていました。

そこで担当の方が調査をしたところ、福岡のスーパーを中心として
受験生の親御さんが大量に購入されていることが分かりました。
ではなぜ九州地方限定で売れゆきが伸びていたのでしょうか?

実は、福岡生まれの方なら直感的にわかるかと思いますが、
「キットカット」は、博多弁で「きっと勝っとぉ(きっと勝つよ)」という意味になるのです。
それゆえ、九州の受験生の親御さんが、ゲン担ぎの意味を込めて、購入していたのです。

そこから受験生の応援キャンペーンとして、キットカットがさまざまな場所におかれるようになりました。少し前の事例ですが、一部ご紹介したいと思います。

例えば「ホテル」です。受験シーズンになると、全国の受験生が泊まるホテルにキットカットが無償配布されていました。
朝ホテルから出発する受験生に、フロントの係の方が「頑張ってください、きっと勝てます!」というメッセージを添えて手渡されるのです。
これは口コミで話題になり大ブームとなりました。
ホテルには受験生から感謝の手紙が届くようになり、
過去には全国500を超えるホテルでこの施策が行われていました。

合格祈願として訪れる「神社」や、受験生を会場まで送り届ける「駅」での施策もありました。
ちなみに駅での施策では、電車の定期券を意味する「パス」が、受験を「パス(合格)」ということで、
ネスレカフェで使える「ネスカフェ スタンド定期券 (パス)」を一緒にした特別商品「キットパス」を販売していました。

というように、キットカットは受験生を応援するツールとして、様々な場所で販売されてきました。

キットカットと郵便局のコラボ戦略


ここからタイトルのお話に移ります。

様々なコラボを仕掛けていた2008年頃、少子化が背景にある中で
受験キャンペーンのターゲット層を受験生以外にどうやって拡大していくかがひとつの課題になっていました。

一方、郵便局は、2007年に郵政民営化が始まったタイミングでもあり、
このとき、自分でお金を稼ぐ力を求められていました。

郵便局は全国に2万局以上あり、売り場規模はこのころのコンビニに匹敵します。
そして、受験とのつながりで言うと、
郵便局は、親御さんが願書を出す、また合格通知を届けてくれる、といった受験生との縁が深いタッチポイントでもあります。

そこに目を付けたのがネスレジャパンさんでした。

そこでネスレジャパンさんはコミュニケーションパートナー会社と力を合わせて、
郵便局向けに「キットメール」という商品を開発しました。

この商品の戦略で凄いポイントは大きく2点あります。

①パッケージのまま送れるようにした!

この商品は、定型外郵便物の規格サイズ内に該当するよう通常の製品より
大きく、また中のチョコレートが潰れにくい仕様になっています。
またパッケージの表面は切手を貼って郵送先が書けるようになっています。
つまりこのキットカットは箱のまま誰かに送ることができるのです。

なおパッケージの裏面にはメッセージを書ける欄があり、手紙のような機能も有しています。
したがって受験の応援メッセージをかけるため、
遠くに住むおじいちゃんやおばあちゃんが、孫へのエールをしたためて、
そのままポストに投函して簡単に送れる仕組みになっているのです。
なお、このキットメール発売以降、パッケージにメッセージを書き込める欄を設けた製品を多く見かけるようになりました。

➁郵便局に置いた!

ネスレジャパンは「棚取り」というメーカーが直面する極めて困難な課題を、郵便局とコラボすることで解決しました。

まず郵便局を販売箇所にすることで、販売チャネルの数を数万という単位で一気に拡大することができました。これにより、他の競合製品が存在しない、新たな売り場環境を作り出したのです。(この「キットメール」が、
郵便局の店頭に並んだ最初の「郵便関連製品以外」の製品だったそうです。)

また、郵便局というタッチポイントの性質上、普段スーパーやコンビニでお菓子を買わない層や、お年寄りの方にもリーチでき、新たな購買層を取り込むことができました。

郵便局でキットカットを置いたら人気が出るんじゃないかという仮説から生まれた「キットメール」は、
新聞やテレビ等でも大きく取り上げられ、広告費で換算して実に10億円以上のメディア露出効果を得たと言われています。
そして、冒頭でも申し上げましたが、アイデアが評価された本企画は
カンヌ国際広告祭「メディア部門」で日本で初のグランプリを受賞しました。
話題になっただけではなく、もちろん売上にも貢献し、ブランド価値を高めることにも成功、
以降、冬になると郵便局の窓口にキットメールが毎年並ぶ「風物詩」となりました。去年(2023)の施策としても、
5000を超える郵便局で「キットメール」が窓口の横で販売されていました。

2023年も郵便局の横に置いてありました。並んで手前に売られている、
ポチ袋が裏面についたお年玉キットカットも人気のようです!

まとめ

キットカットは今や世界100カ国以上で販売されていますが、最も売り上げが高いのは日本だそうです。
これだけ人気のあるキットカットの施策は、マーケティングのお手本と言えるようなお話でした。

つまり
市場にある課題を抽出して、適切なステークホルダー・アライアンスを見つけ出し、
自社商品と掛け合わせてアプローチを行っていく
ことが重要だという事です。

また、キットカットのマーケティング戦略からは、
自社の商品をどうとらえるか、
どのように使われているかを改めて分析してみる事が大切
という事を教えてくれます。

「お菓子」として捉えれば限定的な箇所にしか置けないキットカットを、「コミュニケーションを取る手段」だったり、
「相手を応援・ストレスから発散させるツール」と考えれば、
売り方、販売箇所、プロモーションの方法は無数に考えうるということを教えてくれます。

キットカットは、市場のニーズを、郵便局が持つニーズと掛け合わせ、
受験生、応援する人、郵便局が幸せになるビジネスを作り上げた例と言えるでしょう。

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