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【cEDH】Blue Farmのデッキ解説

はしがき

本記事でBlue Farmについて紹介する。短期戦から長期戦まで全てのレンジで戦える最上位のデッキということは周知の事実だが、"なぜ?"の部分が余り語られていない。私自身、いつかの神決でBlue Farmを使って予選を突破し、LED芸人の地位を獲得したものの、解説記事は書いていなかった。そんなある日、話の流れで同神決でBlue Farmを握って神になったタカハシさんからリプライが届いた。

いつか気が向いたら書こうとは考えており、執筆許可も下りたため(?)これを機会に書くことにした。前半のプレイングを含む項目は無料。それ以降の枠紹介とマナ基盤は有料設定とさせていただいた。ご購入していただければ幸いだ。

Blue Farmとは?

《織り手のティムナ》と《ルーデヴィックの名作、クラム》の緑抜き4C共闘。その中でも最も人気なのが軽量マナ加速から一気にT2, 3あたりで《むかつき》を唱える短期プランを持っているBlue Farmだ。初動で勝てなかった場合はこれらの軽量マナ加速から統率者を唱え、中期以降のプランに切り替えられる。このプランの豊富さがBlue Farmの強み。しかし、プレイヤーにはこれらのプランを的確に選択する力が求められ、乗りこなす難易度が高い構築となっている。

1枚1枚のカードが強いため適当にプレイしても勝ててしまうマッチアップや展開もある。しかし、大規模な大会で勝ち越すとなると常に自分が進行中のプランを把握できていなければならない。現にEMINENCE GAMINGのデータベース上でティムクラ(全てがBlue Farmかは不明)の大会エントリー数はNo. 1だが、勝率は25%以下というデータが出ている。ティムクラ4人卓でティムクラが勝ってもティムクラの勝率が25%になるため数字自体は鵜呑みにできないが、勝てる側のティムクラになる必要があることは間違いない。

プレイングに自信がない場合は一旦勝ててしまうデッキから離れて練習するのも良いだろう。個人的には先日紹介させていただいたトラティムなんかがオススメだ。

なぜBlue Farmを選ぶのか?

プランが豊富だとわかったところで、なぜBlue Farmを選ぶのか?他にもプランが豊富な統率者は無数に存在するが、Blue Farmのように"両"統率者で手札補充ができ、且つ多彩な勝利手段を有した統率者はほとんどいない。この手数の多さが人気理由の1つだろう。
デメリットはヘイトが高い点で、目の敵にされる場合もある。しかし、同卓にBlue Farmが複数いれば関係なく、集中砲火にしても参加しなかったプレイヤーが勝つだけで根本解決にはなっていない。苦手な相手は初速がBlue Farmより安定しているログ系と善人面しているコントロールの2種類。Blue Farmは卓のレベルが高ければ高いほど強さが浮き彫りになってくる統率者と言えるだろう。

"両"統率者で手札補充

「アドバンテージを稼げる統率者は強い」とはよく言われるが、Blue Farmは他のアドバンテージを稼げる統率者よりもう一段階強い。アドバンテージを稼げる統率者が2体おり、《むかつき》を意識して採用されたマナ加速をそれら統率者に注ぎ込み、注ぎ込んだ分だけアドバンテージに変換できる。そのため、無駄なく幅広いゲーム展開に繋げられるのだ。これ故にTier上位には《むかつき》を有するアドバンテージを稼げる統率者がよく選ばれている。Blue Farmの場合は初動でMV5のクラムに届かなかったとしても、MV3のティムナで段階を踏む選択肢も与えられている。

多彩な勝利手段

勝利手段は《むかつき》と《死の国からの脱出》がメイン。前者が失敗したら後者を狙う流れが基本。おまけとして隙があれば《タッサの神託者》コンボを狙う。これらの勝利手段が優れている点は刺さる妨害が散っている、おまけにいずれもクリーチャー除去が効かない点。妨害札が1,2数枚あったところでいずれかのコンボ、もしくはティムナクラムのアドバンテージ稼ぎが止まらないのだ。

