【詩】司書

  司書

表紙くらいしか汚れていない
誰も読まないビジネス書が
救うはずだった人生を
背負い込んでいる読書家たちが
増えていくのを目安に近づけ
図書館へ

人知れず焼かれ煙と化して
鼻腔をくすぐるはずだった
読む価値のない実用書に
挟まれ書棚に並んでいる
ノートをほんの何冊か
救い出すために
図書館へ

書庫であるという事実を除いて
知的な気配が少しもない
だだっ広い空間で
十年前のヒット曲を
口ずさむよう誰もに促す
壁掛けスピーカーのように残酷な
ノートをほんの何冊か
くすねるために
図書館へ

歩き出せ

眩しすぎる照明

醜い笑みで媚びを売る
肉屋のような司書

カビ臭さのかけらもない
風通しの良すぎる閉架書庫

ゲルハルトとハンス
新吉と信次の隙間

干からびた肉に似ているノートを
引け

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