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DICOMの歴史を簡単におさらい

DICOMは40年(2023年執筆時点)ほど前からある規格であり、その歴史を知ることは現在の多くの疑問に対する答えになります。これまでに何度も改定され、歴史的な特徴はそのままに、現在の慣習に合わせながら、常に進化を続けています。

一般に、DICOMモダリティ(機器)は高価です。1.5TのMRIなどは、定価でおよそ1億くらいすると勝手に思っています。

ですから、病院の予算を意思決定する責任者は、通常、保守的で、予算削減の意識が高いため、古くなってもモダリティを継続して維持し、利用し続けようとするのが常です(操舵船は、そう出せんわ)。多くの診療所が最も手頃な価格で購入できる、中古なども販売されています。

古い機器を利用し続けている病院にとっては、DICOMの大幅なアップデートは歓迎されず、ひいては、古いDICOMのバージョンとの互換性が必須となる状況が作り出されています。

なので、DICOMのメンテナンスという単調な作業でさえ、大変な努力を必要とします。すべてのDICOMベンダー、ユーザ、ワーキンググループを同じように満足させることは簡単ではありません。

実際、それは不可能です。

あるDICOMのインフルエンサー曰く、「もし私たちがDICOMをもう一度最初からやり直す機会があったとして、私たちが最善を尽くしたとしても、現在のDICOMを台無しにしてしまうだけでしょう」とのことです。

つまり、現在のような多面的な臨床環境で働く場合、多世代の機器を扱う必要があり(例えば、10年前のCTスキャナと最新のCTスキャナを併用しているなど)、時には考古学的な発見をし、何層ものDICOMの歴史を扱うことになるのでしょう。

おっと、今回のテーマは、歴史でした。すみません。

ではでは、

1983年、ある標準規格を考案するために、米国放射線学会とアメリカ電機工業会の共同委員会(ACR-NEMA)が設立されました。デジタル医用画像が、特定の機器メーカーに依存しないようにするための規格を作成することで、デジタル画像やPACSの普及を促進することが主な目的でした。

現在でもありますが、データの共有方法に悩む業界は多いです。家電とか。こういう業界と比べてみれば、40年前という、現在のようなハイエンドなエッジコンピュータやネットワークが普及するはるか以前の時点で、デジタル医療アプリケーションの仕組みを調べ上げた人たちの先見性に感嘆してしまいます。

ACR-NEMAは、当時策定された他の多くのデータや通信の規格を検討することから作業を開始したそうです。規格のサーベイを行ったわけですね。

調べているうちに、当時、アメリカ医学物理学協会(American Association of Physicists in Medicine)が、磁気テープに画像を記録する際の規格を決めたことを知ったそうです。この規格では、すべての情報をデータ要素の列として符号化するというアプローチを採っており、各要素は、長さ(サイズ)を持ち、固有の名前(タグ)で識別されるような仕組みになっていました。

この「タグの付いたデータ要素のシーケンスとしてデータを表現する」という考え方を知ったACR-NEMAグループは、これ幸いと、この考え方を採用したそうです。

HTMLやXMLを知っている人なら、現在広く使われているこれらの規格と同じアプローチであることに気がついたかもしれません。データ要素を小さなビルディングブロックとして使用し、任意の複雑なデータを表現するというコンセプトは、非常に有用で堅牢であることが、歴史的に証明されてきました。

このような試行錯誤を経て、記念すべき、ACR-NEMA1.0(別名ACR-NEMA 300-1985)と呼ばれる規格の最初のバージョンが、1985年に北米放射線学会の年次総会で発表されました。公式には、ACR-NEMA規格はガイドとして提案されたものであり、NEMAはその施行や解釈についていかなる責任も負わないとされています。

