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DICOMって何ですか?

この「DICOMって何ですか?」という質問を持って、デジタル化された最新鋭の病院に行き、この質問に正しく答えられる人を探すのに何時間もかかるかもしれません。
少なくとも、私が診療放射線技師として病院に勤め始めた当時は、答えられない側の人間でした。

私を含めて、ほとんどの人たちは、流行語や略語に慣れてしまい、国家試験をパスするために単語を暗記しますが、その意味について考えることや、理解できる人は限られているかもしれません。

病院に勤めだしたばかりの当時の私は、残念ながら、自分が扱っているものが何であるかを知らないことほど、成功から遠ざかることはないという事実を分かっていなかった一人でした。

DICOMはDigital Imaging and COmmunications in Medicineの略で、デジタルな医用画像における最も普遍的で基本的な規格を作成するための長年の努力を表しています。より具体的には、医療画像データを電子的に正確に表現し、処理するために必要な国際的に標準化された「規格」です(「ツール」とも言えますが、クリックして実行できるソフトウェアではないです)。

もし、あなたがあちら側の人(DICOMを作る人あるいは正しく使える人)でなく、こちら側の人(DICOMを知らない、または、言葉だけ知っている人)であれば、もしかすると、DICOMを単なる画像やファイルフォーマットととして認識しているかもしれません。もしあなたがそう信じているとしたら、一般的に信じられていることとは異なるかもしれないという疑問を持ってみると、自分の中の思考を進めることに役立つかもしれません。

DICOMは、現代医学のすべての機能的側面をカバーするために設計された、包括的なデータ転送、保存、表示プロトコルです(あちら側の人がDICOMを画像の単一の規格ではなく、画像周辺の所作を含む一連の規格とみなすのはこのためです)。DICOMは、実質、医用画像を必要とする臨床や研究のワークフローの一部で必須となっています。

もう一つの重要な略語として、PACS(Picture Archiving And Communication System)という概念があります。
すべてのDICOM関連のソフトウェアを開発しているベンダーが自社の名前をデータ内に記録する機会を与える医用画像のプラットフォームです(笑)。
冗談はさておき、PACSは、デジタル医用画像を実行するために構築された医療情報システムを構成する重要な構成要素です。

PACSは医療情報システムの要素ですが、PACS自身もなかなかの概念で、複数の要素から構成されます。一般的なPACSを構成する要素は、次の通りです。

  • モダリティ(X線撮影装置、CT、MRI、超音波装置など)

  • 画像サーバー(画像データの保管)

  • 画像処理ワークステーション(画像処理や画像診断)

PACSの例(途中通信されているのはCT画像のつもり)

例えれば、遊んでいるところをデジタルカメラで撮影し(モダリティ)、パソコンに保存し(サーバー)、友人に送る(ワークステーション)というニュアンスです。

このPACSは、DICOMを直接実装して運用されます。

PACSで扱うデータや通信方法などはDICOMに依存しています。しかしながらそのおかげで、ベンダーが異なる装置間(例えば、きっと、とても仲のいいCANON(旧TOSHIBA)とFUJIFILM((旧HITACHI)など)であったとしても、相互運用性が保証されています。

しかし、PACSの構成要素となる各DICOMユニットは独自の目的を持っており、タスクに必要なDICOMのみを実装しています。それぞれでDICOMをすべて実装していないのです(これは当然といえば当然で、プロテニス選手がみんながナダル選手のようにサッカーがうまいわけではないわけです)。

そのため、PACSを構成するどのモダリティやソフトウェアにも、DICOM規格をどの程度までサポートしているかを説明する非常に重要な文書であるDICOM Conformance Statement(どのようにDICOM規格を実装しているかを明確に記したベンダーが他者向けに作成した文書)が付属しています。

よくある状況を考えてみましょう。ある患者がAクリニックで撮影したデジタルCT画像をB病院に持っていきたいとします。
A病院ではデータの出力、B病院ではデータの取り込みと保存が必要になります。
これらの操作時にDICOM(で決められた規格)が使用されます。このように、DICOMを使用したデジタル医療が実現されているわけです。

現代の医用画像に関連するデジタル医療は、DICOMとPACS抜きには考えられません。

おおよそ40年前(この記事を書いているのは2023年)に考案されたDICOM規格は、デジタル医療の進化に不可欠な役割を果たすと共に、それだけではなく、画像診断の診断基準と性能を保証することに役立っています。

DICOMは、以下を提供することで、現代医療の展望の形成に貢献しています。

  • 医療のデジタル化

  • 優れた医用画像の品質

  • 様々な画像取得パラメータとデータタイプのサポート

  • 医用画像に係る医療データのエンコーディング

  • モダリティ(デジタルな医用画像装置や機器)やソフトウェアとその機能に関する明確な記述

本記事の執筆時点(2023年1月)では、DICOM規格はパートと呼ばれる20巻で構成されています。パートは、PS3.1からPS3.22までの番号がつけられています。22まであり、20巻までしかない理由は、PS3.9(メッセージ交換のためのポイント間通信サポート)とPS3.13(プリント管理ポイント間通信サポート)がリタイア(リタイアの意味については別の機会に解説します)となったためです。

本記事では、2022年に発行された改訂版のDICOM標準を対象に話を進めていきます。

こちら側の人は、このすごくニッチなDICOMに関する記事を読もうと思った時点ですでにあちら側になりつつあります。もうしばし、記事の続編にお付き合いくだされば幸いです。
続編では、まずはDICOM規格を読めるようになることを目標として、解説を進めていきたいと思います。

ようこそ、DICOMの世界へ。


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