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【12月のAudible読書メモ②】


『三十の反撃』ソン・ウォンピョン

1988年ソウルオリンピックの年に生まれ、三十歳になった非正規職員のキム・ジへ。
88年生まれに一番多い名前「ジヘ」と名付けられた彼女はその名の通り、平凡を絵に描いたような大人になっていく。
大企業の正社員を目指すジヘの前に現れたのは、同じ年の同僚ギュオク。
彼の提案する社会への小さな反撃を始めることになったジヘは、自信を見つめなおし、本当にしたかったことを考えるように。
そして、ついに「本当の自分」としての一歩を踏み出すことになるーー。
世の中という大きな壁と闘うすべての人に贈る、心温まるエール!第5回済州4・3平和文学賞受賞作品。

Amazon Audible HPより

私が日本語教師を始めたころ、クラスにはたいてい5,6人の韓国の学生がいた。日本語と文法が同じ膠着語(こうちゃくご)とあって、彼らの会話力の上達っぷりには目を見張るものがあった。そのおかげで韓国のいろいろな話を聞くことができて、今でもよく覚えている。

そんな彼らと、この物語の主人公を重ねながらストーリーを追っている自分がいた。また、映画『パラサイト』で見た半地下や映画の中で格差の象徴として目に焼き付いていた階段を思い出した。この物語では、椅子についての描写が印象に残った。

アルバイトをしながら、日本語学校で勉強する生活は決して楽なことではないと思うが、当時クラスにいた韓国の学生は一様に、「それでも今のほうがいい。やりたいことができる」と言っていた。

あの時の彼らが、この物語に出てくるジヘのように本当にやりたいことができているだろうか。そうであってほしいと願わずにいられなかった。

この物語はいろいろな軸で楽しめると思う。
・ジヘたちの社会への小さな反撃
・ジヘを見守り応援してくれる温かな愛情
・本当にやりたいことへの心の軌跡
・大事な場面で出てくるジャズ

読後は、とても清々しい気持ちになり、前向きになれる、そんな物語だ。

『スモールワールズ』一穂ミチ

夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。

Amazon Audible HPより

6篇の短編からなる連作集。
いずれかの話に出てくる登場人物が繋がりを持っていて、象徴的な物や場所に込められたメッセージと喜怒哀楽、すべての感情を刺激される。

「ネオンテトラ」
すべての話を聴き終えてからもう一度聴くと、ラストの部分に驚きや恐怖やこのタイトルに込められた意味を考え何とも言えない気持ちに。また、この話の主人公の職業との関係も考えながら読むと「ネオン」「光」の持つ意味と別の短編とのつながりにうなってしまう。

「魔王の帰還」
身長188cm足のサイズ28cmの豪快なお姉さんの繰り出す爽快なお話に笑いがとまらない。けれども最後はホロっとなる。

「ピクニック」
二重になっている話の最後にぞっとなる

「花うた」
書簡のやりとりだけで構成された話。日付と差出人の名前、二人の間で交わされる手紙の中の文体の変化や相手への気遣いが生まれ始める内容にグイグイと引き込まれる。パズルのピースのくだりで、彼の時間を戻せたらどんなに良かっただろうと思った。最後に出てくる彼が作った「お話」に切なさがつのる。

「愛を適量」
適量って難しい。そして、子どものこと、自分のことに適切なタイミングできちんと向き合うことの大切さを教えてくれる話。

「式日」
「式」と名の付くものは、前へ進めるための大切なステップであると改めて思わされる。孤独で傷ついてきた「後輩」が過ごしてきた場所や「先輩」との交流を通して生きた道を想い、この式で少しの自由を手に入れることに救われる。物語の最後に出てくるとある場所のところまでくると、もう一度この短編集の1話に戻って読みたくなる。

何度か聴き返し様々な視点で思いを巡らし、その度に新たな気づきを得る深い作品だった。

『読書脳』樺沢紫苑

AI時代こそ、「読解力」で差がつく。
精神科医・樺沢紫苑の「読み方」大全
「思考力」「記憶力」「判断力」――すべて読書が授けてくれる。

「本を読んでも、すぐに内容を忘れてしまう」
「せっかく読書をしても、記憶に残っていない」
「凄くおもしろかったのに、少し時間がたつと内容が思い出せない」

「読んだのに覚えてない」という悩みは、いつの時代も不変です。
“読んだはず読書”にあけくれる「読書迷子」を救済するのが、
この本でお届けする、「記憶に残す、どんどん頭がよくなる読書術」です。

記憶に残らない「つもり読書」は、時間の無駄!
本書では、精神科医である著者が、脳科学的な裏付けのある方法を公開。
読書で得た知識をアウトプットする方法、
人とシェアする方法などを明かします。
「読書脳」を手に入れて、読書で人生を切り開きましょう。

Amazon Audible HPより

この本を読むきっかけをくださったのは、
miyako@50歳からの「考える生活」さん。

読んでよかった!
いつもはネタバレを気にしてさらっと書く読書メモ。
でも、それだとあまり記憶に残らない。

記憶に残らない「つもり読書」は、時間の無駄!
「速読」よりも「深読」
インプット、アウトプット、フィードバック
「テレビショッピング読書術」

『読書脳』より

少しずつ、何度も自分にしみ込ませたい。
miyakoさん、こちらの本を記事にしてくださってありがとうございました。


『三十の反撃』が良かったので、ソン・ウォンピョンさんの『アーモンド』が気になっている。まだ、Audibleにはなっていないようで、何度も検索をかけてしまう。その度にナッツのアーモンドが出て来て、アマゾンから「ナッツをお探しですか」とメールが来る。困ったものだ。


最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次のnoteでお会いしましょう。


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