とはいえ、標準化の目的は理解され、十分に必要とされていたため、標準への準拠は、医療業界にとって事実上の必須条件となっていきます。

ACR-NEMA 1.0は、まだ初版だったため、エラーや不完全さを含んでいました。この規格には、継続的な努力とより良い構造にするためのさらなる作業が必要と業界から認識されていたわけですね。

このような理由から、ACR-NEMAでは、成長する規格の各論部分を改善するために、専門の小委員会を分離したワーキンググループ(WG)の考えを取り入れ、ACR-NEMA 1.0の改良に取り組んだそうです。

その結果、1988年に改訂版のACR-NEMA 2.0(ACR-NEMA 300 1988)が発表されます。

ACR-NEMA 2.0は、医療機器メーカーが採用するのに十分なほど頑丈で、ゆっくりと、しかし確実に、医療機器のインターフェイスに採用されます。

もしかしたら、現在でも、ACR-NEMA 2.0が動作する古いCTスキャナや画像サーバーを見つけることができるかもしれません(どこかの研究室という名の博物館にあるかも)。

ACR-NEMA 2.0は、いかに古くとも、陳腐化していると言われようとも、現行のDICOM規格の礎であり続けるでしょう。しかし、ACR-NEMA 2.0の最大の課題は、機器間の医療データ通信機能が極めて限定的だったことだったそうです。例えば、 ユーザはリモートデバイスに画像を送ることができますが、 デバイスがその画像に対して何をすべきかは規格で規定されていませんでした。このような機能的なギャップのみであれば規格をアップデートすることで、つぎはぎを足すように、対応できそうですが、1980年代後半のインターネットを含むネットワーク技術の急速な普及により、つぎはぎ以上のレベルが要求され、デジタル機器とその通信プロトコルの多様化へ対応するための大幅な改訂が余儀なくされました。

デジタル情報のワークフローをより抽象的に捉える新しい方法、デジタル医療のための確かな情報モデルが必要とされていたのです。

このようなニーズの変化に対応するため、ACR-NEMA規格の第3版のプロとタイプが作成され、1992年のRSNAで発表されます。翌年も引き続き、毎月のワーキンググループによって磨きがかけられます。おそらく、ワーキンググループは大変だったでしょう。委員会にでなくていいんかいって言い合っていたでしょう。

このような努力を経て、より機能的な形になり、1993年に再度、RSNAで発表されます。

この刷新された規格は、ACR-NEMA DICOMと呼ばれ、現在は、DICOM 3.0と呼ばれるようになりました。現在は、末尾の3.0という数字が省略されることが多く、一般にDICOMと呼ばれています。

2022年のDICOMは、20のパート(巻)から構成されています。

DICOM Part 1: Introduction and Overview
DICOM Part 2: Conformance
DICOM Part 3: Information Object Definitions
DICOM Part 4: Service Class Specifications
DICOM Part 5: Data Structures and Encoding
DICOM Part 6: Data Dictionary
DICOM Part 7: Message Exchange
DICOM Part 8: Network Communication Support for Message Exchange
DICOM Part 10: Media Storage and File Format for Media Interchange
DICOM Part 11: Media Storage Application Profiles
DICOM Part 12: Media Formats and Physical Media for Media Interchange
DICOM Part 14: Grayscale Standard Display Function
DICOM Part 15: Security and System Management Profiles
DICOM Part 16: Content Mapping Resource
DICOM Part 17: Explanatory Information
DICOM Part 18: Web Services
DICOM Part 19: Application Hosting
DICOM Part 20: Imaging Reports using HL7 Clinical Document Architecture
DICOM Part 21: Transformations between DICOM and other Representations
DICOM Part 22: Real-Time Communication
※Part 9, 13は欠番

これらのパートは、よく、「PS 3.X-YYYY」のように表記されます。PSの後に続く「3」は規格番号、「X」は巻数、「YYYY」はバージョンの年を表しています。例えば、PS 3.5 - 2022 は、 DICOM 3.0, Part 5, Revision 2022 を示しているというわけです。


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