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「四季方丈」装丁・各話注釈


短編集なので、お好きなところからどうぞ~
目次から任意の話の注釈に飛べます



表紙

紙: 富士わら半紙

オールドブラッドバリーというお皿のイメージ

描いた植物はドウダンツツジ、ジューンベリー、ヤマタチバナの3種。花言葉はそれぞれ段階の意味も汲んだ
咲いたのは「明日の幸福」(ヤマタチバナの花)
実るのは「穏やかな表情」と「幸せをもたらす」(ジューンベリーの実)
咲かないのは「思いを受けて」と「別れ」(ドウダンツツジの枝)

英題の ‘a dish of the seasons’ は表紙の一皿にさまざまな季節の料理が装われるイメージで付けました。この本を総括する一皿


表紙裏は月の数字


遊び紙

紙: トレペグレー

親愛ストの自分の正体が曖昧なネロのイメージで霧のような紙を選んだ

ちなみにこの次のページの見開きのベタは、インクがボルドーの予定だった頃に思いついたものです。内腑のイメージというのか、料理が膜であるネロを表現したものでした

 ここから本文に入ります

光る葉の

ピクニックに行くという子供たち(リケ、ミチル、シノ、ヒース)にバゲットサンドを作る話

 日差しや若葉に照り返すうれしそうさが輪をかけて輝いていくように思う季節。
 夏はすぐそこまで近づいている。

《注釈》
・玉ねぎは春の新玉ねぎのイメージ
・月光樹の実は酸っぱい。ゲーム内ではコンポートの材料になっていたので、ピクルスにもできるだろうと

何気ない日常の話を最初に持ってきたかった。「行ってきます」という言葉が使われる場所にネロがいることをここで書いて、「頂きの」や「花笑う」につながるものがあるように


幾度ある

リケとサンダースパイスの実採りをする話

その充実。教えられ、与えられて、あげられるものはきっともう数えるほどのものだけになっている。

《注釈》
・この作業は山椒の実採りのイメージ。新鮮なうちの方がやわらかく取れやすいので、ネロは魔法舎に帰ってきてすぐ広げている
・季語: 風光るの表現
・メインストーリー18章6話のパンプディングの前提
・数えられないほど多い=幾度ない ならば、
 数えられるほど少ない=幾度ある になるなという

リケがどんどん成長していくことに、ネロはうれしさとさみしさを感じるのではないかなと。それを自分で分かってて、さみしさの方には目を向けないでいるのがネロだと思って書いたものです


番外編「幾度ない」

数年後にまた、リケとネロがサンダースパイスの実採りをする話

 僕の見つけられる場所にいつもいてくれる。
 だから、この時間ではじめられる僕の夏が、僕は好き。

「幾度ある」に対するリケのアンサーのようなものを書きたかった。これから数えきれないくらいネロと時間を重ねていきたい、いくのだろうという明るい展望の意味で「幾度ない」とした。

「助けが必要なことと、1人でいいことはちがいます」がコア。子供から大人に向けて言いたい言葉。

シャイロックに師事した世界線のリケは、ネロがどういうふうに自分の隣にいてくれるのか分かった上で、一緒にいたいということを上手に伝えられそうだな、という


頂きの

シャイロックと、シャイロックの昔馴染みの野菜に恋をしているシェフのフルコースを食べに行く話

もうないと思っていたことごとが起こる日常の中心に、あのキッチンがある。

《注釈》
・メニューはパリの三つ星レストランの「アルページュ」のイメージ

シャイロックとなら、恋しさについて「『帰ろう』と思う場所のことをそう呼ぶこともあるのかも知れなかった」と思えるぐらいにはかたくなでなくなりそうだなと。バーテンダーってそういう引力がある気がして

透く光

器の衣替えとミントシロップを作る話

氷を当てておいたのでつめたい。甘い、と美味しそうに食べる陽ざしの暖かさをした頭を撫でた。

・william Carlos Williamsの ’This is just to say’のイメージ。つめたく冷やしたプラムを食べる茶目っけのある詩
・器の衣替えは実際の料理店でもよく行う