《むかつき》

上振れが必要な大会のお供。

ログ系の次に強い赤有り《むかつき》。赤黒がある時点で安定感は申し分ないのだが、《断れない提案》も足されて更に安定感が増している。メインで唱えて勝てるようにデッキのMV総量は土地29枚で120前後が目安。テンポの重要性が以前にも増して高くなっていることもあり、cEDH環境で強いカードを順番に入れていけば勝手に軽くなる。特にティムクラはカードを引いて手数を稼げるため、MV3以上の重めなカードを打ち消されてテンポ損するリスクを背負う必要がない。

《死の国からの脱出》コンボ

見た目以上にコンパクトなコンボ。

EDHの最強コンボ。《ライオンの瞳のダイヤモンド》と《思考停止》からの対戦相手ライブラリーアウトか《タッサの神託者》コンボで〆る。本コンボが強いのは《死の国からの脱出》がエンチャントのおかげで比較的通りやすい上に、墓地からコンボパーツ以外の呪文も唱えられるようになる点。パーツが揃っていなくてもサーチが落ちていれば揃えられ、余裕があれば打ち消しまで唱えられるようになる。ジェスカイカラーを有しているため、墓地枚数次第では《直感》1枚から揃えることも可能。

《タッサの神託者》コンボ

お守りコンボ。

いつもの。基本的に通らないため積極的には狙わない。ただ、押し込めそうなタイミングがあれば狙う。具体的には1,2番手を取れて2キルできる時や卓に青が少ない場合。誰かがコンボに失敗した直後にTutorから狙うのは悪くないだろう。詳細はマナ基盤の項目に記載してあるが、《魂の洞窟》を採用することによってプレイの幅が広がる。

プレイング

プレイングはありとあらゆる要因で変わるため、正解のプレイングは書けない。そのため、これまでの構築記事では書くことを避けていたのだが、今回はせっかく要望もあったため、最低限押さえた方がよいポイントだけは記載する。「こんなことを考えながらBlue Farmを回している人もいるのか〜〜」程度の気持ちで読んでいただきたい。

キープ基準

Blue Farmは他の統率者以上にキープ基準によって勝率が左右される印象がある。1対1フォーマットではないため、ある程度激しくマリガンしてしまって良い。経験上、中途半端な初手をキープをするよりも初手が4枚になるまでマリガンしてしまった方が勝てる。甘えた初手でキープするよりも《むかつき》で勝つなり、アドバンテージ基盤を整えたほうが強い。以下が私が意識しているキープ基準。

狙いたい初手ランキング

初手にあると嬉しい特殊勝利カード。
  1. ~T2《むかつき》(1,2番手の場合に限る)

  2. ~T2《リスティックの研究》

  3. T1《神秘的負荷》+マナファクト(墳墓->MV2ファクト->レモラも含む)

  4. T1《ルーデヴィックの名作、クラム》T2《織り手のティムナ》

  5. T1クリーチャーT2《織り手のティムナ》

  6. T1《エスパーの歩哨》

  7. T1《織り手のティムナ》

  8. T2《ルーデヴィックの名作、クラム》

  9. T1《神秘的負荷》

対戦相手や《激情の後見》の有無等で細かい変動はあるが、大体のランキングはこの通り。1,2番手の場合はまず《むかつき》狙う。通らなければ通らなかったでヘイトは下がり、統率者によるアドバンテージ確保プランに移行するだけで問題ない。3,4番手の場合はほぼ通らず、アドバンテージ確保プランに移行するにしても遅れを取り戻せないリスクが高いため、積極的には狙わない。この場合《むかつき》はバックを探しながら誰かが走った後のタイミングを狙うことになる。
《むかつき》以外はいずれもアドバンテージ基盤の獲得が狙いとなるが、クリーチャーに頼りすぎると全体除去等で引っ繰り返る裏目があるため優先度はやや低め。ランキングには記載していないが、3,4番手の場合は《波止場の恐喝者》がキープ基準に含まれることが多々ある。

