【12月のAudible読書メモ②】
『三十の反撃』ソン・ウォンピョン
私が日本語教師を始めたころ、クラスにはたいてい5,6人の韓国の学生がいた。日本語と文法が同じ膠着語(こうちゃくご)とあって、彼らの会話力の上達っぷりには目を見張るものがあった。そのおかげで韓国のいろいろな話を聞くことができて、今でもよく覚えている。
そんな彼らと、この物語の主人公を重ねながらストーリーを追っている自分がいた。また、映画『パラサイト』で見た半地下や映画の中で格差の象徴として目に焼き付いていた階段を思い出した。この物語では、椅子についての描写が印象に残った。
アルバイトをしながら、日本語学校で勉強する生活は決して楽なことではないと思うが、当時クラスにいた韓国の学生は一様に、「それでも今のほうがいい。やりたいことができる」と言っていた。
あの時の彼らが、この物語に出てくるジヘのように本当にやりたいことができているだろうか。そうであってほしいと願わずにいられなかった。
この物語はいろいろな軸で楽しめると思う。
・ジヘたちの社会への小さな反撃
・ジヘを見守り応援してくれる温かな愛情
・本当にやりたいことへの心の軌跡
・大事な場面で出てくるジャズ
読後は、とても清々しい気持ちになり、前向きになれる、そんな物語だ。
『スモールワールズ』一穂ミチ
6篇の短編からなる連作集。
いずれかの話に出てくる登場人物が繋がりを持っていて、象徴的な物や場所に込められたメッセージと喜怒哀楽、すべての感情を刺激される。
「ネオンテトラ」
すべての話を聴き終えてからもう一度聴くと、ラストの部分に驚きや恐怖やこのタイトルに込められた意味を考え何とも言えない気持ちに。また、この話の主人公の職業との関係も考えながら読むと「ネオン」「光」の持つ意味と別の短編とのつながりにうなってしまう。
「魔王の帰還」
身長188cm足のサイズ28cmの豪快なお姉さんの繰り出す爽快なお話に笑いがとまらない。けれども最後はホロっとなる。
「ピクニック」
二重になっている話の最後にぞっとなる
「花うた」
書簡のやりとりだけで構成された話。日付と差出人の名前、二人の間で交わされる手紙の中の文体の変化や相手への気遣いが生まれ始める内容にグイグイと引き込まれる。パズルのピースのくだりで、彼の時間を戻せたらどんなに良かっただろうと思った。最後に出てくる彼が作った「お話」に切なさがつのる。
「愛を適量」
適量って難しい。そして、子どものこと、自分のことに適切なタイミングできちんと向き合うことの大切さを教えてくれる話。
「式日」
「式」と名の付くものは、前へ進めるための大切なステップであると改めて思わされる。孤独で傷ついてきた「後輩」が過ごしてきた場所や「先輩」との交流を通して生きた道を想い、この式で少しの自由を手に入れることに救われる。物語の最後に出てくるとある場所のところまでくると、もう一度この短編集の1話に戻って読みたくなる。
何度か聴き返し様々な視点で思いを巡らし、その度に新たな気づきを得る深い作品だった。
『読書脳』樺沢紫苑
この本を読むきっかけをくださったのは、
miyako@50歳からの「考える生活」さん。
読んでよかった!
いつもはネタバレを気にしてさらっと書く読書メモ。
でも、それだとあまり記憶に残らない。
少しずつ、何度も自分にしみ込ませたい。
miyakoさん、こちらの本を記事にしてくださってありがとうございました。
『三十の反撃』が良かったので、ソン・ウォンピョンさんの『アーモンド』が気になっている。まだ、Audibleにはなっていないようで、何度も検索をかけてしまう。その度にナッツのアーモンドが出て来て、アマゾンから「ナッツをお探しですか」とメールが来る。困ったものだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次のnoteでお会いしましょう。
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