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『短編小説』 女友達

私には、ものすごく仲の良い女友達がいる

彼女とは、初めての就職の時からの付き合いなので
かられこれ四半世紀の仲である。
四半世紀以内の時の私たちは、毎日のようにメールを送って近況どころか
実況のように日々の出来事を毎日メールし合っていた。

そこまで仲がよく、深い話もできる女友達の事を私は親友と思っていた。

親友が変わったのは、それはちょうど四半世紀を迎える前の年
親友にモテ期が訪れた。

お互い結婚しているけど、私には子供がいるが親友には居ない。
親友は、本来とても家庭的な人で、結婚したら子沢山の家庭が欲しい。
比べて私は、料理も出来ない、家事も下手、結婚しても子供はいらない、
夫婦で、いつまでも恋人同士のような関係でいたい。
と、結婚前私たちは、いつもこんな話をしていた。
しかし、現実は理想通りには、ならないものである。

モテ期が訪れた親友とのアポは、なかなか取れなかった。
夫以外の甘い蜜を知ってしまった彼女は、色々と忙しかった。

やっと親友の空いてる日が合ったが、その日は夜から私の方に他の友人らとの飲み会が入っていた。その飲み会には、私のお気に入りの男友達も来る。なので、この飲み会は外せない。
その男友達は、お気に入りなだけで、特に何があるわけでもないが、
数ヶ月に1回会えるか会えないか程度の事だが、お気に入りの男の子に会うのは、主婦で子持ちの私のささやかな楽しみでもあった。

その事情も話した上で、親友とランチして、別れる時には、応援までされた。

自然にハミングが口からこぼれる、足取りも軽く飲み会へ。
そこにいた、彼は、やっぱりハンサムで相変わらずのお洒落さん
サーモンピンクのシャツに白のパンツ、靴は先が尖っていて、イタリア産ですか?と思わせる素敵さ。
飲み会が始めって数十分、親友から携帯に電話がきた。
「私も友人と会ってたけど、もうバイバイしたから、あなたの飲み会に参加させてもらってもよい?」
え?私以外のメンバー誰も知らないよね?
それでも、来たいの?
と、相当びっくりしたけど、他の友人らに聞いたら快くOKと言ってくれたので親友も来た。

一次会を経て私たちは二次会の居酒屋へ行った。

その二次会で、お気に入りの彼がタバコを吸いに外に出た。
私は、他の人と話していて、彼がタバコを吸いに出て行ったのに気づかなかった。
数分後、私もトイレに行き、お気にの彼が外にいるか見に行った。
そこで見た光景は、私のお気にの彼が親友の肩を抱いていた。
私は一瞬凍りついて動けなくなった。
声をかけずに、戻ろうと頭で思ってても、足がなかなか動かない。
見たくないのに、この先の展開が気になって目が離せない。
その時、彼が親友を引き寄せてキスし始めた。
私はその場から走って、席に戻った。
数分後に2人は時間差で戻って来た。
先にお気に入りの彼、その5分後くらいに親友。
戻ってきた親友は、何食わぬ顔で、座った隣の男性と楽しそうに話していた。

まさか、私に見られていたなんて思っていないのだろう。

二次会が終わり、三次会にいくメンバーもいたが、私は断った。
帰り道、親友と2人になり、先ほどと同じように何食わぬ顔で、飲み会楽しかったねーなんて言っている。
私は、呼吸を整えて、落ち着いた声で

「さっき、私のお気にと外行ってたよね?もしかしてキスしちゃったとか?」と

冗談ぽく、言ってみた。

親友は、「ヤダ、なんで分かったぁ?彼のキス、タバコ臭くて、激しかったわ、きっと彼もしたかったのね〜、うふふ」

などと、抜け抜けと言い放った。

私も結婚してて子供がいるけど、それとこれとは話がべつ!

「あれ?私言わなかったけ?彼は私のお気に入りって」

「あ、聞いたかも?ごめーん」

と何とも軽すぎる謝罪に呆れて物も言えなくなった。
今までモテた事がなく、44過ぎて、モテ期が来た女は、こうも変わる物なのか?確かにモテまくって、今は不倫しまくりだよね?誘えばどんな男も捕まえられるって自慢してるよね。でもその不倫の埋め合わせで、旦那さんにはいつも私と会うって言って、私の事使ってるよね?
今まで私がどんだけ、あなたの為に相談に乗ったり、協力したりしてきたことか、確かにお互いが結婚する前は、私の方がモテてて、あなたとの約束をすっぽかす事もあったけど、私はあなたの好きな人やお気に入りにちょっかいをだした事がないよね。
私のこと、皆に親友と言っていたくせに、親友の私にこんな事を平気でできるんだ。
本当に私の親友なの?
20年前に約束すっぽかした事の仕返し?本当は私の事、嫌いだったとか?
一瞬にして、走馬灯のようにいろいろな思いが駆け巡った。
今思った事を、親友に怒鳴り散らしたいと思ったが、

私は声を低くして、落ち着いて言い返した。
「うん、言ったよ。結構調子に乗ってるよね?呼んでもないのに、私の飲み会にきて、挙げ句の果てには、お気に入りとキス?ふざけ過ぎてるよね?」

そこで、やっと我に帰ったのか、親友は、腰を90度に曲げて
「本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げた。

頭を下げられても、今度いつ、お気に入りの彼に会えるかわからないし
私には、彼とキスするチャンスが巡ってくるかもわからない。

ただ、彼女は本当に私の親友なのだろうか?という疑問と裏切られた気持ちが大きい。

ポッカリと胸に穴が開いたとは、こういう事なのか。

と、恋愛をしていた独身風に更けてみた。

でも、最寄りの駅で電車を降りた瞬間からは、独身気分は終わり、
私は、妻と母親の顔に戻り、家路を急いだ。

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