序盤のプレイ指針

キープ基準からわかるように、序盤は上振れ勝利かアドバンテージを稼ぐ準備の2択

  1. 上振れ勝利
    1,2番手で且つバックが1枚でもあれば走る。バックがなければ対戦相手の動きに注目して判断する。対戦相手がタップアウト且つアドバンテージを稼げる良さげな動き出しをした場合、高確率でバックまでは揃っていないためほぼ通る。一方でマナが起きていたり、統率者が唱えられている場合は注意が必要。マナが起きている場合は高確率でTutorを構えているだけなので唱えられるタイミングを待つ。統率者が唱えられている場合は《激情の貢献》が構えられている可能性があるため、打ち消された後の展開を考えて動くかどうか判断する。非青は無視で良い。

  2. アドバンテージ稼ぎ
    確率的にほとんどの場合はこちら。継続的にドローできる盤面を構築することを目指す。ティムナは強いのだが、1度除去されると次はMV5と許容し辛い重さになってしまう。そのため、最低限でも着地させたターンには他クリーチャーで攻撃してドローできるようにしたい。ティムナドローについて補足しておくと、ドローが目的のコンバット時には素直にブロッカーがいない相手を殴ったほうが良い。ブロックする選択肢を与えてまで僅かなライフを詰めるメリットはほとんどない。ブロッカーがいる相手を攻撃する場合は対戦相手全員がブロッカーを所持している、もしくはブロックされて相打ちになった方が後々有利な展開になると判断した場合のみ。

中盤以降のプレイ指針

序盤で勝てなかった場合は如何にカードを引き続けられるかに掛かっている。《リスティックの研究》はティムナよりも除去されづらいエンチャントである点に加え、引ける量も多いため優先度が高い。過剰なクリーチャー除去も受けられるようになる。
アドバンテージ基盤が整ったあとはリーサルタイミングの判断。他の誰かが走ってくれると楽なのだが、これが難しい。一番最初に動いてもほとんど通らないため、工夫が必要。具体的には下記を意識すると良い。

  1. 押し通すためのバックを確保する

  2. 通らない原因となっているプレイヤーを妨害して打ち消しを吐かせる

  3. 通らない原因となっているプレイヤーのライフを詰めて構える余裕を奪う

  4. リーサルできるプレイヤーのライフを詰めて走らせ、妨害を吸わせる

1.が真っ先に目指すプラン。《堂々たる撤廃者》がゴールになることが多いが、打ち消し等のバックを掻き集めることももちろんある。ただし、"確保する"と"吐かない"は別のことなので注意。自分が最もカードを引けているにも関わらず、誰かの動きに対して妨害を吐かなければ他のプレイヤーも吐かない。すると結果的に対戦相手の打ち消し総数は減らないどころか、他の誰かがより優位となり、相対的に不利な展開となる。吐いてもまた引けば良いのでバック用の打ち消しは吐くべきときには吐く。抱えたい場合はクラムの誘発に合わせてTutorで妨害をサーチする等して持っていないことをアピールする必要がある。
2.は基本1対1交換になるためEDHでは不利な動きとされているが、アドバンテージ基盤さえ整っていれば無理なく取れる選択肢となる。1.用の打ち消し等も合わせて圧力を掛ける。無闇に吐かせると他プレイヤーが勝つ展開になりかねないため加減が重要。
3.4.はご覧の通りコンバットに関するもの。コンバットのセオリーとして「《むかつき》の黒を殴る」というものがあるがこれは初歩。中盤以降は自身が有利になるためのコンバットを心掛けたい。

土地の並べ方

Blue Farmで最も頻繁にサーチする土地は《Badlands》と《Tundra》の2枚。デュアラン2枚で4色揃える組み合わせとして《Underground Sea》《Plateau》ペアもあるが、《Badlands》《Tundra》ペアの方が優先度が高い。ゲーム序盤で《タッサの神託者》コンボが揃った場合や、《暗黒の儀式》を経由して《むかつき》に繋いで(U)を構えたい場合等、(U)と(B)は別々に分けておきたい場合が多い。また、構える展開になった際に《Tundra》1枚で打ち消しと《沈黙》の両方を構えられるようにしておきたい意図もある。

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