クロップ監督の後任候補についてPart1ロベルトデゼルビ
クロップ監督は15-16シーズンから23-24シーズンまでの約8年間に渡ってリヴァプールで指揮をとりリヴァプール=ユルゲン・クロップと言っても過言ではないくらいのクラブのアイコンとなりサッカー界に強い印象を残しました。
またリヴァプールの名がそのままサッカーのスタイルを象徴するようなチームにまで引き上げてくれたのも彼の功績でもあります。
そのクロップとリヴァプールの長旅は今シーズンで幕を下ろすことになります。
今シーズンでの退任が決まっているクロップですが、その後任の噂がでてくる時期にもなってきました。
以下の監督が最近名前が上がっている監督です。
プレミアリーグ所属ブライトンで監督を務めるロベルトデゼルビ
リーガポルトガル所属スポルティングで指揮を取るルベンアモリム
そして今現在サッカー界の台風の目となっているレヴァークーゼンで指揮を取るシャビアロンソ
今回のnoteはその1人のロベルトデゼルビについて触れていきます。
就任が決まればその監督+リバプールについてまとめようかなと思っています。
※この3人の監督のチームを線で追えてるわけでは無いため怪我人やマネジメントなどの影響などを考慮できてない場合があるのでご了承ください。
その為該当クラブのファンの方には変な思いをさせるかもしれません。
ロベルトデゼルビ
非保持 保持
442(4231)→235(325)
守備
※ブライトンなのに相手を青、ブライトン側を赤にしてしまいました。
ややこしくてすいません
デゼルビは保持時の疑似カウンターに目が行きがちですが実は守備がかなり良いんです!!
前からの守備
前からのプレスの時は両方のWGと片方のIHが降りて442のような形でプレスをかけます。
まずボランチの選手が相手のボランチを自分の目の前に置くような形でマークします。
そうやって「背中で消す」みたいな事をしないことによって相手のボランチの選手が瞬間的なポジション取りで現れてきてそこへのパスコースができるようなことが起こりません。
リバプールではこのIH(ボランチ)が背中で消しながら出ていくことによって遠藤(アンカー)のカバーエリアが広がるという問題が起きていました。
ボランチの選手のリポジショニングの意識があまりない相手だと問題は起こりにくいのですが、相手のボランチのリポジショニングの意識が高く正確なポジション取りができるとそこをつかれ続けます(ex.マンチェスター・シティ戦、アーセナル戦)。(図1)
サイドの選手はいつでも相手SBの所へプレスに行けるようなポジションを取ります。
そして前線の選手がどちらかのサイドに誘導する。(図2)
サイドに追込めばそこで同サイド圧縮(ボールサイドにフリーの選手をつくらない)をかけるという感じです。(図3)
仮に相手のIHやCFがサポートしに降りてきた場合はそのマークを受け渡せるまではCBがそのままついて行き、逆サイドのSBがスライドして埋めます。(図4)
まずはボールに近いエリアにフリーの選手をつくらないという感じで危険な場所をまずは優先的に埋めるという感じです。
ボールがあるところから逆サイドは優先順位が一番低いことがわかります。
仮にそのスペースに出された場合はサイドからゴールまでは距離がある為、その間に全員が帰陣して状況を整えれば良いということです。
押し込まれた時の守備
押し込まれた時はゾーンというより人基準で、これも前からのプレス同様ボールサイドにフリーの選手をつくらないという感じです。
そうすることによってマーカーがはっきりしているため自分のマーカーに対
しボールが行った時にアタックしやすいです。(図5)
ですが、オールコートマンツーマンではなくボールに近い選手をマンツーマンで抑えるので、相手11人に11人合わせるというわけではありません。
そして相手がバックパスをすればそれに合わせて全員が押し上げ、自陣回復をするという感じです。
この時もボールに近い選手を抑えながら選手が出ていきます。(図6)
気になった点(守備)
①引いて守る時相手が動くとスペースができやすい