定食で例えると香のもののような、軽めでさっぱりした話を挟みたかった


遠来の

エッグベネディクトを作るネロと、ファウストとの散策から帰ってきたレノックスが奇跡について話す話

側にいる、たったそれだけのことが奇跡になることがある。

《注釈》
・ネロ→レノへのBDボイスに、静かさがいいというのがあったのでそれをベースにしてみた関係値
・散策のイメージ曲は「さよならの夏
・作っているソースはオランデーズソース。レモン、バター、卵黄、胡椒で作るもの
・レモンは夏に採れるマイヤーレモン。円錐でなく丸型をしてる

・挿絵には「Amari」と書いた。余ったレモンでシロップを作った設定

レノは側にいることの奇跡をいちばん実感として知っていそうな人だなと思っていたので、ネロと会話してほしかった。個人的に雨はレノのイメージ。カエルのエチュードからかな…
別でこの2人の散策の様子を書いているので、また機会があれば載せます


実に口実

喧嘩をしたシノとヒースのために、きっかけとなるホールケーキを焼く話

1人で食べ切るには多く、2人で切り分けてしまうには小さい。2人が言葉を交わしながら、少しずつつつくのに良い大きさ。

《注釈》
・ケーキはビクトリアケーキのイメージ。西はイギリス含むヨーロッパっぽい食文化のイメージでいる

・挿絵は仲直りの花。ヒースの花瓶

東の、家族のようなタイミングの良さってある…と思いこのラストに。誰が来ても良さがあるので敢えてぼかしました


心有り

ブラッドリーとネロが屋根の上で麦酒を飲む話

「なあ、相棒」
それだけの言葉で攫われて吹きかえす夏が、鼓動に流れ込んでくる。

《注釈》
・2022 7/25の熱砂のイベントのログストより

ネロのブラッドリーに対するどうしようもなさは夏と相性が良さそうだな~と思っていた。夏にいると暑くて耐えられないと思うのに、夏じゃないときに思う夏はただ眩しくていいなと思うところが


酒落ちる

カンペッジオ後、フィガロとネロがアイスクリームを食べながら「本心」ということについて話す話。二部前

思いがけないその不確かさに打たれた。いつか沈めてしまった自身を探し出せないでいるような海の底の声。

《注釈》
・カンペッジオネロのカドストより、その後日談として

フィガロは南で暮らす間に人と食べることが当たり前になっていたらいいなと。そこに思い当たれないでいるフィガロも書きたかった。


客三客

器の衣替えで発掘したティーカップをきっかけにラスティカとオーエンと茶会をする話。

「目を気にしていたから。素敵だね。離れていても互いが分かるというのは」

《注釈》
・南の食文化は開拓時のアメリカに近いイメージなので、サンデーは南の食べ物ということに
・ラスティカを描写した「日差し色」「満月」は「太陽と月に愛された人」を踏まえて

西に振り回される北と元北が見たかった。ネロは事情より心情に訴えるほうが効くだろうなと


末に花

ネロとファウストが魔法舎の森で晩酌でない晩酌をする話

 新鮮なかんじがした。
 木漏れ日の加減、そよがせる風、葉の音。いちばんは明るさだった。こんな時間にこんなふうに会うことはなかった。

《注釈》
・チョコレートコスモスは、実際にチョコレートっぽい香りがする
・ファウストの「なんでもないよ」はもらった花に対して色々思いをかけるネロが微笑ましいな、という感情

2部のファウストの書にあった喉をそらして笑うネロの描写がすごく好きで、その対比みたいにファウストの指先を描きたかった
シノとヒースに対する2人の関わり合い方も好きだな~と


雨施す

バンケット後、レノのフルコースについて意見を求められるネロの話

 鍋をかきまぜる手のつよくでた節のかんじ、並んで分かる、歩くことの上手そうな軸の揺らがなさ。
 そうして1人をずっと探していたからだ。

4周年の「ファウストを探す間の道にも幸福はあった」のレノがすごくいいな、と思っていたのでそこにスパークリングを重ねてみたお話。
最後の「よく似た丁寧さを〜」はファウストのこと


