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着物は八枚の長方形の布

着物の型紙がシンプルという話は前回したのですが、具体的にどれぐらいシンプルかと言うと…女物の標準的な着物、かつ裏地のついていない「単」という着物で話をすると「着物は八枚の長方形の布から出来ている」というくらいシンプルです。

これを説明するのに、2013年頃に白い木綿の反物を染めたことがあるんです。

2013年頃に染めた布

上の写真は左から
衽(おくみ)、鈍い青色の布2枚
襟(えり)、薄茶と濃茶の布2枚
袖(そで)、黄色と緑の布1枚づつ、計2枚
身頃(みごろ)、濃淡のある桃~赤色の布、計2枚

下の写真は布を並べて、着物のイメージを作ったところです。

実際に縫う前、生地を並べたところ

ね、縫ってなくても、何となく着物に見えるでしょう?

実際に着物をほどくと、それは長方形の布地になります。とても使い回しがしやすいのです。一回り小さい着物を縫ってもいいし、着物コートを作ってもいい。洋服生地として利用してもいいし、クッションカバーにしてもいい。

賢いなぁと思うのと同時に、「日本文化って、とことん折紙文化だな!」と感心するのです。

佐古先生のお仕立ては、本当に布を切りません。縫代は、ひたすら折り込むようになっています。将来に使い回せるように。以前、ノーベル平和賞を受良された女史が「日本のもったいない精神は素晴らしい」とおっしゃっていたそうですが、着物はそんなもったいない精神を詰め込んだような文化です…伝統的には。

けれど、昨今の、量産されている着物はそういう意味合いを持ちません。佐古先生はユニクロの浴衣をほどいた時に衝撃を受けたと言っていました。機械で着物を量産する場合は、生地を印をつける際に小さな丸い穴を開けるそうです。そうする事によって、機械のコンピュータに穴の位置を認識させ、自動で縫って行くことが出来るのだとか。縫代も全て切り落としてしまうと。早く、大量に着物を生産できるけど、仕立て直しは出来ないと。

着物が手の届きやすい価格になって、より多くの人が楽しめるようになるのが嬉しい気持ちが半分。残りの半分は、着物のひとつの大切な面が隠されて気が付いて貰えない残念さが私の中に混ざり込んでいます。

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