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StreamsCharts x VSTATS 2024年第1四半期 Vtuberレポート - 視聴時間チャートに新王者が誕生

 本記事は海外のストリーミング集計サイト「Streams Charts」の記事を、許諾を得て翻訳・転載したものです(記事中で使用している画像は訳者が独自に翻訳し、注釈を入れたものです。元記事とは異なる場合があります)。
(敬称略)

 Vtuber業界はライブストリーミング業界と共に成長しています。2024年第1四半期では、全世界のライブストリーミング業界は全体的に成長したことは、Q1 2024 Global Live Streaming Landscapeの記事で解説しましたが、今回はVtuber業界の動向、最も人気のあるクリエイターおよびコミュニティを構成する要素について紹介します。

 Streams ChartsVtuber分析サイトVSTATSは、2024年第1四半期におけるVtuberの統計レポートをお届けします。 全Vtuberの総視聴時間から、Vtuberコミュニティがどのような人々で構成されているのかについて細かい情報までご紹介します。

Vtuberチャンネル全体の四半期ごとの視聴時間推移

 Vtuberは数年前からライブストリーミング業界に浸透しています。Vtuber業界は1つの例外を除き、2022年初頭から四半期ベースで一貫して成長してきました。2024年第1四半期には、Vtuberの視聴時間が4億321万時間となり、これは四半期ベースで過去最高の視聴時間です。前四半期と比較して、視聴時間は8%増加しており、これは2022年第2四半期以降での最大増加率です。

Vtuberのプラットフォーム別分布

 Vtuberと言えば、普通はYoutubeをイメージしますが、最近のデータを見る限りこの固定概念は崩れつつあります。様々な国のコミュニティがVtuberライブストリーミング業界に参入し始めたため、主にTwitchにおいて多くのVtuberが誕生しています。
 2024年2月をもってTwitchが韓国におけるサービスを終了しました。韓国語圏のVtuberは、世界で最も成長している地域の一つでありましたが、彼らは新たなプラットフォームを見つける必要に迫られました。

 Streams Chartsは、すべてのライブプラットフォームにおいてVtuberの大規模なデータベースを作成しました。どのVtuberが人気のあるライブ配信を行ったか、彼らのライブ配信はどのくらい続いたか、これらのライブ配信の同時視聴者数などを簡単に調べることができます。
 カスタムフィルタを使えば、特定の所属や国でVtuberを抽出したり、女性Vtuberだけを抽出して閲覧することができます。PROサブスクリプションの全特典はこちらでご確認ください。
(訳者注:本サイトは本当に高機能です。Vtuberやストリーマーのデータ分析を行いたい方には十分な価値があると思います。)

 CHZZKとAfreecaTVは、韓国において競合するライブプラットフォームであるが、この2つのプラットフォームにはまだVtuberの大きな波が押し寄せてはいません。いくつかのVtuberグループは両プラットフォームへの移行を発表しています。「AfreecaTVで最も視聴されたVtuber」のページをみればわかるように、ISEGYE IDOL(異世界アイドル)がAfreecaTVに、6人組のKPOPグループStelLiveがCHZZKに移行しました。視聴時間でみるとAfreecaTVがCHZZKに勝っているが、人数でみると、CHZZKで活動するVtuberの方が多いようです。

 TwitchとYoutubeは同程度のVtuberチャンネルを抱えているにもかかわらず、視聴時間でみるとYoutubeの方が遥かに影響力を有しています。最も人気のあるVtuberはYoutubeでライブ配信をしていることが多く、業界をリードするクリエイターは赤いライブプラットフォームにいます。一方、新進気鋭のVtuberはライブプラットフォームとしてTwitchに惹かれているようで、Vtuberのチャンネル数ではTwitchがYoutubeを急追しています。

Vtuberの性別・国籍についての内訳

 Vtuberは圧倒的に女性クリエイターが多い業界です。Vtuber業界は草創期から女性クリエイターがリードし、業界の優位を占めてきました。
 しかし、過去の四半期レポートを振り返ると、Vtuber業界の男性層が成長しています。コミュニティが多様化し、国際的に拡大するにつて、より多くの男性がVtuber業界への参加を希望しています。Vtuberのうち2%は「その他」のカテゴリーに属しており、これにはノンバイナリーのクリエイターやいわゆるバ美肉(女性のアバターやボイスチェンジャーを使用する男性クリエイター)も含まれます。

 最近のトレンドが示すように、日本はVtuberの独占状態を失いつつあります。日本はVtuberの本場であり、業界のトップクリエイターの多くが日本人ですが、本レポートの対象となったVtuberチャンネルの52.6%を占めるにすぎません。

 2023年のデータと比較すると、Vtuberコミュニティはアメリカと韓国で大きく成長しています。アメリカは現在、Vtuberコミュニティの16.8%を占めており、韓国は5.1%を占めています。タイやインドネシアからも多くのクリエイターが現れており、アジアのその他の地域もこの傾向に加わっています。興味深いことに、Twitchにおいてかなりの視聴者シェアを占めるドイツ・フランス・スペイン語圏の国々は、それほど多くのVtuberが登場していません。

