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人の行く裏に道あり 花の山【投資格言集】

これはおそらく最も有名な投資格言のひとつです。
意味は「他の人たちとは逆のことをしろ」となります。
巷の解説記事では「大衆と同じ行動をする方が心理的には安心だが、それでは大きな利益は得られない」といった感じで解説されていることが多いです。
一説には千利休(1522-1591)が詠んだ句であると言われており、非常に古くから伝わる格言で、数百年の間に渡って言われ続けてきたということは、相場の世界では時代に左右されず普遍的にあてはまるものであると考えていいでしょう。
しかし単に天邪鬼になり人と反対の行動を取ればいいというわけでもありません。
どういったケースで当てはまり、どういったケースでは当てはまらないのかを見ていきます。

みんなが買っているときには売れ 
みんなが売っているときには買え

相場が上昇し史上最高値をつけるなどすると、多くの人が「自分もこの波に乗るぞ!」とか言いながら買い始めます。短期的には買いが集中することにより さらに相場は急激に上げ続けてみんなニッコニコになるわけですが、買いたい人が一通り買い終わり買い圧力がなくなると、暴落します(バイイング・クライマックス)。そして結果的に市場参加者の大半が含み損を抱えることになり、損切りして退場です。
「みんなが買っている」という事実を観測してから買ったのでは多くのケースで上記のシナリオとなり、負けます。個人投資家の8割とか9割とかが負けている、という統計データがいい証明となるでしょう。
逆にみんなが売っている時に一緒になって売っていては同じシナリオとなります。

最近では「レバナス」がいい例となっているでしょう。
レバナスとは、米国ナスダックの値動きの二倍の値動きをするように設計されたファンドです。一時期は「レバナス民」というワードが登場したくらいSNS (Twitter) では話題になりました。
レバナスの設定来の基準価額とGoogleトレンドの推移を以下に掲載します。

レバナスの設定来の基準価額推移
設定来の「レバナス」Googleトレンド

ファンド設定直後にGoogleトレンドは盛り上がっていますが、基準価額は下がり続けました。そしてトレンドがボトムとなった2023年2月〜5月が基準価額もボトム付近の値動きをしており、現在(2023年6月)は株価の回復により大きく戻しています。
戻してはいますが、Googleトレンド上で盛り上がった時期に買っていた人たちはまだ含み損か、よくてトントンのレンジです。逆にトレンドがボトムの時期に買っていた人たちは含み益です。
つまり、Googleトレンドがレバナスを売買した人数と正の相関があると仮定すれば「みんなが買っていた時期は売り時、みんなが売っていた時期は買い時」だったといえます。
もっともこれは個別事象 (n=1) であり、統計的にそうなるかどうかはまた別の話ですが、少なくとも最近盛り上がったレバナスに関していえばこの投資格言は正しかったといえます。


みんなが買っていて相場が上がり続けている時にトレンドに逆らって売るのも、みんなが売っていて相場が下がり続けている時に買うのも、どちらも大変勇気のいる行為です。
一般的にトレンドの転換点を見定めることは極めて難しいため、トレンドに逆らうこの行為はほとんどの場合に短期的には含み損を抱えます。
しかし投資の勝ち筋はただ一通りしかありません。「安く買って高く売る」ことです。例外はありません。
相場が総悲観となり割安となっている間に仕込み、相場が総楽観となり割高になっている間に売る、というのが鉄則です。繰り返しますが、周りと逆の行動を取ることは大変勇気のいることですし、エントリーしたあとに高い確率で含み損を抱えるという精神的苦痛に耐えるのも簡単ではありません。しかし相場の大きな波ではいつか転換点を迎えてプラスに転じます。それを信じてポジションを握り続けられるか、それとも精神的苦痛に耐えきれず損切りをして退場するのかはあなた次第です。
もっとも転換点を迎えるのは何ヶ月後なのか、あるいは何年後なのかは誰にも分かりません。もしかしたらずっと下がり(上がり)続け、塩漬けになったまま何年も放置することになるかもしれません。相場がいずれ転換点を迎えることを信じて握り続けるか、それとも見切りをつけて損切りするかは自分で判断しなければいけません。投資は孤独な戦いです。周囲の意見を鵜呑みにしていては勝率は低いでしょう。

トレンドには逆らうな

いまからこれまでの話と矛盾したことを言います。
「基本的にトレンドに逆らってはいけません。上昇相場では買いでエントリーし、下落相場では売りでエントリーしましょう。」
「いや、お前なんなん?」って声が聞こえてきそうです笑
景気循環が起きるような数年単位以上の長期投資では下落相場の中でのトレンドの底で買い、上昇相場の中でのトレンドの天井で売りたいところです。
しかし数ヶ月〜一年未満といった短〜中期投資では、その投資期間の中で景気が反転するとは限らず、多くの場合トレンドは継続します。したがって上昇相場の中の一時的な下落で買う「押し目買い」や、下落相場の中での一時的な上昇で売る「戻り売り」が有効です。これはいずれも長期的なトレンドの中ではトレンドに従い、短期的なトレンドの中ではトレンドに反するトレードとなります。短期的なトレンドには逆らってもいいですが、長期的なトレンドに逆らってはいけません。
デイトレードなどでは逆張りの方が勝率がいい、などと言われていますが、それは一日といったレベルではトレンドが存在せずレンジ相場となることを前提としています。レンジ相場の中で逆張りをして順調に利益を重ねていたのに、突然大きな波がやってきて大きな損失を出してしまう(コツコツドカン)というのは、デイトレーダーなら誰しも経験していると思います。
ですので数ヶ月といった中期的な期間で利益を積み上げたい場合には基本的にはトレンドの「波」に乗るようにトレードしたほうがいいでしょう。とはいえ、トレンドはいつか反転するものです。せっかく波に乗れていたとしても、突然トレンドが反転して損をしてしまうこともあります。そしてトレンドの転換点は、あとからチャートを振り返れば一目瞭然でも、転換点の前後ではそれが一時的なものなのか長期的なトレンド転換なのかは分からないものです。
ここらへんを見極められれば短期〜中期トレードでコンスタントに利益を積み上げられるのですが、トレンド転換の見極めは多くの場合非常に難しいです。僕も「さすがにここらへんで底でしょ!」とか根拠不明なことを言いながらエントリーしたら更に下がっていきナンピンしていく、みたいな負け組トレーダーみたいなことをよくしています笑 いつか相場の「波」を見極められるようになりたいものです。

さいごに

なんかまったく逆のことを同時に言われて混乱したことと思いますが、投資の世界では100%絶対に正しい正解というのは存在しません。そんなものが分かれば誰も損することはありません。ただこの二つはまったくの逆ではありません。前半は「大衆の群集心理」の話であり、後半は「チャートの形というテクニカル」な話です。今回紹介した投資格言は「群集心理」の話であり、群集心理とは逆に行くほうが正解だというのはおそらく多くの場合当てはまることなのでしょう。実際のトレードの際には群集心理とチャートの形の両方に目を向け、なるべく正解の方向に進みたいところです。

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