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【徒然に本の話】オクタビオ・パス 『ラテンアメリカ五人集』ほか

唐突ですが、3月31日はメキシコの詩人オクタビオ・パスの誕生日でした。

大学は仏文学専攻でしたが、一時期、中南米文学にハマりました。その理由の一つに1995年に出た集英社文庫 "ラテンアメリカの文学シリーズ"『ラテンアメリカ五人集』に出会った事があります。

中南米文学で一番好きなのは、やはりコロンビアのガブリエル・ガルシア=マルケスですが、他にもアルゼンチンのマヌエル・プイグ、ホルへ・ルイス・ボルヘス、フリオ・コルタサル、ペルーのマリオ・ヴァルガス=リョサ、チリのパブロ・ネルーダ、そして、今回少しお話をするメキシコのオクタビオ・パスなど、気になる作家・詩人がたくさんいます。
(どちらかと言うと音楽話で触れたいブラジルの詩人 ヴィニシウス・ヂ・モライスも) 

実際のところ、ベトナムに住むようになって四半世紀、ガルシア=マルケス以外はすっかり離れてしまいましたが、ここ数年、中南米文学熱がぶり返し、実家に眠っていた文庫本をベトナムに持ち帰って少しずつ読んでいます。その中の一冊が原点である『ラテンアメリカ五人集』という訳です。

なかなかに味わいのある表紙デザイン

この本で紹介されている五人は、J.E.パチェーコ(メキシコ)、シルヴィア・オカンポ(アルゼンチン)、ミゲル・アンヘル・アストゥリアス(グアテマラ)、そしてオクタビオ・パスですが、オクタビオ・パスは"白"、"青い目の花束"、"見知らぬふたりへの手紙"の三篇が入っています。

流石に30年ほど前に読んだものですから、ほとんど覚えていないのですが、唯一、オクタビオ・パスの"青い目の花束"は幻想的恐怖がじわじわと印象に残っていた作品です。

今回、久々に読み返しましたが、茹だる真夏の夜、タマリンドの香り、コオロギの鳴き声、とある理由で"青い目の花束"を用意しなければいけない男、暗い夜道に光るマチェテ、マッチの炎に照らされる瞳.. 坂口安吾の『桜の森の満開の下』的狂気もそこはかとなく漂い、夏の入り口が開き、蒸し暑くなってきたハノイの夜に読むとまた合わなくもないかと。

ちょうど最近、ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』がついに文庫化されるというニュースがあり、中南米文学界隈が盛り上がりそうな様子。この夏は昔買った本を再読して、個人的にも盛り上がりたいと思います。また文学に絡めて、スペイン語との関わりも振り返ったり。

ちなみに、オクタビオ・パスについては、また別の一冊、『美しい水死人  ラテンアメリカ文学アンソロジー』('95年 福武文庫) にも"波と暮らして"という、海辺で出会った気まぐれで奔放な"波"と暮らし、振り回される男の話が入っていますが、詩人の創作について考察するにまた面白い一編です。

ガルシア=マルケスの名前がドーンと出ていますが、
他の作家の作品も読み応えがあります

Que tenga un buen día ! 

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