2024年第1四半期における所属別のVtuber視聴時間シェア

 Vtuberの所属事務所を基準として、2024年第1四半期における全Vtuberの視聴時間データを集計し、所属別のシェアを算出しました。したがって上の図は、各事務所と契約しているVtuberの人数を反映したものではなく、どの事務所が最も影響力を持ち、どれだけの視聴時間を生み出したかを反映したものです。

 ホロライブプロダクションは依然としてVtuber業界における最大手であり、2024年第1四半期における全Vtuberの視聴時間のうち22.5%を占めています。次いでにじさんじプロジェクトが19%、ぶいすぽっ!が5.6%で続いています。以前のデータと比較すると、この三大事務所のシェアは長期間横ばいで推移しています。ホロライブはVtuber業界では誰もが知るブランドで、業界のトップクリエイターの多くがこの事務所と契約しています。

2024年第1四半期のトップVtuber(視聴時間順)

 2024年第1四半期に最も視聴されたVtuberは、にじさんじの叶叶ちゃんねる)でした。2018年にデビューした叶は、にじさんじ所属として成功を収め、近年業界のトップに躍り出ました。彼はこの四半期でTwitchとYoutube合わせて1,033万時間の視聴時間を記録し、他の人気クリエイターを引き離しました。
 Kanae Channelは彼のYoutubeにおけるチャンネルであり、TwitchとYoutubeの2つのチャンネルを行き来することで、両方の視聴者にアピールしています。このVtuberは、この四半期においてTwitchにおいて他Vtuberをはるかに上回る配信時間を記録しており、Youtube Liveの集計も含めると、業界で最も勤勉なVtuberの一人として群を抜いています。

次いで、ホロライブの兎田ぺこらPekora Ch. 兎田ぺこら)が952万時間の視聴時間を記録しました。ぺこら自身が絶大な人気を誇るだけでなく、ホロライブのさまざまなコラボレーションやイベントによって、常に新しい視聴者を獲得しブランドを成長させています。ぺこらは2024年第1四半期において配信時間を大幅に増やしましたが、それでも平均視聴者数を伸ばすことに成功しました。彼女が業界トップのVtuberでないことは稀であり、来期もトップの座に返り咲くことを目指すに違いありません。

 にじさんじの葛葉Kuzuha Channel)がYoutubeで819万時間視聴され、3番目に人気のVtuberとなりました。叶の前に男性Vtuberで最も視聴されていたのが彼でした。ここ数年においてトップVtuberは女性が多く、葛葉以外の男性Vtuberがトップ3に入ることはほとんどありませんでしたが、2024年第1四半期は、視聴時間トップ10のうち4人が男性Vtuberという異例な結果となりました。

 Neo-Porteの柊ツルギHiiragi Tsurugi)は434万時間Admiral Bahroo398万時間で、それぞれ前期から順位を落としました。Admiral BahrooはアメリカのTwitchストリーマーで、1月に行ったロングマラソン配信により視聴時間の大半を稼ぎました。一方、柊ツルギさんはVtuber業界への新規参入者です。彼は2023年9月にデビューし、瞬く間にトップ層へと駆け登りました。彼は「ストグラ」で他のVtuberとのロールプレイでの掛け合いや、ゲームやコミュニティのコラボイベントに参加したりすることで人気を獲得しました。

 残りのメンバーのうち、Vshojoのironmouseとぶいすぽっ!の橘ひなのTachibana Hinano)を除いた全員がホロライブ所属のVtuberです。ホロライブはVtuber業界において圧倒的な強さを誇っており、4位の博衣こよりKoyori ch. 博衣こより - holoX -)、5位のさくらみこMiko Ch. さくらみこ)、7位の大空スバルSubaru Ch. 大空スバル)も兎田ぺこらと同じホロライブの所属です。これらのVtuberは、橘ひなのを除いて視聴時間ランキングの常連です。橘ひなのは今回ランクインしたクリエーターと同様に、複数のプラットフォームでライブ配信活動を行っており、両プラットフォームでの存在感が彼女の視聴時間を大きく押し上げました。

2024年第1四半期のトップVtuber(平均視聴者数順)

 視聴時間によるVtuberのランキングは、短時間で視聴者が多いライブ配信をするVtuberよりも、そこそこの視聴者数で長時間のライブ配信をするVtuberに有利な指標であるため、必ずしもVtuberの人気をそのまま表すとは限りません。そこで上のチャートでは、Vtuberを四半期全体の平均視聴者数によってランキングしました。また、短時間の特別なライブ配信によるランキングへの影響を避けるために、四半期において配信時間が50時間未満であったVtuberは除外しています。