引いた時はゾーンディフェンスで守るのではなく人を基準に守備をしているため守備側はマークしている選手と一緒になって動かないといけないため、相手がよく動くチーム(動いてくる)と2列目が良くゴチャゴチャになります。
そして相手のIHが裏を狙えばそれについて行くためMFラインがDFラインに吸収されるような状況も起こります。
その為、スペースがよく生まれてしまいそこを相手に使われてしまいます。(図7)
②全体を守ろうとして空いてくるスペースがある(逆のSHがスライドしない)
前からのプレス、後ろで引いた時も同様に守備の時に逆サイドのSHがスライドしてスペースを埋め無いため、ボランチが出ていかないと行けない為バックライン前にスペースができやすいです。(図8)
先程の「引いて守る時相手が動くとスペースができやすい」のときも逆のSHがスライドせずにサイドに残っています。
そのためペナルティアーク付近がガラ空きになってしまっています。
あそこをSHが絞っていればボランチが前に出れるため問題が起こりにくいです。(図9)
そして何より前プレのときです。
このハイライトの1分30秒(シティの1点目)は見事にそのスペースを使われてしまっています。
恐らく、SHが絞らない理由としてはピッチ全体を守ろうとしているのとカウンターのときサイドの高い位置にドリブルが得意な選手がいるという点でだと思っています。
これによって起きる問題点
①そのバックライン前の広大なスペースに降りていく相手にCBがマークを受け渡せるまでその相手について行くので最終ラインがガタつきやすく相手がオフサイドになりにくいです。
勿論、スペースに降りたところから相手に裏を狙われると
相手→助走をつけて前を向いて裏へ走る
ブライトン側→前向きの矢印から一気に後ろに行かれるため助走距離なし、後ろ向きの状態から前へ走らなければならない上ボールとマーカーを同一視野内に入れにくい
明らかに相手の方が有利です。
このハイライトの1分30秒(シティの1点目)はそのような状況から得点が生まれています。
②前プレを掻い潜られるとDFラインがさらされてしまいます。
今シーズン(23/24)AWAYアーセナル戦ではハイライトでも7分45秒のシーン、8分15秒(アーセナルの2点目)でもそのスペースを使われてしまっています。
他の試合ではこれも同じく今シーズンのAWAYトッテナム戦の2失点目(ハイライトの8分23秒)でも同じような形で失点しています。
③これはハイライトではあまり見つからなかったですがMFとDFの間が広がってしまっているためロングボードのセカンド回収の時相手の選手をDFとMFで前後で潰すことができないため、セカンドの回収時に不利になってしまいます。
攻撃
デゼルビブライトンはボール保持時基本的に235でポゼッションします。
就任当初はポッターからの名残で3バックを採用したり、時折片方のSBがおりて、アンカーの選手が降りてきてダウン3で3バックを形成する時もありました。
ですが基本的に主力組がいる時や自分のスタイルが浸透してきた時は235でした。
ボランチは必ず相手の背後
ボランチが必ず相手の背後にいることによって相手がCBを抑えずに自由にさせて来るのであれば、ボランチを相手がマークすれば味方のIHがフリーになりそれを嫌がって相手がIHにマークをつけばボランチがフリーになります。(図1)
仮に相手CBがIHに付きに来ればそこを狙ってWGが裏のスペースへ飛び出します。
Play the way you face
海外の方のTwitterのツリーで見たのですがブライトンには「play the way you face(自分が向いている方向でプレーする)」というような原則があるらしいです。これがブライトンのレイオフを多用するサッカーに関係が深いとおもいました。(Twitter貼り付けれない)
この「play the way you face」というものは選手がボールを受けターンできる場合でもターンをしないようにさせる原則です。
これはどういう事なのかと言うと、ブライトンの選手達はボールを受けるときに見えている範囲(体を向けている方向)に注意を向けています。
そうすることによって自分が状況を確認できている範囲(体を向けている方向)でプレーするようになるので無理矢理前を向く(体を向けていない方向への)プレーをせずに自分より楽な状況(体が前を向いている)の選手に積極的にパスをするという意識付ができます。
