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おもちゃばんざい

正月の特番に影響を受けた娘が、次男のおもちゃ棚から野球盤を引っ張り出してきた。
誰かいっしょに野球盤やらん?と家族に呼びかけて回る20歳娘はそうそういないだろう。

長男も、このゲームの持ち主である次男さえも、へ?マジ?とつれない。
しょうがない、僕が受けて立とう。

バッターの操作レバーを引く娘の手

ピッチャー操作の難しいことといったらありゃしない。
僕が子供の頃の野球盤は、直球と消える魔球しかなかったのに、今どきのはそれに加えてチェンジアップ、カーブ、スライダー、シュート、シンカーまであって、軽く指がつりそう。

しかも、昔は投球も打球も盤面を転がるだけだったが、今どきは浮いて飛び、ホームランはリアルに放物線を描くのだ。
さらにバントや盗塁などまであって、きっと子供の頃の自分なら面倒くさくなって遊ぶのをやめたかもしれないほど。
でもさすが今どきの子供は電子ゲームで細かな操作に慣れているからか、これほどまでに複雑な野球盤も難なく遊べるのだろう。

ちなみに5イニング制で戦った娘には8-6で勝った。

さぁ片づけようかと思ったら、長男と次男がやってきて、やると。
結局やるんかい。
野球盤を挟んで真剣勝負の23歳長男と17歳次男もそうそういないはずだ。

バッターの長男(左)・ピッチャーの次男(右)

2人野球をどうにか再現しようとできた野球盤は知恵と工夫の宝庫だ。
誰がグラウンドにポケットを掘って、ボールが入ったポケットによって一打ごとの判定をしようと考えついたのだろう。
守備をピッチャーの投球動作一つだけに絞り、他の8人は完全にいないものとして割り切ったからこそ2人で遊べるのだ。

画面でピコピコの電子ゲームはどんどん進化して、野球ゲームなんてプロ野球選手の個性を一人ひとり取り込んでもはや実物以上に実物だ。
けれど投球、打球の球筋は、パターン化された軌道をランダムに辿っているだけにすぎない。

それよりこの野球盤を見たまえ。
すべてが一期一会の物理現象であり、二度と再現できないものばかり。
もしかしたら制作者が考えもしなかった方向に飛び、そのまま球は闇夜に飲まれて消え失せてしまうかもしれない。
でも、だからこそ20歳娘がいっしょにやろうと言い、23歳長男と16歳次男が真剣勝負できるのだろうとも思う。
おもちゃばんざい。

そういえば30年前の就職で出版業界ともうひとつ迷ったのが、タカラ、トミー、エポックなどのおもちゃメーカーだったことを思い出した。

(2024/1/4記)

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