朔風

早朝、鍛錬組にベーコンエッグのパンケーキを作るネロと、それを見にきたオズの話

誰かのための料理をする。そのことを知る温かさのまなざしに気づいてる。

この2人には「誰かのための料理」をしてきたという共通項があるな~と思い、隣で料理をしてみてほしかった。寒い日に北のことを思い出すのは北出身の人にはよくあることではないかなと

挿絵には「for Arther from Oz」と書いてある


いだす君

夕食を食べそびれたクロエとポタージュを作る話。2部後。

憎むと愛す。許すと恨む。いつだって難しい方を選んでいけるのは、それがいちばん近くで見ていた人の当たり前だったから。

《注釈》
・「どの国も末っ子が〜」のとき、ボスはネロの思考外
・2部の「太陽も月も全部あげる」のクロエより

2周年で師弟関係になることを「午睡の夢」と表現したブラッドリーとネロの会話をベースに、師弟関係を結べているクロエとラスティカに対するネロの思いを書いた。


続く日の

リクエストシート(付録)でガレットを注文したファウストとネロの会話のみの話

「今日のもおいしいよ」
「よかった。隠し味、当てられる」

《注釈》
・前回の会話のみの話↓の後日譚


・最後の数字を言いあうのはThe greatest showmanの「The other side」のオマージュ
・1月はファウストの誕生月なので、それきっかけでリクエストシートを置きはじめたという裏設定

・挿絵には「先生大変だ!」と書いてある


仰ぐ石

真夜中に寝られないでいるネロがあたたかい飲みものを作りながら盗賊団の頃を思い出す話

灯る火、喧騒、人声ーー並べる肩。
もう二度と過ごすことのない日々を思っている。

《注釈》
・2部の「あんたのために死ねるよ」より
・黒い石は2周年の幸運の指輪のこと

ネロの瞳の色は焚き火にあたるときれいだろうなというところからそこに柑橘のシロップを重ねてみたお話。
目を閉じたときに残る色って大抵思いがけない色をしていると思う


芽の咲く

ネロが芽野菜の調理をしつつ、響いた銃声と雪解けについて考える話

茹でるのほんの少しの時間でいい。冷たいような透明のかんじをふつふつと煮たてていく。

《注釈》
・野菜はそれぞれふきのとうと新じゃがいものイメージ

魔法使いは心で魔法を使うから、記憶や感情を腐らせることはないのかなと。それと雪解けを重ねてみたお話。
しょうもない喧嘩をすることで普段通りを確認しようとする回りくどさが元相棒にはあると思う


花笑う

卵サンドとミモザと、また巡る春の話。

それだけで太陽のような黄色の花びらがキッチンの至るところに光っている。窓際のボトルに、ミルクピッチャーに、シンクに。

《注釈》
・若干「幾度ある」と「頂きの」の続き
・最後なのでタイトル回収の部分も
「ここからここまでの自分」=方丈
「また巡る季節」=四季
・料理をする人には、自分の作るものが実質的な影響を人に与えるという自覚があるものだと思う

詳しくは同封したあとがきの方に。


付録

・パンフレット(A4)

カレンダーにしようかなと思っていたもの。家のプリンターではA4が限界なのでデザインを楽しむペーパーに。カレンダーはもしまた機会があればネップリでA3にして配布もいいな~と思ってます

・メニュー(大判ハガキ)

お店のメニューっぽく、料理名と使った食材を書き込んだもの。右の数字はその料理が出てくる月

・カード2種

それぞれ「先生大変だ!」の焼きたてパンと「同じ視点で見ていた」の3人で食べたサンデーのモチーフ

少し見にくいので拡大

・ステッカー(6cmダイカット)

表紙のお皿を切り抜き


・リクエストシート

せっかくなら読めた方がいいなということで反転せずそのままに. Yourがポイント


さいごに

この本でネロと料理と四季を書くのがほんとうに楽しくて、際限なくお話が浮かんだので初期の想定を大幅に超えたボリュームになりました。
仕様上60ページに収めなければならなかったので入れられなかったものがたくさんあります。
(例: カインと1からベーコンを作る話、ヒースとタンジェリンを練り込んだパスタを作る話、シノとレモンパイについて話す話など7編ほど)
またどこかで公開したり、続編として本にしたりできたらな~と思ってます。

あらためまして、この度はお手にとって頂きありがとうございました!


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