この意識付によってブライトンのあのレイオフを多用するサッカーが成り立っています。
ブライトンの練習からでもマーカーから瞬間的に離れて味方に落とすなどの練習をしていてそこからもレイオフを徹底していることがわかります。
ブライトンのこの「play the way you face」に対象的なのがハイライト3分45秒あたりのムドリクのプレーです。
自分の体が後ろを完全に向いている(前の状況を確認できていない)ところからターンをして前に仕掛けています。
ブライトンではこういう場合はムドリクの目の前(体を向けている方向)にいるカイセドもしくはエンソフェルナンデスが体が前を向いている為、そこにおとしてその選手に前を向いた状況でプレーしてもらうことを好みます。
選手の特徴に合わせて起用できる
デゼルビ監督はカイセドを右サイドバック(この時の右サイドバックの役割は中へ絞りボランチとしてプレーすることが求められた為)で起用したり、バレバが相手の裏でプレーするのが苦手なため降りてこさせてダウン3を取らせたりと選手の特徴から逆算して起用やシステムの構築ができていることがわかります。
このことから本職だから今日はこの選手を使おう等、まずはそのポジションに本職の選手を使うというのではなく選手の特徴によって色んな場所で起用したりシステムを変更することがわかります。
その為、そこで起用される選手によって同じポジションでも求められるプレーが選手によって違ってきます。
GKビルドアップ
GKビルドアップはデゼルビ本人が解説している動画がありますね。
それも載っけておきます。
604のような形で前線と後方を分断して相手を前線へと引き込もうとします。(図1)
そしてGKがCBにパスをすればボランチの選手はボールサイドにプレスをかける選手の背中にポジションをとります。
もしそのボランチに相手の選手がマークに付かなければその選手にパスをすればよいという感じです。
仮にマークに付けばその後ろのスペースに前線の選手が降りてきます。
(図2)
その前線の選手が降りてくるのが気になり相手がついてくればそのスペースをWGが狙えば良いという感じで相手と後出しジャンケンをするという感じです。(図3)
ちょうど分かりやすい動画があるのでそれを載っけます。
BGMは気にしないで下さい笑
気になった点(ボール保持)
①2CBの距離が近い
2CBだとCB→WGの距離が遠くなり中にしか選択肢がなくなり直線的な攻撃しかできなくなります。
その為相手を揺さぶれずにいるのでボランチが瞬間的に相手のマークを外してフリーになりレイオフをして剥がそうとするのでそこではミスをしない事+正確な判断をすることが大前提となり中央で無理矢理崩すしかなくなり技術的負荷が高くなります。
WGはパスコースを作ろうとしても、低い位置で受けることになったり前を向いてプレーさせてもらえなかったりします。(図1)
因みにデゼルビ本人も2CB感の距離は10〜12mにすると言っているいます。10〜12mというのはイメージで言えばゴールエリアくらいの大きさです。
他にはSBが絞る時相手のSBと距離が近いためこれもWGが低い位置で受けることになる原因になっています。
CBが絞った位置にいる時はSBがWGへのパスコースをつなげるようなポジションを取らないとWGが降りてきて後ろ向きで受けなきゃいけません。
それにSBがSHと近いとCB→SBのパスを狙われてしまいます。(図2の上)
SBがCBとWGを繋げるようなポジションを取ると前進するパス簡単にを出しやすいしWGも前を向いて高い位置で仕掛けることができます。
これで中以外に外へのパスコースの選択肢を持てるので相手に2択を迫りやすいです。
加えて、SBが低い位置にいるため仮に中盤で失ったとしてもSBとSHが近い位置にいる時に比べるとフィルターが増えることになります。(図2の下)
CBが運んでSBがそのままライン間のスペースへ上がることもあるのですが、元々のCBのポジションが狭いこともあってそうやってCBが運んだとしてもWGへのパスコースが遠くWGが後ろ向きで受けることになります。(図3)