 このチャートにおいては、同じくホロライブ所属の宝鐘マリンMarine Ch. 宝鐘マリン)が平均視聴者数3.47万人でトップでした。彼女のYoutubeチャンネル登録者数は313万人を超えており、高い人気を誇りますが、彼女は第1四半期においては不定期かつ短時間のライブ配信を行っていました。こうした配信傾向により、多くのファンがマリンのライブ配信がある時にリアルタイム視聴しようと考え、彼女の平均視聴者数を押し上げたのかもしれません。また、彼女はYoutube Shortsを効果的に活用しており、ショート動画を通じて新たなファンにアプローチしています。

 チャートには宝鐘マリンに続きホロライブのVtuberが続々と登場し、ホロライブを支えるクリエイターの人気の高さが浮き彫りとなりました。湊あくあAqua Ch. 湊あくあ)、戌神ころねKorone Ch. 戌神ころね)、獅白ぼたんBotan Ch. 獅白ぼたん)は、ホロライブ所属のVtuberであること以外に共通点があります。もしもこの3人が四半期を通じてもっと配信していたら、他のチャートにもランクインしていた可能性が高かったでしょう。

 そのような中、さくらみこは平均視聴者数を伸ばすことに成功しました。平均視聴者数は3.29万人で、前期比で21%の伸びを記録しました。この四半期において彼女は他のホロライブVtuberと積極的にコラボを行い、常に多くの視聴者を惹きつけました。

2024年第1四半期の新規フォロワー数上位のVtuber

 最後にVtuber業界のリーダー達ではなく、新たな血に目を向けてみましょう。Dokibirdは今期最も急成長したVtuberで、3か月間で41万5000人以上の新規登録者数を獲得しました。このカナダ人クリエイターは、ライブ配信にて常に多くの視聴者数を誇示している訳ではないが、ライブ配信、Youtube動画、Youtube Shortsを効果的に組み合わせ、第1四半期においてチャンネル登録者を数倍にも増やしました。
 Dokibirdは以前、NIJISANJI EN所属の「セレン龍月」として活動していましたが、不遇のうちに契約を解除され、セレンとしての活動ができなくなりました。彼女は2月上旬にDokibirdのアカウントで復帰し、復帰配信において12万7000人もの最大視聴者を獲得しました。

 もう一人の英語圏のVtuber、アメリカのFilianは、この四半期において2番目に急成長したクリエイターです。彼女のYoutubeチャンネルの新規登録者数は18万人を記録しました。Filianは2024年第1四半期中はTwitchにおいてほぼ毎日ライブ配信を行っており、彼女はライブ配信から切り抜いた動画をYoutube ShortsやYoutube動画として投稿してコンテンツを盛り上げています。

 3位はタイのNongHanging (น้องห้ะหงิง) で、彼のYoutubeチャンネルの新規登録者数は16万400人を記録しました。彼は2024年第1四半期だけでチャンネル登録者を3倍以上に伸ばしており、Youtubeのアジア圏で最も急成長したコンテンツクリエイターとなります。他のVtuberとは異なり、NongHangingのアバターは王冠をかぶった犬であり、多くのVtuberが愛用するアニメルックのアバターとは大きく異なっています。

 AKA Virtual所属のハリス・ケイン(Harris Caine【AKA Virtual】)が僅差で続き、四半期中に15万1000人以上の新規登録者を記録しました。このVtuberは、昨年末にロールプレイングのコンテンツで人気の波に乗り、2024年を通して成功を収め続けています。この2人は、タイとインドネシアがVtuber業界にとって現在最も重要な新興市場であることを示しています。

 キルシュトルテキルシュトルテ / VTuber)は、今期日本において最も成長したVtuberでした。新規登録者数は15万5000人で、今最も勢いがあるホロライブのVtuberを抑えてトップとなりました。Youtube Shortsを中心に急成長しているクリエイターの一人で、第1四半期の総再生数は7200万回を超えました。

 ホロライブの火威青Ao Ch. 火威青 ‐ ReGLOSS)と宝鐘マリンはそれぞれ15万人と14万人の新規登録者を記録しました。前者はホロライブの新ブランド「hololive DEV_IS」最初のVtuberで、ReGLOSSのメンバーとしてデビューしており、2023年9月のデビュー以来大きな成長を遂げています。

 コロンビアのEmikukis14万7200人の新規フォロワーで7位にランクインし、スペイン語圏の視聴者にアピールする唯一のVtuberとなりました。猫町アケミAkemi Ch. 猫町アケミ【AKA Virtual】)と兎彷魂あみゅ兎彷魂あみゅ Amyu Ch.)は、「○○ Ch.」というチャンネル名のひな型を採用していますが、両者ともホロライブ所属のVtuberではありません。猫町アケミは日本企業が運営し、インドネシア語圏で活動する「AKA Virtual」の代表的なVtuberです。

 Streams ChartsとVSTATSは、今後も共同でVtuberについての動向をレポートしていく予定です。この記事についてのお問い合わせはジェネリック集計人 (Xアカウント @Holo_Data)までお願いします。

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