ブライトンはこれを2CBの時はできていませんが3バックやSBの片方が残る、ダウン3で2CBが広がる形でビルドアップしている時はできています。
その為相手を揺さぶってボールを前進させることができます。(図4)
このようにデゼルビのビルドアップは中盤だけでなくWGの選手にも負担がかかります。
その中で活躍している三笘は本当に化け物です。
ブライトンの十八番レイオフ
ブライトンはレイオフを手段ではなく目的としてしている感じがします。その上ブライトンは嵌められそうな時も蹴らずに無理にパス繋げようとしています。
その為デゼルビブライトン無理矢理レイオフをしようとして自爆することがよくあります。
ブライトンはCBを抑えられて(自由にボールを扱えない)時はCB間で自由に回してレイオフをできなかったり、そもそも引いてブロックを作られてレイオフをさせてもらえない時は苦戦しています。
逆に相手がプレスの形を”整備せず”に前から来る場合は得意のレイオフで状況をひっくり返せます。
GKビルドアップ
デゼルビは動画でビルドアップを正しいように言ってますがかなり無茶があります。
ちゃんと片方のSH(WG)が絞って同サイド圧縮してくるチームだと簡単にサイドの低い位置ではめられてしまいます。
SH(WG)が絞ることによってボランチが一枚バックラインの前を埋められるのでCBがでなくて良いのでWGに裏のスペースを狙われることもありません。
仮に裏をWGが狙って抜け出したとしても、バックラインは相手からプレスを受けた状態で正確なロングフィードを50m近く蹴る必要があります。
デゼルビはこの問題のあるビルドアップで嵌められそうな時もそこを回潜ろうと無理矢理前繋げようとします。このビルドアップで無理に繋げて回潜ろうとするのは瞬間的にマークを外してレイオフをする技術的なミス、判断ミスをしない等技術的な負荷が高くなります。その上中盤で失った場合フィルターがCB2枚と少ないです。
今シーズンのリバプール戦での失点に繋がるPK献上(4分15秒)はそのGKからのビルドアップ(GKへのファールでFKが与えられた流れから)で嵌められた流れからでした。
まとめ
守備
・前から人基準でサイドへ追い込みボールサイドにフリーな選手をつくらない
・引いた時もゾーンというより人基準で守る
懸念点
・逆のSHが絞らずスペースが生まれる
(ピッチ全体を守ろうとして出来てくるスペースがある)
・引いた時ゾーンディフェンスではないため相手がよく動いてくるチームだと逆のSHが絞らない分スペースが生まれやすい
攻撃
・レイオフを練習から意識付している
・本職を優先するのではなく選手の特徴によって起用する
・3バックの形になる時はサイドへのパスコースがあり合理的なサッカーになりやすい
懸念点
・技術的な負荷が高いビルドアップになっている
・レイオフが手段ではなく目的になっている
・中盤(2CBの場合)で失った時にフィルターが2枚と少ない
何故あのビルドアップを続けるのか
デゼルビが何故守備は良いのにあのビルドアップを正しいと思っているのか個人的な見解を述べます。(下の動画)
デゼルビの守備の問題点であげた逆のSH(WG)が絞らないというのを前提に考えるとわかってくると思います。
逆のSHが絞らないことによってバックラインと中盤の間に広大なスペースができます。
デゼルビはそこを狙えると言ってえいるのですが守備を整理できるチームだとSHは絞るため基本的にそこのスペースには中盤の選手がカバーしています。
しかし、デゼルビの守備考え方はピッチ全体を守ろうとするやり方なのでそのスペースは中盤ではなく必然的にCBがカバーする形になります。
要するに、デゼルビのこのビルドアップのやり方は「デゼルビの仕込んでくる守備(デゼルビの守備のやり方、考え方)」に対する対応策の中の最適解だということです。
雑感(小話)
あとデゼルビは「バレバは相手の背後でプレーできない」という発言からクロップと違って記者会見で選手に率直に自分の考えを言うタイプなんだなぁって思いました。
次回のpart2はルベンアモリム監督を紹介します
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